イラストレーターの溝呂木陽です。以前の連載で書き綴ったヨーロッパ最大級のヒストリックカー・イベント、『ル=マン・クラシック』に今回12年ぶりに訪ねてきたのでレポートさせていただいております。
さて、2022年6月30日の金曜日から7月3日の日曜日まで開催された今回の『ル=マン・クラシック』、中でもボクが気になったクルマはと言えば、初めて全開で走るところを見られるフェラーリ250GTO 64やユニークなスタイリングの“ブレッドバン”、美しい250LM、たくさんのフォードGT40やコブラの他に、複数エントリーしていたフォードGTマークⅣでしょうか。
前回の訪問時にも、ボクの心に刺さった美しいジャガーDタイプや珍しいガスタービンエンジン車のホーメットTXのほか、アメリカ西海岸の資産家にしてレーシングドライバー、ブリッグス・カニンガムが作ったクライスラーHemiV8エンジン搭載のカニンガムC4Rや、なんとキャデラックをベースに、やはりカニンガムによって作られた“あの”ルモンストル(フランス語で“怪物”の意)・ロードスターまで出場! ほかにも多数のパナールの可愛らしい車たちや、“羽”が美しい、ボクの大好きなCDブジョーまで走ります。多数のアルファロメオ軍団の中では、TZに混じっているTZ2がお気に入りです。
色とりどりの名車たちに目移りする中で、今回もまた金曜日から会場でスケッチブックを取り出して、大好きな250GTO 64を鉛筆でドローイングしておりました。なかなか線が決まらず何度も描き直していると、声をかけてくれる人が。絵をお見せすると「私がこのクルマのオーナーですよ」と名刺をいただいてしまいました。
なんと素晴らしい出会いでしょう!
翌日、7月1日の土曜日は朝4時に目が覚めてしまったので、2時間ほどかけて現地で絵を水彩で仕上げていきました。そこでパドックを訪ねてオーナーに完成作をお見せするととても喜んでいただき、写真を撮ったあと、こちらからも名刺をお渡しました。
この話には後日談があります。7月3日の日曜にル=マンからパリに戻ってから、くだんのオランダ人のオーナー氏からメールをいただきました。「あなたの絵をとても気に入ったので、私のコレクションに加えたい」と。こんなに栄誉なことはありません。
そこで「東京での個展に出してから発送します」とお伝えし、その展示の写真と一緒にお送りすることになりました。手前味噌のようですが、ボクの絵がこのオーナー氏に認められたのが、実は今回の訪問で一番の収穫でした。
今回のために買ったミラーレス一眼を構えつつ、コースを疾走するフェラーリGTOやLM、フォードGTマークⅣやアルピーヌなどの走りに釘付けでした。その日はナイトセッションの闇の中をライトオンで走るジャガーDタイプなどを見て、夜遅く市内のホテルへ帰着。
話を元に戻しましょう。土曜日はコース脇でレースを見ることに専念しました。レースは各時代ごとに6クラスに分かれており、1時間おきに各クラスのレースがスタートし、1レース約40分で行なわれます。金曜日には、あらかじめ予約していた有料グランドスタンドで観戦していたのですが、ここでは金網が邪魔をしてうまくクルマの写真を撮影出来ません。ところがパドックのスタンドの下に、コース脇のタイヤバリヤから近い金網があり、そこの金網にレンズを差し込むとコースをうまく撮影出来ることを発見。そこで土曜日はほとんどそこからの観戦となりました。
最終日、7月3日の日曜日は朝5時起きでサーキットへ。ナイトセッションは夜から朝まで続いています。朝焼けのサーキットでのブガッティやベントレーの姿は素晴らしいものでした。そしてボクらの秘密の撮影スポットからの眺めもまた素晴らしいものでした。
こうして午後までサーキットやパドックを楽しんで、3時には併設のル=マン・ミュージアムへ。そこでもCDブジョーやポルシェ917LHなどを堪能し、お土産も買ってパリへと帰りました。
今回の素晴らしい体験に同行してくれたパリの友人Hさん、このご時世で海外取材を許していただいた皆様、ありがとうございました。特に家族には感謝です。