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超高回転型パワーユニット
6月1日、メルセデスベンツより高機能ハイブリッドシステムを搭載した新型ハイパーカー「ONE(ワン)」が発表された。パワートレインはハイブリッド・ターボエンジンと4つの電気モーターから構成されている。搭載されているシングルターボ付き1.6リッターV6ハイブリッド・ガソリンエンジンは、車両ミッド位置に収められており、最高回転数11,000rpmというF1並みの超高回転型ユニットだ。電気モーターはフロントアクセルの左右に1つずつ、エンジンに1つ、電動式ターボチャージャーに1つずつ搭載されている。
0-100km/hの加速はわずか2.9秒。0-200km/h加速は7.0秒、0-300km/h加速は15.6秒という、驚くような短時間で達成し、最高速度は時速352kmというハイパフォーマンスを発揮する。
この高回転型ユニットは電動ターボチャージャーでブーストされることで、エンジン低回転域での高トルクを実現。桁違いの加速力を俊敏性を兼ね備え、アクセルペダルに対してダイレクトなレスポンスを見せる。さらに、AMG-ONEに搭載された電動ガスタービンは排気ガスの余分なエネルギーを発電に利用し、新たに電気エネルギーとして使用することができる。このエネルギーはリチウムイオンバッテリーに貯蓄されるか、駆動システムに直接供給される。
フロントアクスルに搭載された2つの120kW電動モーターはそれぞれ独立してリダクションギアを介してフロントホイールに接続されており、最大50,000の回転数を誇る。左右独立していることで、特に高速なドライビング領域でも最適なトルク配分を可能にしている。さらに回転エネルギーをモーターで回収することで、再発電した電気をバッテリーに充電し、より長い走行距離や駆動性能の向上に活かしている。
シャーシはフロントとリアがアルミニウム製で、それぞれ5本のリンクと2本の調整可能なサスペンションストラットで構成されている。プッシュロッド、スプリングストラットは両方とも進行方向に沿って設置されており、このソリューションによって急激な方向転換の際でも安定してロールを防いでくれる。摩擦の少ないセラミックボールベアリングを使用したホイールベアリングは、技術的な細部へのこだわりを反映している。
AMG-ONE専用に設計された9本スポークのマグネシウム鋳造ホイールもオプションで用意される。センターロック技術に加え、特許を取得したバイオニックデザインが採用され、軽量化と剛性を最大限まで高めている。
とても分厚いはね上げ式ドアを開けてコックピットに乗り込むと、軽量化のため無駄な装飾が省かれてカーボンモノコックが剝き出しになっている。シートはフルバケットシートが採用され、高速走行時でも身体をガチッとホールドしてくれる。ステアリングホイールもF1モデルそのままの本気モード。ステアリングには、近年の車両にも見られるスイッチが数多く配置されている。運転席正面とインパネ中央部にはフルデジタルのモニターが配置され、各種計器やサスペンションの設定などを操作できるようになっている。
空力特性に優れたエクステリア
ボディは当然のようにカーボンファイバー製モノコックをベースとしたミッドエンジンコンセプトで設計されている。サイドから見るとコックピットはかなり車両前方に配置され、エンジンが収められるテールスペースがかなり広めになっている。ボリューム感のあるホイールアーチも特徴的だ。エクステリアデザインは、デザイナーとエアロダイナミクスの専門家によって緊密に設計されている。AMG-ONEは時速50kmの低速からダウンフォースを発生させ、速度を増すに連れてその力はますます強くなっていく。
フロントフェイスでは、車幅いっぱいに広がったグリルが特徴的だ。グリルのメッシュ部分センターには白い文字でAMGのロゴが入っている。LED式ヘッドライトはボディとフラットに設計されており優れた空力特性に貢献している。特徴的なのは、ディフューザー部分の電動アクティブフラップだ。フラップが作動することで、優れたエアロダイナミクスを実現。また、ホイールアーチ部のエアベントもダウンフォースを増大させ、優れた空力特性が実現されている。
リアエンドではシャープなリアスポイラーと、左右で分割された大きなディフューザーが特徴的。高速走行時に優れた空力効率を発揮しパフォーマンスに磨きをかけている。中央の大きな丸いアウトレットと2つの小さな丸い開口部を持つエキゾースト・テールパイプのデザインは、F1マシンから直接受け継いだもの。エクステリア塗装も、メルセデスのロゴを伴ったブラックにグラデーション変化しており、後方の造形は走りへの本気度が伺えるデザインになっている。
ボディのサイド部分で注目して欲しいのは、シームレスで美しい造形。サイドウィンドウとボディの間には段差がなく空気がスムーズに後方へ流れるようになっている。サイドミラーはピラーの根元ではなく、ボディ中腹から大きくアームを伸ばして配置されている。これは、フロントからフェンダーを通過してきた空気が乱流するのを防いで、スムーズに流れるようになっているためだ。空気と共に後方へ進んでみると、ボディサイドにミッドシップ車特有のエアインテークが見当たらない。リアエンドまでボディラインがシームレスに続いている。では、どこから冷却用の空気を取り込んでいるのか。ルーフ部分に注目して欲しい。
カーボン製の大きなエアインテークがルーフ後方で口を広げていた。ここから、冷却用の空気を取り込んでいるようだ。ルーフ中央にはシャークフィンが垂直に配置され、空気の乱流を防いでコーナリングパフォーマンスを向上させている。フロントに戻るとボンネット中央にはカーボン製のエアアウトレットが配置されている。フロントのグリルを通過してきた新鮮な空気がここから排出され、ドライバールームを縦に横切ったのち、ルーフ後方のエアインテークに取り込まれるようになっている。美しいボディ造形と優れたエアロダイナミクスを両立した見事な設計だ。
Mercedes-AMG ONEは、グッドウッドで開催されるフェスティバル・オブ・スピード(2022年6月23日~26日)の一環として、イギリスで初めて公式に走行シーンが公開される予定。