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2023年型トヨタ・GRスープラに、新たに6速インテリジェント・マニュアルトランスミッションをオプションで追加された。既にパワーとパフォーマンスを兼ね備えているスープラだが、MTミッションが加わったことで、より直感的でダイナミックな操作フィーリングが実現された。MTミッションは、スープラ3.0および3.0プレミアムにオプションとして設定されている。MT 3.0と3.0プレミアムのカラーは、スープラの標準色に加え、スープラ2.0にも設定されている新色のストラトスフィアブルーが用意される予定。また、2023年限定の特別仕様車「A91-MT エディション」が生産される。この特別モデルについては後述する。
ドライバーが直に感じることができるエンジニアリング
GRスープラのMTミッションは、TOYOTA GAZOO レーシング エンジニアが、トヨタモーター・ヨーロッパ、ドイツのZFと共同で開発し、3.0L 382HP直6エンジンが発揮する出力・トルク特性に合わせて専用設計した部品で構成されている。既存のトランスミッションハウジングとギアセットを組み合わせながら、新しいシフトレバーを開発。音響パッケージなどの不要な要素を取り除いて軽量化し、マニュアル装備のスープラの総重量は1,537kgに抑えられている。トランスミッションの心臓部には、強化ダイヤフラムスプリングを備えた新開発の大径クラッチが搭載されていおり、摩擦面積を拡大しスプリングを強化することで、GRスープラの高トルクエンジンにふさわしい高性能を実現している。
また、マニュアル変速機には、スポーティな走りを優先した新ソフトウェアでプログラムされたインテリジェントマニュアルトランスミッション(iMT)が採用されている。シフトアップ時には、クラッチを繋いだ瞬間と離した瞬間にエンジントルクが最適になるようにパラメータを調整し、シフトダウン時にはレブマッチングを行うなど、安定した性能を発揮するような操作がソフトウェアによって行われる。iMTはデフォルトで設定されているが、インディビジュアルモードで任意でオフにすることも可能。
発進をサポートするため、ファイナルドライブ比が3.15(GRスープラAT)から3.46(GRスープラMT)へとショート化。その結果、スポーツカーにふさわしいレスポンスとギアリングを実現し、メーカー推定0-60mph(0-96km/h)加速は4.2秒となった。ミッション操作の確実性を高めるために、ミッションノブのレバー比率が細かく設定され、ストローク量も最小限に抑えられている。また、人間工学に基づき、コンソールユニットやドライブモードセレクターの位置を調整。シフトノブとコントロールパネルのクリアランスを1.7インチにするなど細かな配慮が行われている。
トラクションのための実用性チューニング
GRスープラのトラクションとブレーキにはMTミッションでの走行を前提に、ATとはまた違った特別なチューニングが施されている。例えば、AT車の場合、路面凍結した上り坂から発進する場合、後退やホイールスリップはほとんどなくスムーズに発信することができる。しかし、MT車の場合はギアを1速に入れ、クラッチを繋げたときにホイールスピンを起こしクルマの制御を失ってしまう危険性が高まってしまう。そこで、トヨタのエンジニアは、TRAC(トラクションコントロール)システムをチューニングし、オートマチックと同様のスムーズな操作を実現した。GRスープラの特徴である高いエンジントルク、ワイドタイヤ、後輪駆動に最適化したシステムに専用チューニングされている。
コーナー立ち上がりの加速時のキャラクターは、トヨタがGRスープラで培った「Fun to Drive」クオリティの重要な要素である。新型MT車では、スロットルでのコーナー立ち上がり時の俊敏性と安定性を理想的にバランスさせるために、トラクションコントロールに再び注目され、ドライバーが意図したラインを忠実に走行できるよう安定性を維持しながら、適切なパワーでスポーティな走りを実現するよう調整されている。
また、GRスープラには、どんなシーンでも楽しく走れるようにという思いから、新たに「ヘアピン+」機能が搭載されれている。これは、路面の摩擦が大きい上り坂(5%以上)でタイトなカーブを曲がるときに、より自由でアグレッシブな走りができるよう設計されたものである。エンジントルク制御が最適化され、左右のタイヤのホイールスピンの差を大きくすることで、よりダイナミックなコーナリングが可能になった。
VSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)だけではコントロールしにくい「スナップオフ」のオーバーステアに対しては、ARP(アンチロールプログラム)をマニュアル車、オートマチック車ともに採用された。これは、ハイレスポンスなサスペンションセッティング時に発生する急激なグリップダウンに対して、より早い段階でVSCを介入させるものとなっている。
ドライビングモードは、全グレードで、スロットルレスポンス、サスペンションの減衰力、パワーステアリングの設定を調整する「ノーマル」「スポーツ」「インディビジュアル」モードを選択することができる。さらに、3.0グレード以上には、運転操作や路面状況の変化を常にセンサーが感知し、電磁弁でショックアブソーバーの減衰力を細かく制御するAVS(Adaptative Variable Suspension)が搭載されている。3.0グレード以上では、車両安定性としなやかな乗り心地を高次元でバランスさせたNORMALモードで、快適性を犠牲にすることなくスポーツ走行を体感することができ、SPORTモードでは、ロールを抑えた安心感のあるフラットな車体姿勢と、より俊敏なステアリングレスポンスによる走りが実現されている。
特別仕様車「A91-MT」
2023年型のみとなる特別仕様車「A91-MT」は、ヘーゼルナッツカラーの専用レザーシート、GRロゴ入りシフトノブ、12スピーカーのアコースティックチューニングされたプレミアムJBLサウンドシステムなどを装備した特別モデルとして、500台限定で販売される。外観は、赤い「スープラ」バッジと赤いGR Supraエンブレム付きキャリパーが、極端に凝縮されたデザインを際立たせている。カラーは、バーンアウトとCUラテールグレーの2色展開となり、フローズンガンメタルグレーの19インチ鍛造ホイールを装備している。また、赤いストラットタワーバーが、精悍なスープラにアクセントを加えている。
2023年式GRスープラ3.0は、AT車、MT車ともにサスペンションのチューニングを行い、ショックアブソーバーを変更することでロールバランスと乗り心地が向上されている。また、電動パワーステアリングの機械部品とシステムの作動パラメーターも再チューニングされている。3.0は全モデルにアクティブリアスポーツディファレンシャルを標準装備している。
3.0 MTには、新開発の19インチ鍛造アルミホイールが装着され、カラーは従来の標準色とプレミアム色に加え、新色のストラトスフィアブルーが用意される予定。インテリアでは、ヒーテッドブラックレザートリムシートが標準装備となっている。「3.0プレミアム」は、「3.0」の装備に加え、レッド&ブラックレザートリムインテリア、フルカラーヘッドアップディスプレイ、音響調整された12スピーカーのJBLサウンドシステム、Qiワイヤレスチャージャーを標準装備している。