日産キックス「“e-POWER第1段階の完成形”モーター駆動の気持ち良さばかりが際立つ」燃費も計ってみた

日産キックス X(FF)車両価格○279万9900円
ノート、セレナに続いて登場したe-POWER第三弾がキックスだ。日産の開発時は、キックスをもって“e-POWER第1段階の完成形”だと自信を見せる。電気駆動の気持ちよさはさらに進化しているか? ジャーナリスト世良耕太が試乗した。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
【トップ画像】日産キックス X(FF)車両価格○279万9900円
WLTCモード燃費:21.6km/ℓ  市街地モード26.8km/ℓ  郊外モード20.2km/ℓ  高速道路モード20.8km/ℓ

日産キックスはノート、セレナに次ぐe-POWER搭載車だ。ノートはノートe-POWER、セレナはセレナe-POWERと呼ぶが、キックスはキックスe-POWERとは呼ばない。ノートやセレナはガソリンエンジン搭載車もラインアップするが、キックスにはe-POWERの設定しかないからだ。キックスといえば自動的にe-POWERの搭載を意味する。

e-POWERはハイブリッドシステムの一種だ。だが、ガソリンエンジンが主役で、エンジンが不得意とする領域だけモーターでアシストする方式ではない。シリーズハイブリッドと呼ばれる方式で、エンジン(1.2ℓ直3自然吸気)は発電に徹する。タイヤに繋がっているのはモーター(最高出力129ps(95kW)/最大トルク260Nm)のみだ。だから、アクセルペダルを踏んだときのフィーリングは、電気自動車(EV)と同じである。レスポンスが良く、切れ目のない、力強い加速が持続する。


EVの場合はバッテリー残量がフルのときも、空に近づいても走りのフィーリングは変わらない。しかし、e-POWERはそうはいかない。バッテリーの容量が異なるからだ。現行リーフが搭載するリチウムイオンバッテリーの容量は40kWhまたは62kWhだが、キックスのバッテリー容量は1.47kWh、セレナe-POWERは1.8kWhしかない。だから、モーターを駆動するとすぐに電池が減ってしまう。

そのときのために発電用のエンジンを積んでいるのだが、先代ノートe-POWERもセレナe-POWERも、エンジンがかかると途端に騒々しくなって、気分が台無しになる(少々大げさに表現しているが)。そのことは日産自動車の開発陣も重々承知しており、手を打ったのがキックスだ。開発に携わる技術者のひとりは、「このクルマをもって第1段階の完成形だと思っています」と話す。

エンジン形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:82ps(60kW)/6000rpm 最大トルク:103Nm/3600-5200rpm 過給機:× 燃料供給:PFI 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:41ℓ
モーター:EM57型交流同期モーター  定格出力:95ps(70kW)  最高出力:129ps(95kW)/4000-8992rpm  最大トルク260Nm/500-3008rpm 最終減速比:7.388

ん? そう、ここでいうe-POWER第二弾は、新型ノート(全車e-POWERになった)、そして新型ノート オーラのことだ。ここではe-POWER第1段階の完成形について記していこう。エンジンがかかるとうるさいのなら、なるべくかからないようにしよう、というのが、キックスが搭載するe-POWERに対して打った手のひとつだ。

ノートe-POWERとセレナe-POWERが好評を博してたくさん市場に出回ったことにより、実際の使われ方がだいぶわかるようになった。バッテリーも、電流を制御するインバーターも、安全率を見込んで市場に送り出していたが、「この使われ方なら、安全率をもう少し削っても大丈夫」と確信が持てるようになった。従来は市街地を走ると頻繁にエンジンがかかって、いい気分に水を差すことが多かったのだが、キックスが搭載するe-POWERではエンジンの始動頻度を徹底的に低くした。実際にキックスに乗って確かめたが、説明どおりである。エンジン音に邪魔される頻度は圧倒的に少なくなっている。


全長×全幅×全高:4290mm×1760mm×1610mm ホイールベース:2620mm
トレッド:F1520mm/R1535mm 最低地上高:170mm
車重:1350kg 前軸軸重850kg 後軸軸重500kg

キーワードで検索する

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…