【トップ画像】マツダMAZDA2 15MB 車両本体価格○168万8000円 試乗車はオプション込み173万7500円 ユーティリティパッケージ(リヤ6:4分割可倒式シートバック/ダークティンテッドガラス、CDプレーヤー、185/60R16&16+5/5Jアルミホイール(6万6000円)
真っ白で色気も何もあったものではないので営業車に間違われそうだが(間違われても困ることはないが)、モータースポーツベース車である。マツダ2の15MBというグレードだ。試乗車はユーティリティパッケージ(6万6000円)を選択しているので185/60R16サイズのタイヤと16インチアルミホイールを装着しているが、標準は185/65R15+軽量アルミである。「どうせ、ホイールは社外品に換えるんでしょ?」というスタンスだ。
室内の装備も質素である。シートはベースグレードの15Cと同じストライプ柄だ。これも、交換することを前提にした仕様選定である。が、無理に交換しなくてもいい。ホイールもシートも、ベーシックだからといって安っぽくないのがいい。
エアコンはオートではなく、マニュアルである。ダッシュボードにはセンターディスプレイが載っておらず、代わりに(15Cと同じ)セグメント液晶オーディオディスプレイが載っている。だから、ナビゲーション用SDカードを買って地図画面を表示させることはできないし、スマホをつないでナビ機能を使うこともできない(スマホの音楽はかけられる)。モータースポーツベース車ならではの割り切りだ。
トランスミッションは6速MTのみの設定である。パーキングブレーキが電動ではなくて引き上げレバー式なのはモータースポーツベース車だからはなく、装備が充実した15S PROACTIVE S Packageも同じだ。つまり、全車共通である。
マツダ2のメーターは中央に大型のアナログメーターを置き、その左右にデジタルの表示部を設けた構成となっている。PROACTIVEより上のグレードは中央のアナログメーターがエンジン回転計になっているのだが、15MBは下位グレードの15Cや15Sと同じで中央が速度計となっており、左側のデジタル表示部にエンジン回転数がこぢんまりとアナログ表示される。「真ん中にエンジン回転計が欲しいんだけどなぁ」と感じ続けた試乗期間であった。エンジンをぶん回して走るのが、15MBの最大の楽しさだからだ。
そのエンジンだが、1.5ℓ直4自然吸気のガソリンエンジンを搭載する。P5-VPSの型式は他のグレード(減速エネルギー回生システムのi-ELOOP搭載車を除く)と同じだ。だが、スペックは異なる。以下のとおりだ。
15MB
最高出力:85kW(116ps)/6000rpm
最大トルク:149Nm/4000rpm
その他のグレード
最高出力:81kW(110ps)/6000rpm
最大トルク:141Nm/4000rpm
15MBのエンジンは圧縮比が14.0なのに対し、その他のグレードが搭載するエンジンは圧縮比12.0である。もうおわかりだろう。15MBのエンジンはプレミアムガソリン仕様なのだ。ヨーロッパ仕様のエンジンである。その他のグレードはレギュラーガソリン仕様となる。スペックの違いは使用ガソリンの違いに由来する。オクタン価の高いガソリンを使用することでノッキングしにくくなるので、圧縮比を高くすることができ、そのぶん燃焼効率が高まってパワーが出る寸法だ。
モータースポーツベース車を買う層がどれほど気にするかは不明だが、実は燃費もいい。15Sや15S PROACTIVEなどの6速MT車(車重1040kg)のWLTCモード燃費が19.8km/ℓなのに対し、15MB(車重1040kg)は20.2km/ℓである。
15Sや15S PROACTIVEなどの6速MT車と15MBでは、1速から3速までの各ギヤのギヤ比は同じだが、最終減速比が異なる。15MBのほうが7%ばかり減速比が大きいので、15MBの1速〜3速は加速性能重視ということになる。4速〜6速のギヤ比はその他のグレードとオーバーオールのレシオが同等になるように調整してある。だから、100km/h走行時のエンジン回転数はほとんど変わらず、2300rpm近辺だ。
走りだけじゃない、燃費も優れている
筆者お決まりの小田厚燃費(小田原厚木道路の小田原西〜厚木IC間約32kmを左側車線を基本に走行)を測る機会があったのでお知らせしておくと、25.7km/ℓだった。淡々と走ると、相当に燃費がいい。
だが、15MBが喜ぶのは(と言いつつ、ウキウキするのはドライバー)、シフトレバーを駆使してエンジンをぶん回したときである。加速重視のギヤ比設定になっているといっても、のけぞるような加速を披露するわけではない。しょせん85kW(116ps)のエンジンだ。数値上はレギュラーガソリン仕様に対して4kW(6ps)のアドバンテージがあることになるが、筆者の鈍いセンサーではその差を感じ取るのは不可能だ。
市街地を交通の流れに乗って淡々と走るようなシーンでは、何の面白味もない。エンジンが豹変するのは、3000rpm以上のゾーンだ。それ以下の回転ゾーンがウソだったかのように、突然快音を発し始める。15MBの楽しさを存分に味わえるステージはサーキットということになるだろう。あるいは、山道だ。上り勾配がきつければきついほど、遠慮なくエンジンを高回転まで引っ張ることができる。しつこく言うようだが、しょせん85kW(116ps)しかないので、鋭い加速は期待できない。「一所懸命頑張ってこれだけ?」という印象だ。
でも、楽しい。パワーが控え目なので、思い切りぶん回しても大した車速にならず、遠慮せずぶん回せるのもいい。欲を言えば(メーターの件でも言っているが)、アクセルペダルの踏み込みに対するレスポンス、いわゆるスロットルレスポンスがもう少し良くなってくれると、それだけで楽しさは倍増にも倍々増にもなるのだが。多くを求めすぎだろうか。
マツダ2にモータースポーツベース車の設定があるのは、マツダの良心である。プロフェッショナルのレーシングドライバーが腕を競うトップカテゴリーだけがモータースポーツではない。普段乗っているクルマでサーキットを走るのも、立派なモータースポーツだし、速さを競うことだけがモータースポーツでもない。トップだけでなく、グラスルーツ(一般大衆)を大切にするのがマツダのスタンスだ。
マツダ公式ホームページのマツダ2を選択し、「モータースポーツベース車」のページを開くと、「15MBで楽しめるマツダのモータースポーツイベント」のコーナーがある。モータースポーツは、実はとても間口が広いことを教えてくれる。
マツダMAZDA2 15MB
全長×全幅×全高:4065mm×1695mm×1500mm
ホイールベース:2570mm
車重:1040kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:P5-VPS(SKYACTIV-G1.5)
排気量:1496cc
ボア×ストローク:74.5mm×85.8 mm
圧縮比:14.0
最高出力:116ps(85kW)/6000pm
最大トルク:149Nm/4000rpm
燃料供給:DI
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:44ℓ
燃費:WLTCモード 20.2km/ℓ
市街地モード16.3km/ℓ
郊外モード:20.7km/ℓ
高速道路:22.1km/ℓ
トランスミッション:6速MT
車両本体価格:168万8000円
試乗車はオプション込み173万7500円