【火曜カーデザイン特集】 新型ZにはTバールーフが似合う! はず…

新型日産フェアレディZに期待したいのは ”Tバールーフ” かも

新型フェアレディZには、Z nessを強く感じる。それが、初代や初代を強く継承した2代目のイメージを蘇らせてくれたためであることは、明白な事実だ。そこでもまだ、なにか足りないものがある。それはオープンモデルではなく、2代目で登場したTバールーフなのだと思うのだが、どうだろうか? きっとロードスターよりも、Tバールーフの方が似合うのではないか。
2代目S130フェアレディZで初めて登場したTバールーフ。

ZにはロードスターよりもTバールーフが似合うのではないか!!

今モーターファンjp編集部で話題になっているのは、新型ZはZ35なのかZ34のビッグマイナーチェンジなのか、それともZ34だけどフルモデルチェンジなのか? ということ。そういえばプレスリリースのどこにもZ35とは書いていない…とか、そんな色々なことから憶測もあって新型フェアレディZは話題に事欠かない。

たしかにプラットフォームの刷新はニューモデルと比例しないので、Z34のプラットフォームを継承しながらのフルモデルチェンジも全然アリだ。しかしそうなると、気になるのはロードスターの登場だ。Z34にもロードスターは存在したので、プラットフォームを流用したのであれば技術的にもそれほど多くの苦労なくできるのではないか、と外野としては思ってしまう。

4代目Z32ではコンバーチブルが登場。

歴史を振り返ればZ32ではコンバーチブルが存在したし、Z以前のフェアレディはオープンカーとして登場している。さらにいえば、初代フェアレディZ の開発にあたっては、オープンカーも検討されていたことを示すスケッチも残されている。そんなことが、巷での”新型Zのロードスター登場説”という噂を呼んでいるのかもしれない。

しかしデザイン視点から見れば、この新型のデザインは、本当にロードスターとしての整合性があるものなのだろうか? と疑問視してしまう。むしろTバールーフを熱望したい、なんて思ったり。

Z32はコンバーチブル、その後はロードスターが登場

フェアレディZとして初めてオープンカーを登場させたのはZ32。このモデルはリヤゲート一体型のリヤピラーデザインを持っていたことから、リヤセクション部分をなくしてもZ32らしさはそのまま維持しやすかった。また、デザイン的にもオープンカーもある程度作りやすかったのではと思われる。ネーミングは”コンバーチブル”とGT=グランドツーリング色の強いものだった。

その後のZ33、Z34ともオープンモデルは継承されたが、”ロードスター”と呼び名が変わった。

日本語表記のコンバーチブルは、英語の発音的にはコンバータブルとか、コンバートブル、と聞こえることからもわかるように、変えられる、変換できるという意味。つまりはオープンカーにもに変えられるモデルという意味合いが強い。

対するロードスターは、カテゴリーとして軽量に徹したスポーツモデルのことで、ルーフさえも持たなかったスポーツカーだ。さらにかつてのネーミングが生まれた時代には、軽量化のためサイドウインドウやドアさえもないものなどを示していた。そのためルーフはあっても簡素な幌で、雨よけでしかなかった。屋根のないことは結果であって、速さを目的に軽量に作られたモデルというスタンスだ。

マツダのロードスターもそうした思いをベースに生まれたもので、初代では時代進化分の最低限の快適装備として、サイドウインドウは採用されたがパワーウインドウはオプション装備、幌もできるだけ簡素に仕立てられ当時としては当然ではあるが開閉は手動式となっていた。エンジンも最低限の1.6リットルして発祥したのも、必要最小限の思いからのものだった。全体として軽量&コンパクトはロードスター必須の要素だったのだ。

フェアレディZがオープンモデルを設定したことに対しても、コンバーチブルを名乗るZ32とロードスターを名乗るZ33、Z34では全く異なる思いがある。それは2by2として後席を用意するかどうかのコンセプトにも関わるもので、Z32としてはGT=グランドツーリングとしての価値も生んでいた。グランドツーリングは、大づかみに言えば長距離走行を快適に楽しむモデルで、必要にして十分程度の荷室も前提とする。こんなところから、実用性を少し匂わせるモデルという感じの存在感が漂っているとみればいいだろうか。ここにはパッケージは絶対的に異なるが、ポルシェ911なんかも入ってくるのだと思う。対するZ33は、よりスポーツ性に特化したどちらかと言えばスプリントモデルと言えるだろう。Z33のサイドビューを見てもわかるように、キャビンも必要最小限のコンパクトな設計となっている。ハッチゲートも最小限に絞って、不必要さを削ぎ落としたフォルムだ。この視点からロードスターというネーミングも生まれてきたものだと思う。ただこのZ33も名作と言えるもので、初代Zのイメージを持たせながらも、見事にスプリント性を表現して見せたと思う。

5代目Z33のサイドビュー。リヤセクションをできるだけ小さく構成。
Z33。左がクーペ、右がロードスター。

対するZ34ではZ33のパッケージを汲みながらも、究極のスポーツ性よりも、やや初代Zの持つGT性にも意識を傾けているように見える。どこでそれが言えるのかと言えば、あくまでもデザインの話だがリヤセクションを究極には絞り込まずにトランクスペースを確保したようなスタイルとしている。これがフォルムとして初代Zに近いイメージを醸し出したのだと思う。そのスタイルにロードスターという、さらなるコンパクトなキャビンのオープンスタイルを纏わせていた。これもまたロードスターの名に恥じないスタイリングとなったが、クーペとロードスターの間でイメージにかなりの違いがみられるようにも思う。

6代目Z34。初代Zイメージを継承しGTらしい魅力も表現。
6代目Z34ロードスターはストイックなスプリントの香りもある。

そんなことから、さて新型Zはどんなクルマなのか? と考えてみると、Z34よリもさらにGT寄り、初代Zにさらに近いテイストを追求したように見える。GTの王道とでも言えばいいのかもしれない。話が長くなってしまい本当に恐縮なのだが、それで今回のテーマである新型Zにはロードスターは似合わないという話につながるのだ。

新型Zにオープンカーは登場するのか? それとも……

新型ZはゆったりとしたGTのフォルムも魅力だ。それがオープンカーとなったときにロードスターを名乗るようなストイックさが似合うのだろうか? というのが大きな疑問だ。ならばコンバーチブルならいいのか? ということだが、初代系のフォルムでそのその優雅さが実現できるか? というところも難しいように思う。Z32のコンパーチブルは、ある意味ベースデザインに恵まれたのだと思う。前述したようにリヤピラー以降の造形に自由度が高く、優雅さをそのままにオープンスタイルを実現できた。しかし今回の新型Zは、小さいながらもリヤピラーのバランスがキモとなるので、そこをなくしてしまって、優雅さが表現できるだろうかと心配してしまう。

新型フェアレディZ。オープンボディもいいが、この黒い部分のルーフがTバールーフになるといいのだが…。

それならば、Tバールーフがあるじゃないか! と勝手に思ってしまうのだ。2代目ZのS130で登場し、3代目Z31、4代目Z32と継承された。ルーフセンターにピラーを残し、左右の分割されたルーフを取り外すことでオープンエアを楽しむ設定だ。ポルシェ911でいえばピラーのないタルガトップに当たるもので、さらにイージーなのがTバールーフ。コルベット・スティングレーやシボレーカマロ、ポンテアック・トランザムなどで採用され、フェアレディZでも採用された。その後はMR2なども採用されたりもした。

2代目S130Tバールーフ。
3代目Z31。
4代目Z32。Tバールーフ。

何よりも2代目Zが印象的で、優雅さと華やかさを演出して見せてくれた。それも2シーターとリヤシートを持つ2by2のどちらでも利用できるアイテムだったことも、その魅力を高めた要因だった。もちろんこれは外野からの勝手な思いなのだが、新型には2by2は期待できないかもしれないが、Tバールーフはなんとか登場させてほしいなぁ、なんて思ったりするのだ。きっと似合うと思うのだが……。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…