【火曜カーデザイン特集】 性格の違いをデザインで表現したノートとノートオーラ

ノートとノートオーラを一目で見分ける! そのデザイン的意味を探ってみよう

一見するとその違いがわからないノートとノートオーラ。しかし、デザイン的にも違いはある。ここではその見分け方を紹介するとともに、なぜ違うのかについても考えてみたい。

ノートかノートオーラか見分けられる!?

わかっていてもその違いを一瞬では見分けにくい、日産のノートとノートオーラ。でも実はここをみれば、すぐに違いがわかるというポイントがあるのだ。もちろんオーナーの方はご存知かもしれないが、ここではちょっとその点について確認してみよう。一番わかりりやすいのはヘッドライトの大きさで、オーラの方が細いのだが、それにしても1台だけを見ると「あれ、どっちだけ?」と思ってしまうこともある。

言われているのは、前後フェンダー&バンパー、そしてリヤドアということだがそれらの違いによって、ノートの3サイズがL4045×W1695×H1505mmに対して、オーラはL4045×W1730×H1525mmとなる。トレッドはオーラの方が前後とも20mm増しだ。全幅で35mmも広がるのだが、なんと律儀なことか全長は全く変わっていない。オーラをちょっと長くしてもいいようなところだが、不必要なことは行わないと言わんばかりだ。

日産ノートオーラ 注目は前後に伸びるキャラクターライン。オーラは前から後ろまで伸びやかに貫かれている。安定した水平基調に近いスタイルなのがわかる。
日産ノート こちらのキャラクターラインは前からリヤドアで上に上がっていきサイドウインドウの末端で合流する、いわば前傾姿勢を明確化している。

サイドに伸びるキャラクターラインが違う!

オーラはボディサイドに前後を貫くキャラクターライン(折り目)が形作られているのが特徴で、コンパクトな2ボックスボディの中に、落ち着きある優雅なスタイルを表現している。対するノートはオーラとフロントドアまで同じラインをリヤドアから徐々に持ち上げ、リヤドア後端で一度角度を変えてさらに上向きとして、シックスライトウインドウの後端で合流する。いわゆる前傾姿勢に貢献する形で、コンパクトハッチの機敏な機動性や扱いやすさなどを表現したい造形だ。

拡大してみるとこんな感じ。オーラ(上)はウインドウ下のキャラクターラインが後方に伸びていくが、ノート(下)はウインドウ側に上がっていく。

ただしこの違いに気が付きにくいのは、ノートはオーラ同様にリヤフェンダーの張り出しがしっかりと見えることで、曇りなど弱い陰影の中でみると、フロントからのラインがリヤフェンダーの張り出しに繋がっているように見え、その違いに気が付きにくかったりする。

安心の手軽さのノート、ハングリーのノートオーラ

オーラ(上)とノート(下)。細いヘッドライトがオーラでリヤバンパー下側をブラックアウト化したのがノート。

フロント&リヤ周りを見ていくと、前述のように細いヘッドライトとなるのがオーラ。サイドのキャラクターラインが、ヘッドライト下端の分割線と合流する。対するノートはヘッドライトの中心部にキャラクターラインが入る。

フロント周りはノートは大きめのヘッドライトによって、安心感のような、落ち着きある顔が表現されているように思う。そのためにバンパー周りも優しいふくよかな面によって、シャープで大きなヘッドライトを冷たくなり過ぎない表情に落ち着かせている。対するオーラはクールで、バンパーを削ぎ落とすなど、少しハングリーな表情をみることができる。

リヤ周りは、ノートが下部分をブラックアウト化することで、軽快さ、手軽な扱いやすさを表現したようだ。対するオーラはむしろワイドでなおかつ低重心をイメージさせ、どっしりとしたクラスレスの落ち着きを見せる。ややメカニカルな表現は、オーラのスポーティな個性を表現するもので、ノートにはない全体のキーポイントになっているように思える。

フェンダーの張り出しがノートオーラの存在感を生んだ

実はここで作られた表情は、単にフェイスの造形によって生まれているわけではない。しっかりとしたサイドからの伏線によって生まれているのだ。

オーラのフロントヘッドライト(右)、リヤコンビランプ(左)とフェンダー&バンパーの関係性をみる。エッジが外にはみ出していてフェンダーの方が外に張り出しているのがわかる。
こちらがノートのヘッドライト(右)、リヤコンビランプ(右)とフェンダー&バンパーの関係性をみる。ライト周りとフェンダーが面一で、バンパーもコンパクトに収まる。

フェンダーの張り出しは、一見すると全くわからないのだがヘッドライトとリヤコンビランプのマウントされた部分をみるとその違いがわかる。オーラでは明確な段差がつけられて、より張り出したフェンダーの存在感がわかる。この段差のラインがフロントではグリル周りに続くシャープな縁取りとなり、細いヘッドランプと同様にクールな印象を強めている。リヤはここから安定感あるバンパーを造形できている。

ある意味オーラはエボリューションモデルのような力感をノートに与えながら、いかにエレガントに見せるかにトライしているようにも見える。しかしこれはノートがベースにあるならば……の仮説で、もしオーラがベースにあるのならば、ノートに与えられたデザイン手法は恐ろしく深く考え抜かれたものであると感じる。こんな辻褄の合わせ方は、今まで見たことがないと言えるだろう。

ただ惜しむらくは、ぱっと見でわかりにくい……ということなのだが、その違いは日を重ねるごとにオーナーの心に沁みてくるのだろう、とも思う。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…