目次
連載前口上――全国の自転車好き(と僕自身の)ために――
40年以上、自転車を趣味とする僕にとって、クルマ選びの重要な基準は「自転車が積めるかどうか」実際、最初に買った中古車以外は、すべてそれを基準に選んでいる(最初のクルマはルーフキャリヤに自転車を載せていた)。
ぶっちゃけ前後輪を外してしまえばセダンのリヤシートにも積載できるのだが、居住空間は汚したくないし、なるべく手間をかけずに積載したい。しかし、身長が181cmある僕のロードバイクは、サドル高が1mある。荷室高が1mを越えるクルマとなると、ミニバン以外に選択肢はなくなってしまう。
そこで、「このクルマなら積めそう」というモデルをピックアップして、どうすれば積めるかを試そうというのがこちらの企画。全国の自転車好きドライバーのクルマ選びの参考になれば幸いです!
ホンダ N-BOX EX(FF)
全長3395mm 全幅1475mm 全高1790mm 車両価格 1,678,600円
長さ方向は、さすがに前輪を外さないと収まらない?
N-BOXの荷室高は間口で120.5cm(1205mm)とwebカタログにも書いてあるので、高さ的には余裕で積めることは、試す前からわかっていた。しかし、問題は長手方向。僕のロードバイクは全長が1680mmあるのに対し、N-BOXの荷室長は「新型N-BOXのすべて」によると、床面で1440mm。
どう考えても真っ直ぐ積むのは不可能だ。しかし斜めに積むと、固定するのが厄介だし、前に2名乗れるのに、自転車は1台しか積むことができず、カップルでサイクリングを楽しむのは諦めざるを得ない。
しかし、そうは言っても“ない袖は振れない”し、タイヤがはみ出てはバックドアが閉まらない。「芸はないけど、前輪を外すか」と思って気付いたのが、前席シートの間の空間だ。試しに前輪を突っ込んでみたら、前後輪は付けたまま、後輪がはみ出すことなく搭載できた。しかも、アームレストを跳ね上げておくと隙間が絶妙で、前輪を両側から優しく支えてくれ、タイダウンしなくても自立するではないか!
しかしこのまま走るのは、旋回時を考えると不安定。そこで、後輪にスタンドをかけてみた。車体は少し持ち上がるけれど、荷室高に余裕があるので天地はまったく問題ない。
しかも床面には、後席にチャイルドシートを付けるときに使う“トップテザーアンカー”が付いており、これがロープフックとして絶妙に機能。左右均等に支えられるから、旋回時の安定性も抜群だ。1名+1台で使うことが多いなら、大きなミニバンよりもむしろ使い勝手は良い。
ふたり分のロードバイクを積むことはできる?
とはいえカップルで使うには、2台、積めないと具合が悪い。そこで、前輪を外して2台積むパターンも試してみる。僕のロードバイクは前輪を外しても全長が1510mmあるから、計算上は積めないはずで、何も考えずに真っ直ぐ入れてみたら、案の定バックドアが閉まらない。
スーパー万能車N-BOXをもってしても、2台積むには前後輪とも外す必要があるのか!? と思ったところで、ハンドルの内幅が前席背もたれとほぼ同じであることに気がついた。そこで、ハンドルで背もたれを挟んでみると、はみ出していた後輪は車内に入り、バイクも安定。
前後長がジャストなので前後には動かないし、ハンドルでシートを挟んでいるので倒れる心配も無い。しかも、これなら左右同じようにして2台積めるではないか!
凄いぞN-BOX! 自転車趣味のカップルなら、このクルマを選ばない手はない!
積載自転車の寸法図
■第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm
■第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm
■第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm
■第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm
著者と自転車のプロフィール
メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。
ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。