清水浩の「19世紀の技術を使い続けるのは、もうやめよう」 第16回 

脱・温暖化その手法 第16回  —科学は自然科学と人文科学から成っている

温暖化の原因は、未だに19世紀の技術を使い続けている現代社会に問題があるという清水浩氏。清水氏はかつて慶應大学教授として、8輪のスーパー電気自動車セダン"Eliica"(エリーカ)などを開発した人物。ここでは、毎週日曜日に電気自動車の権威である清水氏に、これまでの経験、そして現在展開している電気自動車事業から見える「今」から理想とする社会へのヒントを綴っていただこう。

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温暖化対策へのアプローチは2方向から

本文の目的は温暖化の抜本的解決法について述べることである。その話をするために回り道にはなるが、“科学”ということに一旦立ち戻りたい。

小学校の時の教科は算数、国語、理科、社会だった。もちろん体育もあったし、図画工作、音楽もあった。中高では算数が数学になった。もしかしたら高校時代に自然科学、人文科学ということは聞いたことがあったかもしれないが、大学の教科で体験的に初めてその言葉を理解した。ここでは簡単に理系の分野は自然科学、文系分野は人文科学と考えたい。

科学の体系は自然科学と人文科学の2つとなる。

今、人類が解決しなくてはならないのは温暖化である。1988年にNASAのジェームズ・ハンセンがアメリカの上院の公聴会で、この年と前年のひどい干ばつと高温の天気の理由を聞かれて、「その原因の99%は温暖化によるものだ」と発言したことで、この問題が世界的問題として顕在化した。

この発言に基づいて、気象変動に関する政府間パネル(IPCC)が1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された。IPCCは世界195カ国が参加し、各国の政府から推薦された科学者が参加し、温暖化に関する科学的、技術的、社会経済的な評価を行ない、報告書にまとめている。

国際連合主催の地球サミット

また、1992年には環境と開発に関する国際連合会議(UNCDE)、いわゆる地球サミットがリオ・デ・ジャネイロで開かれ、ここで、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)が採択され、155カ国が署名し、1994年に発効した。

それ以降、毎年締約国会議(COP)が開かれている。第3回目は1997年に京都で開かれ、京都議定書が採択されて、各国のCO2削減目標が決められた。その後、COPは続けられ、2015年の第21回がパリで開かれ、ここでパリ協定が採択された。パリ協定ではCO2排出量の削減目標の策定やその後の進捗などの調査が盛り込まれている。

地球温暖化対策のための国際的活動。世界的起源となったのは1988年のアメリカ議会公聴会での発言だ。

こうして温暖化解決のために大きな世界的組織が動いているわけだが、IPCCは理系中心、UNFCCCは国際連合の主催し世界各国の産業団体や市民団体の代表が参加する、いわば文系中心で動いている。そこに関わっている人々も世界で最も優秀な人達であり、この人々が最大の努力を払って解決を目指している。その努力にも拘わらず、温暖化は進行している。しかし諦めるわけにはいかない。何とか科学の力で解決に向かわせなければならない。

何れにしても地球温暖化という問題は、こうした理系、文系双方の異なる視点からの解決策が必要となるのである。

2012年に開発したWil。LEIの改良車で全長4150mmでありながら、後席は新幹線のグリーン車並みの広さを持つ。

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著者プロフィール

清水 浩 近影

清水 浩

1947年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部博士課程修了後、国立環境研究所(旧国立公害研究所)に入る。8…