結構エグいのでは? 思っていたのに、最近、最新のBMW4シリーズを見ると「おおっ」と目で追ってしまう。あの縦長のキドニーグリルだ。
これまでの経緯を振り返ってみると、その予告となったのBMWのEVモデルのコンセプトカーから。EVなのでそれほど大きなラジエターグリルは必要なくても、縦長に大きく縁取られたキドニーグリルカバーとして表現されていた。まさかそのまま登場しないだろう、と思っていたのだが、次には2019年にConcept 4として登場し、市販化が示された。
……と思ったらBMW4シリーズとして、怒涛のような押し出しで強烈な縦グリルが市販化されてしまった。
その強い存在感には、驚きを隠せなかったのだが、こうして時間が経ちi4やiXそしてM3などが同じ顔立ちで登場するにいたって、そのグリルの刺激が癖になってきたように思う。そのせいか、2シリーズが登場したと言われても、どこかで不足を感じたりする。この感覚は一体どのようなことなのだろうか?
一つには、歴史的モデルの328(1936年)や3.0CSi(E9 : 1968年)などを参照としているとのこと。確かに328は全高が高くスリムなクラシックカーのプロポーションにより必然であったが、E9では328などの縦長のグリルをオマージュと捉えていた面がなくもない。このモデルの影響はその後、3.0 CSL Hommage というコンセプトモデルを生んでいる。発表の場は2015年のヴィラデステというイタリアのカーコンクールイベントで、歴史的モデルの多い中でその伝統を現代に蘇らせたモデルとなった。
しかし、歴史を継承したことが縦グリルに「あり」の判定をさせたのではないように思う。多分それこそが「デザインの力」なのだ。
違和感がやがて魅力に変わるためには、計算されたバランスが潜んでいるのだと思う。例えばこのモデルでいえば、まずグリルをヘッドライトのラインから過度に上に突出させないこと、またヘッドライトにもグリルに負けないだけの力強さを感じさせること。
そして下に伸びたグリルを支えるような、安定性ある造形をバランスよく持たせること。それが左右に配置された大きなインテークと左右端の縦型グリルではないか。
こうした強烈な縦グリルと受ける、安定感ある造形とのコンビネーションが、見るうちに癖になる味を醸し出しているのだ、と思う。違和感あるグリルは、遡ればアキュラやそれこそレクサスにもあったはず。それを魅力に転換させたのは、やっぱりいかにバランスを取るか、だったのだと思う。