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ダメと言われると改造りたくなるもの
30代以降の人なら、きっと誰もが若い頃に親しんだ覚えのある原付スクーター。2ストロークエンジンだったから簡単にチューニングできて、財布の軽い若者には格好のカスタムアイテムだった。その当時の感覚で改造ることができるのも、サブロク軽自動車のイイところ。ミニカ’70に乗るオーナーは、まさにその典型だ。
従兄弟に譲ってもらったミニカは「改造るなよ」と言われていたが、乗っているうちに、「塗りたい、落としたい」と虫が騒いだ。そこで友人に手伝ってもらいながら、ボディをペーパーがけして下地を作り「国防色にしたかった」ということでツヤ消しグレーで全塗装してしまった。
そうなると勢いは止まらない。「やっぱ車高短でしょ」と気合いが入るが予算はない。それならノーサスだ、とばかりバネを外してしまったのだ。
1962年に発売された初代ミニカは、前年に発売された商用車の三菱360を小変更したもの。リヤエンジン・リヤ駆動が多かった当時の軽自動車にあって、フロントエンジン・リヤ駆動のFR方式を採用。69年にフルモデルチェンジして発売されたのがミニカ’70で、70年代への思いを車名に冠している。基本構造は初代と同じで、2ストローク2気筒のエンジンは空冷と水冷から3種が選べた。スタイルは大幅に近代化され、ハッチゲートを備える3ドアと71年にはクーペのスキッパーを追加している。
SUSPENSION
予算がなければ塗る、が基本。スチールホイールは赤く塗装して、タイヤにホワイトリボンを被せた。それだけで雰囲気満点!
ENGINE
縦置きエンジン
冬場にノズルが凍結するアイシングを防ぐため、エアクリーナーケースには夏冬切替レバーが備わる。
分離給油式のためオイルタンクは別体。三菱純正オイルは「ダイヤクイーン」「オートミックススーパー」と呼ばれた。
2ストだからキャブはシリンダーに付く。三国ソレックスはシングルだが、後にツイン化されて38psへ進化する。
形にハマらず気軽に付き合える
友人と一緒に全塗装してバネを抜いたオーナー。その後はボディに入れたピンストライプと同じ色で純正ホイールを塗装して、タイヤにはホワイトリボンを被せている。ただそれくらいで、ほかはあまり派手にカスタムしていない。小物を使った技が効果的で、見事にイメチェンしているのだ。
例えばエンブレム。全塗装するときに外したのはいいが、その時どこへ置いたのか行方不明。それならいいや、と放置しているのが逆に効果的でスッキリした印象。ムーンアイズの小物パーツやステッカーチューンを施せば完成という、安直なようでセンスが問われる手法なのだ。
速くしたいとか思わないし、音楽も聴きたいから爆音にもしたくない。そのためエンジンや駆動系はノーマルのまま。改造るにもパーツがないから、長く乗るならノーマルが一番なわけで、オーナーも譲られてから今まで故障を経験していなかった。それで油断したのだろうか、なんと取材直前になってエンジンがプスンッと止まり、再始動しなくなってしまった。ま、それも楽しみましょ!
室内
このミツビシ・ミニカ スーパーデラックスの記事は、令和に残るクルマ改造雑誌『G-ワークス』(毎月21日発売)に掲載された記事を引用・転載したものです。