ひと口に救急車と言っても様々な種類があり、所属している組織によって、配備の目的や車内の装備、管轄省庁などが異なっています。私たちがよく目にする、一般道路をサイレンを鳴らして緊急走行している救急車の大部分は、地方公共団体の消防本部や消防署に属している救急車です。これらの救急車は総務省消防庁が管轄しています。
また、病院間の転院搬送などに用いられる、病院など医療機関に属している救急車――俗に“病院救急車”と呼ばれます――もよく見られますが、こちらは厚生労働省の管轄です。最近、よくニュースなどで見られる、伝染性の高い感染症にかかっている(もしくはその疑いのある)海外からの入国者や帰国者を搬送する空港の救急車も厚生労働省の管轄です。
このほか、テーマパークやサーキット、大きなホテルや工場の敷地などに配置された救急車は、その施設の管理者によって組織されている自衛消防組織に属し、敷地内の医務室や近隣の病院にケガ人や病人を搬送するために使われます。これら自衛消防組織の救急車は、公安委員会に届け出て正式な緊急自動車に認定されていない限り、公道で緊急走行を行なうことは出来ません。
自衛隊にも救急車がありますが、こちらは防衛省の管轄。競馬場の救急車は農林水産省の管轄になります。白い箱型ボディに赤いラインや赤十字といった、外見は同じように見える救急車でも、このように様々な種類があります。
さて、救急車の形も私たちがよく見かける箱型ボディのものからバスやトラックまで様々です。現在、消防庁管轄の救急車で主力となっているのが高規格救急車(高規格救急自動車)です。高規格救急車は、ヘルメットを被った救急隊員が屈まず自然な姿勢のまま迅速に救命処置ができる室内高と、医療機器や医療器具などを無理なく収納できる室内幅がなければなりません。そこで基本的には箱型ボディの商用車やトラックの改造車が用いられます。この高規格救急車は現状では救急車として要求されるすべての能力を備えているため、消防庁管轄以外の救急車でも採用例が多くなっています。ちなみに、高規格救急車用の車両のことを高規格準拠救急車と言います。
現在、日本では高規格準拠救急車には3つの自動車メーカー製のものがありますが、そのうちの一つが日産の商用車NV350キャラバンのスーパーロングボディ・ワイド幅・ハイルーフを改造して作られた専用車、日産“パラメディック”で2018年に登場しました。ちなみに現行車は3代目にあたります。その使いやすさから、高規格救急車としてはもとより病院救急車として、あるいは専門的な訓練を受けた医師・看護師などからなり、災害発生直後から活動できる機動性を備えた医療チームであるDMATなどでも幅広く用いられています。
さて、『トミカ』の『No.18 日産 NV350キャラバン 救急車』は、外観的には“パラメディック”ではなく、それに準じた2B(“ツー・ベッド”の略)型の標準救急車あるいは普通救急車を再現したものと思われます。ただしこれら標準救急車も、最近では高機能救急車に改造・改良されているものが増えていますので、外観からの判別は難しくなってきています。
パトカーや消防車などの緊急自動車と並び、救急車も子どもたちのヒーローですので、この『No.18 日産 NV350キャラバン 救急車』も『トミカ』の人気車種です。ひょっとしたら近所の消防署や大きな病院などで本物を見ることが出来るかもしれませんね。後部ドアが開閉できるギミックも楽しく、充実感のある1台となっています。
■高規格準拠救急車 パラメディック(日産 NV350 キャラバン 改造車) 主要諸元 (『トミカ』モデル車種と同一規格ではありません)
全長×全幅×全高(mm):5330×1880×2490
ホイールベース(mm):2940
トレッド(前/後・mm) :1660/1635
車両重量(kg):2770
エンジン形式:QR25DE型 水冷直列4気筒DOHC
排気量(cc):2488
最高出力:108kW(147ps)/5600rpm
最大トルク:213Nm(21.7kgm)/4400rpm
トランスミッション:5速AT
サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン/リジッド
ブレーキ(前/後) :ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤ:(前) 195/80R15 (後)195/80R15