未体験ゾーンへ突入するスーパーグランツーリズモ
国産車の輸出が本格化しつつあった70年代、トヨタはホンダや日産に先行されていたため新たなフラッグシップを必要としていた。過去の2000GTのようなイメージリーダーがあれば、海外市場でもトヨタの認知度が高まると考えたのだ。その結果、高級パーソナルクーペが相応しいと考え、クラウンではない新たな価値を備える新型車を開発する。それが1981年に新発売されたソアラ。
国産車として久しぶりに時速200キロを可能とする性能が与えられ、上級グレードには国産初の4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを採用。時速200キロを可能にしたのは2.8リッターの直列6気筒5M型に新開発DOHCヘッドを組み合わせた5M-GEU型エンジン。国産DOHCとして当時最大排気量となった。
さらにマイコン制御オートエアコンやドライブコンピューターなど、ヨーロッパ製の高級クーペに劣らぬ性能・装備により「未体験ゾーンへ」というキャッチコピー通り、異次元の存在と言ってよかった。上級装備のGTエクストラは当時300万円を超える高額車で、数が少ないのに、いまだ6万キロしか走っていない個体がある。
外観
1981年に発売された初代MZ10ソアラは2リッターと2.8リッターの直列6気筒エンジン専用車。2.8はDOHCの5M-GEUで2リッターは新開発の1G-EU型SOHC。1Gには続けてターボ仕様が追加され、82年には電子制御ATやエンジン制御のTCCSを採用。83年には2リッターのDOHC仕様1G-GEU型が追加されマイコン制御のサスペンションTEMSも新採用
異形ヘッドライト
低いスラントノーズには異形4灯ハロゲンライト。ボディ全周におよぶモールはシボ入り
ワイパーは隠す
空気抵抗CD値0.36を達成するためセミコンシールドワイパーを採用して段差を減らす
クォーターサンシェードはVX以上の装備
2000VXと2800GTにはクォーターウィンドゥにクォーターサンシェードが装備された
フロント
ダンパーだけ変更したが車高はノーマル。タイヤとホイールの間隔は60mm
リヤ
ダンパーはリヤも変更しているがノーマル車高でタイヤとの間隔は70mm
リヤマッドに「ソアラ」
泥除けのリヤ側にだけ車名の白文字。ソアラは最上級グライダーの意味だ
エンジンルーム
5M-GEU型は170ps
当時の国内最大排気量DOHCだった直列6気筒2759ccの5M-GEU型。8.8の圧縮比から170psと24kgmのパワー・トルクを発生する
載せ替えようと思ったが周囲の反対で考え直した
6万キロしか走っていない初代エクストラのオーナー。手に入れたのは今から20年ほど前のこと。住んでいる地元の知り合いが新車で買って乗っていたソアラなのだ。手に入れた当時は3万キロ過ぎで、長らく屋根下保管。すでに新車から20年近く経っていたにもかかわらず塗装含めフルオリジナル。だから大事に維持するため、所有していたS30Zを手放してもソアラは手放さなかった。
入手後すぐにしたのがタイミングベルト交換。走っていなくても年数が経っているための処置で、早めの整備でトラブルを防ぐ。また入手後にコンテナを移設して壁を壊し、ソアラが入るように改造した。これで紫外線対策もバッチリになり、今でも新車のような輝きを維持しているのだ。
何とかしたいと思っているのがミッション。新車時から4速ATなので、長年5速にしたいと考えてきた。そこで見つけた5速のエクストラを部品取りとして購入。載せ替えようと思ったが、周囲から反対されて考え直しているところ。5速は5速で復活させようか思案中なのだ。
反対されたのは主に初代ソアラのクラブ関係。やはりミーティングで集まっても、ここまでオリジナルで走行の短いエクストラは他にない。ただ穴が空いたマフラーだけフジツボに交換した。
室内
デジタルメーター
指針がないエレクトロニックディスプレイはVR、VX、GTに装備
マイコンオートエアコン
マイコンという言葉自体懐かしい。オートエアコンは当時画期的だった
このソアラ2800GT-エクストラの記事は、令和に残るクルマ改造雑誌『G-ワークス』(毎月21日発売)2022年7月号に掲載されたものです。