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ファンクロスのコンセプトとは?
■2020年発表のコンセプトモデルがルーツ
前後バンパーのクラッディングやルーフレールなどを装備し、アウトドアギアテイスト溢れるSUVバージョンとして登場したファンクロス。軽自動車でも盛り上がるSUV仕様車だが、スーパーハイトワゴンでは2018年に登場したスズキのスペーシア・ギアに続くモデルとなる。
とはいえこのファンクロス、今回いきなり現れたわけではなく、そのルーツは2020年のオートサロンまで遡る。
2020年1月に開催された東京オートサロンと2月に開催された大阪オートメッセのダイハツブースに展示された「タント・クロスフィールドバージョン」がそれだ。
タントのユーティリティ性とウェイクのギア感を融合したコンセプトモデルで、LEDフォグランプを内蔵した厚みのあるバンパーデザインや、縦3本スリットのフロントグリルなどタフなイメージを演出するとともにオレンジのストライプやルーフキャリアでアクティブさも打ち出している。
アウトドアブームによりギアテイストのSUVは軽自動車でも有望な市場であり、タント・クロスフィールドバージョンが好評だったことも合わせてファンクロスへと昇華されていくことになる。
■走破性より日常での使い勝手
アウトドアユースを提案するファンクロスだが、車高や走行性能についてはノーマルと差別化されていない。ファンクロスのコンセプトとしては、あくまで日常の使い勝手を優先しつつ、アクティブなライフスタイルを想像させる要素を盛り込んだモデルとして位置付けられている。
最近はキャンプ場へのアプローチ路も舗装されているところが多く、未舗装のキャンプ場に行くユーザーはタフトなどより走破性の高いモデルを選ぶという。
新たに追加されたファンクロスはタントシリーズの中でどれくらいの比重を占めることを期待されているのか訊いてみたところ、タントシリーズとしての割合としてはタント25%:カスタム45%:ファンクロス30%と考えているそうだ。ブームの後押しもあるとはいえ、タント以上とファンクロスへの期待は大きいようだ。
ファンクロスのデザイン
■見たこともないカッコよさ
アウトドアギアテイストを打ち出したファンクロスのデザインは、タントが元来もつやさしく有機的なドア断面と”ギア”らしさをどのように融合させるかがポイントになったという。
バンパーの樹脂クラッディングをメガネやレンチのような造形としたのも、クラッディングがガチっと嵌っているデザインを目指したものだ。
スケッチ段階では不安もあったようだが、クレイモデルに至ってその立体的な造形がとても映えるデザインに仕上がった。あわせて、専用のヘッドライトをおごることで目力のあるフロントマスクになっている。
担当デザイナーは「見たこともないデザインを提供できて、それがカッコイイと思ってもらえれば最高です」と語った。
■キャラクターに合わせたアクセサリー
ファンクロスのキャラクターとしては、ユーザーが使い方やファンクロスによって広がるライフスタイルを想像できるモデルを目指している。それだけに、オプションとして用意されるアクセサリーもファンクロスのキャラクターに合わせたものを開発したという。
ルーフレールに装着できるルーフキャリアやカータープ、”メガネ”の内側を変えることができるパネルなど、遊び心を意識したアイテムが揃っている。
カスタムはデザインが最大のポイント
■オトナカスタムから威風堂々へ
フロントマスクを中心に新たなデザインを得て雰囲気を一新させたタント・カスタム。従来のタント・カスタムはメッキをセンス良く用いたギラギラしすぎないクリーンなデザインだった。このスタイルはそれなりに好評だったものの、その一方でよりカスタムらしい迫力を求めるユーザーの声もあり、マイナーチェンジにあたり胸を張った堂々とした雰囲気を持たせるデザインを与えることになった。
■ボンネットフードとフェンダーを新設計
“胸を張ったような堂々とした雰囲気”の迫力あるフェイスを実現するために、フロントフェイスを上部を薄く下部を厚くする必要があった。従来のタント(カスタムも含む)は前下がりのボンネットフードでノーズが低くなっている。このノーズ位置を高くすることでフロントマスクに厚みを持たせることになった。
ちょうど、ダイハツではアダプティブハイビーム(ADB)を薄くすることができるようになり、早速カスタムのヘッドライトに採用した。これにより”フロントマスクの上部を薄く”というのが実現できたわけだ。さらにライトをサイドに大きく回り込ませることでスポーティなデザインも実現している。
となると、新開発のライトだけでなくボンネットフードとフロントフェンダーも新設計にする必要があり、これは難しい決断となったが、デザイン部のこだわりと強い主張により実現したという。
このボンネットフードとフェンダーは、ライトの形状こそ違うがファンクロスにも採用されている。
■メッキの映り込みも工夫
フロントフェイスはもちろん、ドアハンドルなどメッキの使用範囲も拡大して上質感を高めたのもマイナーチェンジのポイントだが、そのメッキへの映り込みにも注意を払っているという。
特に大きな台形のフロントグリルのメッキは、パーツの断面形状によってはメッキがボディカラーを反射してメッキらしい輝きが得られず、最適な反射が得られるように形状を試行錯誤したという。
タント・カスタムはタントシリーズの中で45%の販売比率を期待されるモデルであり、ユーザーがデザインに大きな期待を寄せるモデルだけにマイナーチェンジのデザインはさぞ気を遣ったことだろう。「ユーザーが満足してくれるような所有感のあるデザインと質感を実現できたと思います。タント・カスタムを選んで良かったと思ってもらえたら最高ですね」とデザイナーは語る。
話を訊いたのはこのおふたり
■城迫崇嘉(JOSAKO Takayoshi)
くるま開発本部
製品企画部
副主任
ファンクロスの商品企画についてお話を伺った。アウトドア好きで、愛車のエッセ(MT)で河川敷などに出かけ野営することもあるという。
■浅海亮一(ASAUMI Ryouichi)
デザイン部
第1デザインクリエイト室
主任
デザインについてお話を伺ったタント・カスタムのデザイナー。ファンクロスの担当と共にタントのマイナーチェンジデザインにあたる。他にタフトのフロントまわり、ブーン・スタイル、インドネシアのMPVセニアのデザインに携わる。