現役バリバリ、1969年式 初代カローラ1200ハイデラックスの勇姿を見よ!

4年で10万キロを突破しちゃいました! まだまだ現役で走り続ける初代カローラ! 【甲府駅自動車博覧会】

速報をお届けした「第13回記念大会 甲府駅自動車博覧会」は数多くの展示車と来場者で賑わった。今回からは注目すべき展示車を、車両オーナーに聞いたお話とともにお届けしたい。まず初回は入手後4年目にして走行距離が10万キロを突破してしまうほど走り込んでいる初代カローラの登場だ!

PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1969年式トヨタ・カローラ1200ハイデラックス。

ここ数年の旧車ブームにより人気車だけでなく普通の大衆車まで中古車価格が上昇している。製造から40年50年と経たクルマなのだから、今まで維持してきた苦労や手間を考えたら高めの相場も仕方ない部分がある。それに手間がかかった旧車ならメカや知識に精通したマニアでなくても普通に乗ることができる、はず。今回はそんなお話を裏付けてくれるような車両とオーナーに巡り合えた。紹介する初代カローラはマイナーチェンジを受けて排気量が1.2リッターに拡大されたKE11型。オーナーの前田豊さんは現在57歳だが、カローラを手に入れたのは4年前のこと。初代カローラに乗るのが子供の頃からの夢だったという方だ。

ほぼオリジナルの状態をキープしている初代カローラ。

子供の頃からの念願を実現できたのは、たまたまこのカローラが売りに出ているところを発見したから。前田さんは静岡県にお住まいだが、お勤め先の都合で毎月奈良県と栃木県まで移動しなければならない。カローラを見つけたのも仕事で移動した奈良県だった。長年憧れてきたクルマ、しかも売り物に巡り合えたのは偶然ではないだろう。互いに惹きつけられたかのようなエピソードではないだろうか。

グリルなどは初期のKE10用を移植している。

本当なら初期のカローラ1100が欲しかったそうだが、今となっては売り物を見つけること自体が稀。手にしたくてもできないと言っていいだろう。そこで入手したカローラ1200に1100(KE10型)用のラジエターグリルとヘッドライトグリルを移植して、外観を初期型に近づけようと考えた。ところが意外にもライトグリルの取り付け位置が異なり、中央寄りの側面に空いているビス穴は使えない。内側上にある1か所で固定することになったが、このままでもしっかり固定できているので問題ないのだとか。

ホワイトリボンタイヤが古いクルマらしい風情。
フロントフェンダーにはカローラ1200と書かれたエンブレムが装着されている。
古いステッカーなどは剥がさず、あえてこのままにしている。

カローラを手に入れた頃から通勤などには初代ステージアを愛用していた。だからカローラが手元に届いても通勤には使わず、休日だけ楽しむつもりだった。これは多くの旧車オーナーに共通したことだろう。信頼性や実用性に乏しい旧車を普段使いにすると、故障や苦労がつきものだからだ。ところが前田さん、カローラに乗れば乗るほど気に入ってしまい、ついには通勤や定期的に移動しなればならない奈良県や栃木県へのアシにも使ってしまうことになる。それほど運転していて楽しいクルマだからなのだが、それだけ走れば当然のように壊れる。何度もトラブルを経験するが、「壊れたら直すことを繰り返してます」と、まるで気にしていない様子。壊れることを恐れて乗らないより、古いクルマといえども日々運転していれば好調を維持しやすいことも確かだろう。

フロントウインドー内側にPRポイントを掲示。

車両PRを読むと日々の通勤(40キロ)だけでなく毎月、奈良県や栃木県へ移動した結果、年間3万キロ走ることをアピールしている。お話を聞けば「4年目で10万キロを超えました」という驚愕の台詞が飛び出した。確かに年間1万キロ前後を走る旧車オーナーは多いけれど、年間3万キロを走り続け4年目で10万キロを超えたなんて話は初めて聞いた。もちろん、毎日のように乗るから雨の日だって走っている。過保護にすることなく実用に供しているから部分的にサビが発生してきたことも確か。「よく、勿体無いからやめろと言われます」とのことだが古いクルマだからといって、どのように使うかは所有者の自由。歴史的価値などと語られることも多いが、クルマは走ってこそのものではないだろうか。

カローラ1100(KE10)純正ステアリングを移植した室内。
オドメーターは5ケタしかないので一回りしている。

フロントのグリル同様に、ステアリングホイールも初期KE10純正を移植して、運転中も当初のカローラのような雰囲気を味わっている。毎日のように乗るクルマ、しかも常に触れる部分であるステアリングだから、こだわりのポイントといえるだろう。また購入時に6万キロ台を示していた積算計はひと回りしているのだが、この時代の積算計は5ケタしか表示がないため実走行距離がわからない。ちなみに走行距離がひと回りした状態で継続車検を受けた時、検査官に不審がられて一周したことを伝えると、備考欄にメーター交換歴があると記されてしまうケースもあるようだ。

頼りないクッション性を補って実用にしている。
当然クーラーやエアコンは装備されないため扇風機を常備している。
旧車にウインドーフィルムは似合わないため、運転席背後にスダレをかけて日差しを避けている。

古いクルマを実用的に使うなら、様々な工夫が必要になる。エアコンはおろかクーラーさえない室内は梅雨時から秋口まで非常に暑くなる。三角窓を開けていれば走行中は風が入るものの、信号待ちや渋滞時は灼熱と言ってもいい。そこで扇風機を常備して暑さをしのぎつつ、運転席背後にスダレをかけて直射日光が当たらないようにするなど、前田さんも工夫して過ごされている。スダレの横には風鈴まであり、暑さも風情で乗り切っているようだ。

エンジン本体は丈夫だが補器類が何度かトラブルを起こした。
プーリーが割れたためアルミ材でワンオフしている。

毎日のように乗るためトラブルも何度か経験されてきた。これまで走行不能になるようなトラブルはウォーターポンプ用プーリーが割れてしまったこと、ダイナモを支えているステーが折れて本体が脱落してしまったこと、アクセルのリターンスプリングが折れて戻らなくなってしまったことなどがある。ウォーターポンプ・プーリーは主治医のようにしている整備工場でアルミ材から削り出して製作してもらった。やはり古いクルマには専属のメカニックではないが、頼りになる整備工場を見つけないと維持するのが難しいだろう。また全てのトラブルをプロに任せていたら、予算がいくらあっても足りない。だからアクセルのリターンスプリングはホームセンターで見つけた200円ほどのもので代用している。こうしてオーナー自らトラブルを乗り切る覚悟と努力も必要なのだ。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…