ジープ・グランドチェロキーはかけ値なしに、俊足のフルサイズSUV。見た目からは想像つかないだろうが……

ジープ・グランドチェロキーLIMITED 車両価格:892万円
角形ヘッドライトのジープのトップレンジがグランドチェロキーだ。そのグランドチェロキーにショートホイールベース+2.0L直4ターボモデルが加わった。ショートホイールベースといっても全長は4900mmの堂々たるサイズ。果たしてアメリカンSUVの雄、グランドチェロキーは2.0Lターボでどこまで走るか?

TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

ラグジュアリーな仕立てにしてはバリュー・フォー・マネーが高い

全長×全幅×全高:4900mm×1980mm×1810mm ホイールベース:2965mm

Stellantis(ステランティス)ジャパンは2021年12月13日に新型ジープ・グランドチェロキーを発表した。10年ぶりのモデルチェンジで、グランドチェロキーとしては5世代目にあたる。ハイライトは3列シートを備えたグランドチェロキーLを設定したことだ。「L」は3.6LV6自然吸気ガソリンエンジンと8速ATを組み合わせ、2022年2月12日から販売が始まっている。

そのグランドチェロキーに10月24日、新たなバリエーションが加わった。モデル名から「L」が取れ、単にグランドチェロキーと呼ぶ。
ひと目で上質とわかるシルエットはそのままだが、全長は290〜300mm短い4900〜4910mmとなり、Lのような3列シート6〜7人乗りではなく、2列シート5人乗りとなる。

エンジンも3列シートのグランドチェロキーLと2列シートのグランドチェロキーでは異なっており、後者は2.0L直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載。8速ATを組み合わせるのはLと同じだ。
3グレードあるうちのLimited 2.0Lは純粋なガソリン車。Limited 2.0L 4xeとSummit Reserve 2.0L 4xeはグランドチェロキー初のプラグインハイブリッド車だ。Lの3.6LV6エンジン車もそうだが、2列シートの2.0L直4エンジン系もガソリンはレギュラー仕様である。

エンジンはフロントに縦置きされている。
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:N 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比: 最高出力:272ps(200kW)/5250rpm 最大トルク:400Nm/3000rpm 過給機:ターボ 燃料供給:DI 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:87ℓ

最高出力272ps(200kW)/5250rpm、最大トルク400Nm/3000rpmを発生する2.0L直4ターボエンジン搭載車、Limitedから導入を開始。プラグインハイブリッド車の導入は2023年春の予定。

試乗機会を得たのは、ガソリン車のLimitedだ。弟分(いや長男? 末子がコンパス?)にあたるコマンダーを試乗してからグランドチェロキーと対峙した。
角型ヘッドライトと薄い7スロットグリルは共通しており、同じファミリーに属するのはひと目でわかる。と同時に、グランドチェロキーのほうが格上であることもまた、ひと目でわかる。サイズの違い(コマンダーの全長が4770mmなのに対し、グランドチェロキーLimitedは4900mm)よりも、佇まいの違いが印象に影響を及ぼしているよう。グランドチェロキーのほうがスマートに見える。

レザーをふんだんに使ったインテリアは、ラグジュアリーなムード満点。

インテリアも同様。レザーをふんだんに使っているのは両車で共通しているが、グランドチェロキーのほうが格段にラグジュアリーである。ATのセレクターはジープ初のロータリーシフトで、その見た目だけでも充分にラグジュアリーだ(操作感もいい)。コマンダーLimitedの597万円に対してグランドチェロキーLimitedは892万円で、それだけ価格が違えば質が違って当然という意見もあろうが、エクストラの対価を支払うだけの価値は間違いなくある。
同一ファミリーに属するがクラスが違う。はじめからラグジュアリーなSUVだと思ってグランドチェロキーを眺めると、ラグジュアリーな仕立てにしてはバリュー・フォー・マネーの高いクルマという印象になる。

ダンパー付きのボンネットフードを開けると、エンジンルームの後ろのほうに、コンパクトな(というか、小さく見える)直列4気筒エンジンが縦置きに搭載されている。パワートレーンが横置きではなく縦置きなのも、コマンダーとの違いだ。そもそも、プラットフォームが異なる。短いエンジンの前には何もない空間が残っており、大きな隙間からステアリングギヤボックスが見える。肝心のアシスト機構は目視できなかったが、操作部とアシスト部を分離したタイプなのは間違いない(デュアルピニオンだろうか)。エンジンの前にステアリングギヤボックスがあるということは「前引き」で、ブレーキキャリパーは車軸の後ろにある。

お決まりのようにリヤバンパー下からリヤサスペンションまわりを覗き込んだが、眼福だった。サスペンション形式はマルチリンクである。舟形のロワーリンクはスチールのプレス成形のようだが、それ以外のリンク類はアルミ材だ。ナックル側をダブルジョイントとし、アッパーアームをハイマウントするフロントのマルチリンク式サスペンションは、総アルミ製。各リンクがごつく、いかにも頑丈そうだ。フロントのダンパートップはアルミダイキャストの一体成形で、居所剛性の高さを物語る。

サスペンションはフロント/リヤともにマルチリンク式。総アルミ合金製でがっしりとした作りが見事。
リヤサスペンションもマルチリンク

「ウソでしょ?」と言いたくなるくらい、カッ飛んで走る

最小回転半径:6.0m 車両重量:2090kg 前軸軸重1150kg 後軸軸重940kg トレッド:F1665mm/R1665mm

じつは、駐車場から乗りだしてすぐに「ナニこれ、全然コマンダーと違うじゃん」と感じたのだが、下回りを覗き込んで合点がいった。そりゃ、違うはずだ。作りが違う。ちょっとやそっとの入力には動じない落ち着きがある。
「L」より約300mm短いとはいえフルサイズSUVに分類されるクルマだが、乗り味の心地良さに陶酔すること必至なので、サイズが気にならない。クルマの動きというより“いなし”にずっと身を任せていたい気分になる。

乗る前に唯一心配だったのは、2.0L直列4気筒ターボエンジンの動力性能だった。2070kgの車重に対して200kW/400Nmの最高出力/最大トルクで果たして充分なのだろうかと。まったくの杞憂に終わったというのが答えだが、「充分」という表現では物足りない。「ウソでしょ?」と言いたくなるくらい、カッ飛んで走る。2070kgもある、全長4900mmのSUVが。

背の高いSUVなのに不要にグラついたりはしない。カーブでは、余裕を持って舵を当てておかないと、曲がりたいタイミングで外に膨らんでしまうということがないし、余計な揺り戻しもない。巨体なのに、車線内の自分が思い描いたラインをトレースするのに気を使わない。そういう動きのクルマにもってきて、エンジンはシューンと回ってグググっと力を出してくれるので、「こんなにカッ飛んでしまっていいの?」とつぶやきつつも楽しくてやめられないといった感じだ。

2.0L直列4気筒ターボエンジン、乗る前は非力だったらどうしようと心配したが、乗った後では「こんなに元気でいいのか?」と心配になる。
グランドチェロキーはかけ値なしに、俊足のフルサイズSUVだ。見た目からは想像つかないだろうが。

ジープ・グランドチェロキーLIMITED
全長×全幅×全高:4900mm×1980mm×1810mm
ホイールベース:2965mm
車重:2090kg
サスペンション:Fマルチリンク式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:N
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm
圧縮比:
最高出力:272ps(200kW)/5250rpm
最大トルク:400Nm/3000rpm
過給機:ターボ
燃料供給:DI
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:87ℓ
トランスミッション:8速AT

駆動方式:4WD
車両価格:892万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…