2022年シーズンの世界ラリー選手権(WRC)は、第11戦ラリー・ニュージーランドでカッレ・ロバンペラのドライバーズ選手権、第12戦ラリー・カタルーニャでトヨタのマニュファクチャラーズ選手権タイトルが確定。トヨタは、最終戦地元開催のラリージャパンを前に、ダブルタイトルを決めた。
このカタルーニャのフィニッシュ後、驚きのニュースが飛び込んできた。ヒョンデのダブルエースの一角として活躍してきたオィット・タナックがチームからの離脱を表明したのだ。タナックは2021年にヒョンデと複数年におよぶ契約を結んでおり、2023年まで在籍すると見られていた。
ハイブリッドパワートレーンを搭載するラリー規定マシンが導入された2022年。シーズン序盤からメカニカルトラブルが続いたヒョンデは、トヨタに対して常に厳しい戦いを強いられることになった。タナックは第5戦サルディニアと第8戦フィンランドで勝利し、最終戦ラリージャパンを前にランキング2番手につけているが、ヒョンデに在籍した3年間、結局一度もタイトルを獲得することができなかった。
現時点でタナックの選択肢は、トヨタかMスポーツ・フォード。どちらも在籍経験のあるチームだが、ヒョンデを出てまで加入するチームとなると、やはりトヨタしかないだろう。
2019年、自身初のWRCドイバーズ選手権タイトルを獲得したタナックは、そのシーズンオフにトヨタを離れ、ヒョンデへと移籍。当時、トヨタ・ガズーレーシングを率いていたトミ・マキネンとの折り合いの悪さが噂されていた。そのマキネンはチームを去り、現在チーム代表を務めるのは、かつてMスポーツ・フォードやトヨタでチームメイトととして戦ったヤリ-マティ・ラトバラだ。
先日のカタルーニャでは、関係者たちの間でまことしやかに「タナックのトヨタ復帰」が噂されていたという。実現すれば、ロバンペラ、タナック、セバスチャン・オジエという、世代の異なる3名のチャンピオンが勢揃いする豪華なラインアップが完成する。
とすると、トヨタから放出されるのは誰か? 今シーズン、未勝利が続いているエルフィン・エバンスか、オジエとシートを分けフル参戦が叶わないエサペッカ・ラッピか……。オジエは来シーズンWRCへの参戦回数を増やすともされているが、ラッピは今年規模の参戦プログラムが確約されているのであれば、チームを離れる理由はない。
一方、WRCチャンピオンを熱望しているエバンスは、どうだろう。セバスチャン・ローブ以外に”勝てる”ドライバーが喉から出るほど欲しい古巣のMスポーツ・フォードか、はたまたダブルエースの一翼が欠けてしまったヒョンデか。トヨタで3名のチャンピオン共にリソースを分け合うより、単独エースとして迎えてくれるMスポーツ・フォードに復帰すると筆者は予想する。
誰がチーム去り、誰が加入するのか。ストーブリーグの行方は、ラリージャパンを挟んで、さらに加熱しそうだ。