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歴代続くプジョーCセグHBの魅力は新型でも健在か?
プジョー308は、初代が2007年に登場。2013年に2代目に切り替わり、現行3代目は2021年にデビューしている。いうまでもなく、プジョーの主力モデルである。
308の前は307(2001年デビュー)
その前は306(1994年デビュー)
だった。筆者は、その306を1990年代に所有していた。306スタイルというエントリーグレードで1.8ℓ直4SOHC(100ps)+5MTというパワートレーンだった。価格は189万円(!)。楽しいクルマだった。
その末裔が308というわけである。今回借り出したのは308Allure(アリュール)。位置づけ的には306スタイルと同じで、308シリーズのエントリーグレードとなる。
個人的にプジョー308は好きなクルマで、特に長距離を走っても疲れないシートの出来が出色。VWゴルフとは違った意味で、CセグHBのベンチマークとなるモデルだと思っている。
新型308の日本発売は2022年4月。先代が好きだった筆者としては、「ちょっと大きくなり過ぎちゃったんじゃない?」と思っていた。
ボディサイズは
新型308
全長×全幅×全高:4420mm×1850mm×1475mm
ホイールベース:2680mm
先代308
全長×全幅×全高:4275mm×1805mm×1470mm
ホイールベース:2620mm
全長で145mm、全幅で45mm、ホイールベースで60mmも大きくなっているのだ。とくに、全幅の1850mmはCセグHBとしては広すぎるのは? と思っていた。VWゴルフ8、トヨタ・カローラスポーツの全幅が1790mm、MAZDA3も1795mmなのだ。
碑文谷のプジョージャポンで車両を受け取って眺め回す。かなりグラマラス、ふくよかになっている。とくに、リヤフェンダーあたりの抑揚は、たしかに1850mmの全幅がないと実現できないだろう。
ドアを開けて乗り込んでみる。室内は、幅方向にやはり余裕が感じられる。インテリアは、一気にモダンになった。
プジョーといえば、i-Cockpitで、好き嫌い(というか合う合わない)が明確に分かれる運転席まわりが特徴だ。
座ってすぐに、「そうだ308は好きなんだけど、i-Cockpitはどうしても好きになれないんだった」と思い出した。ステアリングホイールは、先代からさらに上下方向が短くなり、もはや円形とは言えない。メーターは、ステアリングホイール上から覗き込む独特の位置に置かれている。
ドライビングポジションを調整して乗り出してみる。
あれ? i-Cockpit、前よりイヤじゃないなぁ。だいぶ違和感が薄れている。これはi-Cockpitが進化したのか、さすがにもう慣れたのか? おそらく両方だと思う。完全に納得はできないが、まぁいいかな、くらいにはなった。
室内は、スッキリしていて好感がもてる。けっして豪華とか上質といわけではない(だってエントリーグレードなのだから)が、最近のライン状のアンビエントライトが室内に走りまくったり、巨大な液晶画面が中央に鎮座しているクルマよりむしろすっきりしていていい。
すっきりついでに、ナビゲーションは「スマホを繋いでください。Apple CarPlay、Android Autoに対応していますから」と借り出す際に説明されたとおり、スマホ接続前提だ。中途半端なナビが付いているより潔いし、使いやすい。ここはエントリーグレードならでは、である。
1.2ℓ直3ターボ+8ATの走りは?
フランス車といえば、これまでは乗り心地はいいしおしゃれなんだけど、トランスミッションがね……だった。2ペダルトランスミッションは、4速AT(悪名高きAL4。筆者も初代シトロエンC4で体験済み)や、AMTを使っていて、これがネックだった。現在は、アイシンと蜜月状態で、アイシン製8速ATを採用している(一部アイシン製6速AT)。アイシンとの付き合いも長くなり、8速ATの使い方も手慣れたもの。当初は、1.2ℓ直3ターボに8速は過剰なのでは、と思われたが、シフトプログラムは絶妙だ。
ただし、日本の高速道路で多用される90~100km/hでは8速に入らない場合が多い。
ドライブフィールは、先代308と大きくは変わらない。
1.2ℓ直3直噴ターボのスペックもアイシン製8ATのギヤ比も、最終減速比も先代の最終モデルと同じ。タイヤ外径もほぼ同じ(旧型205/55R16サイズ 632.4mm、新型225/45R17サイズ 634.8mm)。おそらくシフトプログラムも同じだろう。
1.2ℓ直3直噴ターボは、このクラスの3気筒ターボで屈指のいいエンジンだ。音・振動でネガになる部分は感じない。
もうひとつ新型になって大きく進化したのは、ACCだ。先行車両の停止が3秒以内なら自動で再発進するようになった。改良点は、そもそもACCをセットしやすくなったこと。ステアリングホイール左側のボタンを押せばすぐにACCを入れられる。これは便利だ。先代ではステアリングポスト左側のレバーに配置されていたが、とても使いにくくて、正直走行中にACCを入れるのが難しかった(オーナーになれば慣れてしまうのだろうが)。今回のドライブ中、ACCはフルに活用できた。
プジョー308は、先代も新型もEMP2というプジョー/シトロエン/DSのモジュラープラットフォームを使う。先代がEMP2 ver.2で新型はver.3になった。ver.2から50%以上刷新されているそうだ。そのおかげもあって(ホイールベースが長くなったから、もあると思う)、高速巡航ではCセグHBとは思えないしっかり感がある。
今回の498km走って(平均速度37km/h)、燃費は14.9km/ℓだった。
プジョー308Allureのモード燃費は
燃費:WLTCモード 17.9km/ℓ
市街地モード14.1km/ℓ
郊外モード:17.7km/ℓ
高速道路:20.4km/ℓ
だから、今回の498kmのモード燃費の83.2%の達成率だった。
2021年6月に、先代の最終モデル、プジョー308ロードトリップ(1.2ℓ直3ガソリンターボ搭載モデル)を279km走行したときの燃費が15.1km/ℓ(平均速度37km/h)だったから、概ねこのくらいの燃費性能ということになるのだろう。
さて、このプジョー308Allureのライバルとなると、やはりVWゴルフだろう。相当するのは、ゴルフeTSIアクティブ(323万8000円)だ。
Activeのモード燃費は
WLTCモード燃費:18.6km/ℓ
市街地モード 14.7km/ℓ
郊外モード 19.1km/ℓ
高速道路モード 20.6km/ℓ
実際、548km走ってトータルの燃費は、21.3km/ℓだった(平均速度49km/h)。高速道路の比率が高かったからの燃費ということだろうが、48Vマイルドハイブリッドの効果があるから、燃費ではゴルフ1.0Lには少し及ばないだろう。
とはいえ、ではプジョー308Allureにはプジョーらしい魅力がある。どちらを選んでも、エントリーグレードとは思えない質感と走りに満足するだろう。
筆者だったら、どちらを選ぶか。うーん、迷う。プジョー308……全幅が1850mmでなければ、308を選ぶ。数日間、付き合って1850mmの全幅で困ったことはなかった。が、+50mmの幅は狭い駐車場、裏道を走るときにちょっとだけ気を遣うかもしれない。
そこがOKなら、新型プジョー308Allure、CセグHBの有力な選択肢となるだろう。
プジョー308 Allure 全長×全幅×全高:4420mm×1850mm×1475mm ホイールベース:2680mm 車重:1350kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン 形式:直列3気筒DOHCターボ 排気量:1199cc ボア×ストローク:75.0mm×90.5 mm 圧縮比:10.5 最高出力:130ps(96kW)/5500pm 最大トルク:230Nm/1750rpm 燃料供給:DI 燃料:プレミアム 燃料タンク:52ℓ 燃費:WLTCモード 17.9km/ℓ 市街地モード14.1km/ℓ 郊外モード:17.7km/ℓ 高速道路:20.4km/ℓ トランスミッション:8速AT 車両本体価格:320万6000円 試乗車はオプション込み329万9170円(パールペイント8万2500円/ETC 1万670円)