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CX-5はSmall(FF)、新しいCX-60がLarge(FR)?
マツダは4月30日に北米で出したリリースで、この秋からアメリカでMX-30(EV)を発売すると発表している。まずはカリフォルニアで販売を開始する。ご存知の通り、MX-30は、日本ではSKYACTIV-G2.0+24Vマイルドハイブリッドと35.5kWhのバッテリーを搭載するBEV〔電気自動車)の二本立てだが、欧州ではEVモデルが先行して導入されている。北米でもEVモデルが売られることになる。
そのプレスリリースに気になる一節があった。
“Mazda is preparing for the fast-changing US market demands by taking a multi-solution approach to electrification,” Jeff Guyton, President of Mazda North American Operations, said. “The battery-powered MX-30 will begin the introduction of additional electrified models, including a series plug-in hybrid with a rotary generator for MX-30, a plug-in hybrid for our new large platform, and a traditional hybrid for our new American-made crossover. While these powertrains will be optimized for their platforms, Mazda fans can expect great driving dynamics and beautiful design across all models.”
北米マツダ(MNAO)のプレジデント、ジェフ・ガイトン氏は、
「バッテリーEVのMX-30を皮切りにマツダは電動モデルを導入していきます。ロータリー発電機を積んだシリーズPHEのMX-30、新しいラージ・プラットフォームのPHEV、そして、アメリカで生産するクロスオーバーにはトラディショナルなハイブリッドを搭載します」
と述べている。
1年前の記事で、マツダのSUVラインアップの予想したことがある。
2021年8月現在の状況を考えて再び予想をしてみよう。
まずは、現在のマツダSUV(クロスオーバー)のラインアップを整理してみる。ここで、注意してほしいのは、表からもわかるように、マツダにとってもっとも重要なSUVモデルは、CX-5とCX-30ということだ。この両モデルはグローバル戦略車で、MX-30は電動化へ向けた別の意味で重要なモデルである。
ガイトン氏のいう、「アメリカで生産する」の意味は、トヨタとマツダがアラバマ州ハンツビルに建設した新工場で造る、ということだ。この工場はMazda Toyota Manufacturing, U.S.A., Inc.(MTM)。トヨタはカローラクロスを、マツダも「北米市場に新導入するクロスオーバーモデル」をそれぞれ年間15万台規模で生産することになっている。生産開始は2021年秋、つまり今年だ。コロナウイルスの影響で少し時期が後ろへずれるかもしれないが、いずれにせよ、間もなくである。
そして、「トラディショナルなハイブリッド」とは、もちろん、トヨタのTHSⅡのことだ。
つまり、アラバマのMTMで生産するのは、トヨタのハイブリッドシステム(THSⅡ)を搭載するクロスオーバーモデルということだ。これは、なんだろう?
15万台規模というのは、マツダにとって小さくない数字だ。
前述したとおり、マツダにとって最重要モデルはCX-5である。北米で2020年は14万6420台、19年は15万4545台を売り上げた最量販モデルである。2021年もCX-5は1-7月で10万8920台も販売されている。素直に考えたら、MTMで次期CX-5(THSⅡ搭載モデルもアリ)を15万台生産する、ということになる。
ところが、マツダが現在開発中の「Largeプラットフォーム」はエンジンをフロントに縦置きする後輪駆動(FR)ベースのアーキテクチャーだ。巷間、「次期CX-5は、LargeプラットフォームでFRベース」と噂されている。マツダも否定していない。
が、しかし……。
マツダの屋台骨を支えるCX-5を、FFからFRへ、しかも新開発の直列6気筒エンジンを搭載する大幅刷新へと、一種の”賭け”に出るだろうか? 絶対に失敗してはいけないCX-5を、だ。
筆者は、懐疑的だ。
MTMで生産するトヨタのカローラクロスがFRベースのSUVであれば、次期CX-5もLargeプラットフォーム(FR)になってもおかしくないが、もちろんカローラクロスはエンジン横置きのFFベースだ。
北米におけるCX-5の人気は盤石だ。SUVとしての「知名度」も高い。FFベースで不満があるわけではない。FRベースにして直6を積んで価格が上昇したら、同じように売れるかどうか?
筆者の予想は、
次期CX-5はエンジン横置きFFベースのまま。THSⅡを積むハイブリッドモデルが登場する。
では、Largeプラットフォームはどうなるか?
これも予想に過ぎないが、
CX-60というクロスオーバーモデルを新規に投入するのではないか?
マツダには、いくつかモデルラインがある(勝手に命名したものだが)。
MAZDA2、3、6の「MAZDAライン」
CX-3やCX-5の「MAZDA CXライン」
それから革新的なことにトライするときに使う「MAZDA MXライン」がある。
そして、現在は存在しないスポーツカーの「MAZDA RXライン」である。
これが近い将来、こうなるのではないかと予想する。
赤字は勝手な予想だ。
マツダは、SUV(CX-5、CX-8、CX-9)とクロスオーバー(CX-30)の2系統にモデルラインアップを分けたいのではないか、と想像している。SUVが一桁、クロスオーバーが二桁というように。
上の表にあるグレーで書かれた
CX-3
CX-4
CX-20(勝手な予想で登場するとして赤字にしてあるが)
CX-50
CX-60(こちらも登場を予想しているので赤字)
CX-70
CX-80
CX-90
は、アメリカで商標登録が済んでいる。
次期MAZDA2、そしてそのクロスオーバー版がCX-20
Largeアーキテクチャーの次期MAZDA6、そしてそのクロスオーバー版がCX-60
となれば、数字的な整合性がとれる。「5まで」がSmall(FF)「6から」がLarge(FR)ということだ。例外はMX-5(ロードスター)だが、これは歴史的なモデル名になっているので、変えようがない。MX-6というモデル名は現状では登録されていないことを考えても、MX-5はそのままなのではないだろうか?
注目の「RX」については、現在
RX-7
RX-VISION
が商標登録済みである。
パワートレーンから予測してみる
今度はパワートレーンから考えてみよう。
上の表は、現行モデルの搭載パワートレーンである。赤字になっているのは、いわゆる「電動化されたパワートレーン」だ。
これがこうなる!と予想してみた。
パワートレーンはほぼ電動化される。
ベースとなるマイルドハイブリッドは、Smallプラットフォーム(FF)は24V、Largeプラットフォームは48Vを採用する。
つまり、電動パワートレーンとしては
Smallプラットフォームの
次期MAZDA2/新型CX-20/MAZDA3/CX-30/次期CX-5
は
24Vマイルドハイブリッド/トヨタTHSⅡ/ロータリー搭載のレンジエクステンダー/EV
Largeプラットフォームの
次期MAZDA6/新型MAZDA CX-60/次期CX-8/次期CX-9
は
48Vマイルドハイブリッド/縦置き直4+PHEV
ということになる。
もちろん、注目の直列6気筒エンジンはLargeプラットフォームだけが搭載することになる。
と、勝手な予想をしてみたが、CX-5がFFのままMTMで生産されるのか? については、別のシナリオもある。マツダは、あくまでも「北米市場に新導入するクロスオーバーモデル」と言っている。これは次期CX-5が、SUVではなくクロスオーバー(車高もやや低くなって街乗り志向になる)なって、CX-50を名乗る、という可能性だ。
その場合は、
新型CX-50(Smallプラットフォーム、THSⅡあり)が現行CX-5の後継モデルになる、というシナリオだ。あくまでも最量販モデルは「新型CX-50」が担い、Largeプラットフォームの新型SUVとしてCX-5が登場する? (ちなみにCX-6はいまのアメリカで商標登録されていない)
このシナリオを採用すると、CX-50がFF(Small)でCX-5がFR(Large)ということになり、モデル名としての整合性がやや低くなってしまう。商品も技術もロジカルに考えあるのがマツダの特徴だから、筆者としては、やはり次期CX-5はFF説と唱えたい。
おそらくLargeプラットフォームのモデルは、Made in Hiroshimaとなる。
果たして、どうなるか、本当に楽しみだ。