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カプセル化の先鞭はSKYACTIV-X
マツダのラージ・アーキテクチャー第一弾であるCX-60が好調な販売スタート切った。6月24日の予約受注開始から約2カ月半で約8800台の受注を獲得したという。受注のうちの8割が新開発の直列6気筒ディーゼルターボを選択している。
【機種別内訳】
・XD-HYBRID(eスカイアクティブD):43%
・XD(スカイアクティブD 3.3):37%
・25S(スカイアクティブG 2.5):15%
・PHEV(eスカイアクティブPHEV):5%
さて、その直6SKYACTIV-D3.3。短時間だが試乗(と言っても、同乗)できた。まずその静粛性の高さに驚いた。現在販売しているのは、48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「XD-HYBRID(e-SKYACTIV D3.3)」のみだから、試乗車も当然、同パワートレーンを積んだモデルだった。
巡航時や制動時、隙あらばエンジンを停めにかかる制御(燃費のため)だから、頻繁にエンジン停止~再始動を繰り返すが、そのマナーは極めていい。注意していても、エンジンが停まった、再始動したかは同乗者にはわからなかった(ドライバーも同様だそう)。
元々理論的にバランスに優れた直列6気筒という気筒配列もその静粛性に貢献しているが、ほかにもマツダは「エンジンのカプセル化」に力を入れている。
MAZDA3 SKYACTIV-Xが先鞭をつけた
最初にカプセル化されたのは、MAZDA3のSKYACTIV-Xエンジン搭載モデルだ。SPCCI(SPark Controlled Compression Ignition)という革新的な燃焼技術を実現したSKYACTIV-Xは、ガソリンエンジンとしては常識破り的に高い15.0の圧縮比や、70MPa(700bar)という、これまたガソリンエンジンとしては非常に高い直噴の燃料噴射圧を用いるために、どうしても音については厳しい。音対策としてもカプセル化は有効な手段だった。
もちろん、音だけではない。
カプセル化する目的は、燃費と環境対策だ。
エンジンの効率が低いのは、冷間始動時だ。エンジンが冷えきった状態で始動すると、エンジンはまずエンジン自体を暖めるために燃料を使う。エンジン本体、そして補機、とくに適正温度でないと完全には作動しない触媒装置などはできるだけ早く暖機する必要がある。
MAZDA3 SKYACTIV-Xのカプセルエンジン
エンジンをカプセルの中に収めれば、たとえば、夜帰宅して翌朝、エンジンを再始動する場合に、完全なコールドスタートにならなくて済む。たとえば、近郊にあるショッピングモールへ出かけたとき、目的地へ着く頃に完全にエンジンが暖まっていても、数時間の買い物をしているうちにエンジンは再び冷え切ってしまう。SKYACTIV-Xエンジン搭載のマツダ3ならカプセル化してあるので、保温効果が期待できる。つまり帰りもすでに暖機された状態でスタートできるのだ。これは燃費にもエミッションにも効く。
CX-60 これが完成形か。見事にカプセル化されていた
そして、CX-60である。ご存知のとおり、MAZDA3と違って、フロントにエンジンを縦置きするCX-60はエンジンのマウント方法が異なる。エンジン縦置きFRの場合、マウント方法はFFほど複雑にはならない。当然、CX-60もカプセルエンジンを採用すると想像していた。
まずは、2022年3月にマツダの美祢試験場で試乗させてもらったCX-60のエンジンは、やはりカプセル化されていた。
CX-60プロトタイプのカプセルエンジン(2022.3)
量産型CX-60のカプセルエンジン
そして、量産型のCX-60である。楽しみにしながら試乗会場へ向かった。そして試乗する前にボンネットフードを開けてもらった(ちなみに、MAZDA3と違ってボンネットフードにはダンパーが付いている)。
開けると見事にカプセル化されたSKYACTIV-D3.3直6エンジンが見える。「見える」という言い方は正しくない。「見えない」のだ。
MAZDA3 SKYACTIV-Xよりもカプセル化は徹底している。
エンジンのカプセル化は、モード燃費対策ではない。WLTCモードは、コールドスタートで行なうので、カプセル化の恩恵はモード燃費には現れない。あくまでも「実燃費」に効く、というわけだ。マツダの開発思想が垣間見えるところ、とも言えるかもしれない。