新型日産フェアレディZにみる「和テイスト」

新型日産フェアレディZのカラーリングに感じる「日本」

新型フェアレディZには、確かにS30やZ32といった伝統を感じることができる。これほどまでにもオリジナルZをリスペクトしているか、ということを感じるデザインだ。それと同時に、現在日産が探求している「日本らしさ」も感じ取ることができる。今回は、新型Zのボディカラーにフォーカスして見てみよう。
プロトでは装備されていなかったリップスポイラーを装備する仕様も。ルーフはブラックアウト。「懐かしさ」がかなり色濃い。

新型フェアレディZが北米で発表された。グレードとしては、Sport、Performanceそして、初期限定モデルとしてProto Specが加わる。

気になるのはそのデザインが1年前に公表されたZプロトに対してどれほど違うのか、という点だった。しかし発表会の中でも「95%はプロトのまま」とコメントされており、見た目では北米向けのランプ類の保安対策が施された程度だった。基本的にほとんど造形に手は加えられていないらしく、量産型としてわずかな寸法の違いはあるが、デザインに対するコンセプトを揺るがすものではないといえそうだ。

とはいえ、不思議なことに量産モデルとしてその写真を見た途端に、命を与えられたような生っぽさ「生命感」のようなものを感じたのも事実だ。Zプロトとの違いは、ヘッドライトリングのサイドにアンバーのウインカーランプが追加され、リヤサイドランプを装着されていた。加えて発表されたモデルにはリップスポイラーを採用。Performanceグレードに採用されるものとのことで、造形的には好感の持てるアイテムだ。しかし、プロトを見た時にはこのフォルムだけで空力を完結できたのか! と驚いたこともあり、ちょっと残念でもあった。

そしてプロトではダンロップの専用タイヤSP SPORT MAXXとは表記されていたが、サイドウォールがフラットに構成されたレーシーなコンセプトタイヤのようなモデルが採用されていた。しかし量産型には、サイドウォールに張りのある一般的な市販タイヤが装着されていた。併せてホイールハウスのクリアランスが少し広がった。

手前がセイランブルー、後ろがイカズチイエロー。ともに新色だ。

量産モデルとして用意されるボディカラーは、モノトーン3色と新色となるイカズチイエロー、セイランブルーを含む2トーン6色だとのこと。いずれもスーパーブラックルーフと呼ばれる、黒いルーフがセットされる。今回の発表ではその、イカズチイエローとセイランブルーの2モデルが紹介されたが、イエローはZプロトでお披露目されていたカラーだ。

これらの色、どこかで見た印象がと思われる方も多いかもしれないが、初代Zで時に北米などで人気のあった色に近いようだ。イエローは特に2代目(S130)や4代目(Z32)では日本でも中心的なカラーとなったが、それらに近いともいえそうだ。カラーの近似性は実車を見て見ないとなんとも言えないので、是非とも実車を見てみたい。

カラー担当デザイナーは、プロト発表時のオフィシャル動画のなかで、「黄色でスポーティな表現をしたい」と述べ、「重要なことはヘリテージと新しさの表現」とも語っている。このことはプロトばかりでなく、新型のZにも通じるメッセージだと思う。

プロポーションはまさに初代S30のよう。ボディカラーはイカズチイエロー。

イエローのイカズチとは、漢字で書くと「雷」つまりカミナリのことで、雷鳴やその光のパワフルさ、鋭さなどを表現したものだろう。光の種類や日没、夕暮れ、明暗によってその表情を大きく変えるようだ。

そしてブルーのセイランとは、「青藍」。つまりは日本の伝統的な藍色の一種で、紫がかった暗めの青色とのこと。また「青嵐」と書けば、晴れた日に山にかかるかすみ。晴れた日に吹く山風。との意味もあり、こちらもまたふさわしいように思える。物静かさから爆発的な躍動まで幅広い表現力を持つイカズチイエローに比べて、ベースから躍動や脈流など激しさも感じさせるカラーに思える。初代Zでは躍動感あるソリッドカラーに対して、マルーン(あずき色とも)がZを極めてシックな装いに一変させてしまっていた印象があったが、実は歴代のZでは異なる2つの表情は常に表現されてきていたように思う。

意外にも肉感的な表情を見せる夕暮れの新型フェアレディZ。

日産はここのところに日本のことばにも表現される日本人の心や文化といったものを大切にしており、これらの言葉も単なる色目とその音の印象だけと切り取ったものではないはずだ。その観点からいえば、カタカナで表現するセイランは、複数の意味合いを持たせたものかもしれない。

インテリアカラーは、グラファイト、レッド、ブルーの3色を用意したという。そして限定モデルのProto Specにはインパネのステッチなどを始め、インテリアのアクセントにイエロー色を採用。パンチングの施されたスウェードのシート表皮では、地色にイエローを採用することで独特のグラデーションを楽しむことができるという。いくつかのコンセプトカーで、ボディの内側に独特のカラーリングを施し日本の着物の裏地のような象徴的な表現をしてきたことがあったが、その日本的な感覚を進化させたものと捉えることもできる。

プロトスペックのインテリア。イエローの差し色とステッチ。そしてシート座面には裏地の透けたグラデ表現が印象的。

今回の新色となる2つのボディカラーは、ともに太陽の下でじっくりと日本語としての意味合いを感じてみたい。そんなストーリー性に溢れるカラーだ。またそれは内装についても同様で、控えめな配色でありながらも強い差し色やステッチ、合わせ、など、そこにどんな思いが込められているのか、そんなことを想像して見るのも面白い。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…