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スカイアクティブ思想をフル活用して設計された1台目
プレミアムカーメーカーへの脱皮に向けて、着々と地歩を固めているマツダだが、その端緒となったのがCX-5。原理原則に立ち返って理想を追求する“スカイアクティブ”思想をフル活用して設計された最初の1台だ。
現行モデルは2017年にフルモデルチェンジした第2世代。年次改良によって進化し続けており、5年目を迎える今もなお、まったく古さを感じさせない。
CX-5のパワーユニットといえば、「うるさい、臭い、煙が出る」というイメージを変えた2.2Lターボディーゼルエンジンが真っ先に思い浮かぶが、ガソリンエンジンも、なかなかの高性能。ディーゼルは極低速で交差点を曲がる際など、わずかなターボラグを感じることがあるし、街乗りばかりだとDPFへの負担が大きい。
送迎や買い物など短距離走行が多いユーザーなら、ガソリン車のほうがむしろ適している。特に18年のマイナーチェンジでは、大きな改良が加えられ、パワー&トルクアップを実施。2.5Lエンジンには軽負荷時に2気筒を休ませる“気筒休止システム”を採用するなど、メカ的な面白さもある。
19年のマイナーチェンジでは、悪路でスタックした際に脱出を助ける“オフロード・トラクション・アシスト”制御をAWDモデルに追加。21年のマイナーチェンジでは、ボディのクロスメンバーを強化して構造用接着剤を追加したり、シートレールの取り付け剛性を高めたりするなど、乗り心地向上のための改良も続けられている。
このところCX-60の話題で持ちきりのマツダだが、車格的にはCX-5も存続していくはず。日本の交通環境で使うなら、むしろCX-5のほうが向いているだろう。
バランスの良さを感じさせる65扁平タイヤ
今回の試乗車は、2.0Lガソリンエンジンを搭載したAWD仕様。グレードは20Sの特別仕様車“フィールドジャーニー”だ。20S Proactive をベースに専用加飾を施したほか、タイヤにはヨコハマのオールシーズンタイヤ“ジオランダーG91”を装着。サイズは225/65R17とほどよく、前後とも230kPaの空気圧で使用する。
さらに、パワートレーンやトラクションコントロールの制御をシーンに応じて選択できる“Mi-DRIVE”には“オフロード”モードを装備するなど、機能面でも“特別仕様”だ。
乗り込んで最初に感じるのは、ステアリングホイールに巻かれた本革の上質感。車両本体価格が300万円を超えるから、プレミアムカーの領域とはいえ、シボのきめの細かさは「ただ革を巻きました」というレベルとは明らかに違う。オーナーになれば、これだけで「いいクルマ買った」感が味わえるだろう。
エンジンノイズは、ちょっとディーゼルっぽい音質。直噴+高圧縮で燃焼速度が速いためだ。今どきのエンジンとしては少し荒々しさを感じるが、SUVとしては悪くはない。発進の加速応答はマイルドだが、変に飛び出し感を演出しているより扱いやすい。加速時のトルク感はなかなか力強く、「これ2.5Lだっけ? FWDで軽いやつ?」と確認してしまったくらいだ。
うねりのある路面では、ボディのしっかり感が際立ち、脚がよく動いているのがわかる。65扁平のタイヤも当たりが柔らかく、ザラついた路面でも極端にロードノイズは大きくならない。最近はSUVでも薄いタイヤを付けたがるが、性能的にバランスが良いのは65〜70扁平だ。
操舵フィールも、すっかり上質になった。最初の頃は、重い操舵力とキレキレの応答性が持ち味だった(のは先代だっけ?)が、今やシットリとした手応えから、素直かつリニアにノーズが入る。ブレーキの食いつきも良いし、抜き側のコントロールもしやすい。
性能的に、これといった“凄み”はないが、“自然で乗りやすい”という点では非常にハイレベル。荷物を満載して峠を登ったりすると、また違った印象になるかも知れないが、そういう人はXDを選べば良い。
試乗は郊外路と空いた市街地を約10km走り、燃費計の数値は13.6km/l。WLTCモードが14.0km/lだから、まずまず優秀な成績だ。
MAZDA CX-5 20S Field Journey 全長×全幅×全高 4575mm×1845mm×1690mm ホイールベース 2700mm 最小回転半径 5.5m 車両重量 1600kg 駆動方式 四輪駆動 サスペンション F:マクファーソンストラット R:マルチリンク タイヤ 225/65R17 エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC16バルブ エンジン型式 PE-VPS型 総排気量 1997cc 最高出力 115kW(156ps)/6000rpm 最大トルク 199Nm(20.3kgm)/4000rpm 燃費消費率(WLTC) 14.0km/l 価格 3,234,000円