グライダーのごとく流すもよし、スポーツカーらしく熱く走るのもよし
1泊分の荷物を詰め込んだ機内持ち込みサイズのキャリーバックを引きずりながら、阿蘇くまもと空港に降り立った(のは10月下旬のことである)。空港に併設された「Hondaマタガリ イマーシブ」でホンダ製品を見学し、V8エンジンを積んだマリン用エンジンの巨大さに驚いて駐車場に向かうと、ホンダ・プレリュードが待ち構えていた。筆者が旅を共にするのは、ムーンリットホワイト・パール&ブラック(2トーン)の個体である。

リヤはトランクではなくハッチなので、間口は広く荷物は載せやすいのだが、キャリーバッグを置いてみたところ、どうも収まりが悪い。どう見たって走行中に遊んでしまいそうだが、勝手に遊ばれては困る。つづら折りが待っている阿蘇の山道を走る予定だからだ。
前席シートバックと後席の隙間に挟むという手もあるが(4ドア車でよくやる手だ)、プレリュードにはキャリーバックを立てて置けるようなスペースがない。仕方なく後席にゴロンと置いた。やはりうまく固定できず、モヤモヤした気分のままである。実際、山道ではキャリーバッグが右に行ったり左に行ったりして、頼んでもいないのに存在を主張していた。収まりの悪い荷物をラゲッジルームに固定できるネットなりボードなり、細工があるといいのだけれど……。

旅先で行ったことのない目的地に向かう際、Googleマップは便利だ(月額料金の支払いが必要)。経由地の設定も簡単である(簡単に設定できる様子を見せてもらった)。今回のドライブをストレスなく快適に過ごすことができた一因は、間違いなくGoogleマップのおかげである。気が変わって経由地を変更する際も、サッとルートを設定できる。
駐車場を出てしばらくは、片側一車線の道路を先行車のペースに合わせてのんびり走ることになった。そんな状況で、「いいクルマだな、これ」と感じた。ヤワじゃない、しっかりしたクルマに乗っていることを感じさせる。路面のザラザラした感触やうねり、段差を上手にいなし、いなしていることを乗り手に伝えつつも平然と、フラット感を保ちつつスムーズに前に進む。

ステアリングには手を添えている感覚。道路の線形に合わせて無意識に動かしているにすぎないが、手に伝わっている感触からはやはり、クルマのしっかり感が感じられる。動かして数百メートル、1km、2kmであっても、乗り慣れたクルマのように体になじんでいる。しかも快適。そんな感じだ。
プレリュードの乗り味に感動していたら曲がるべき交差点を直進していたようだった(言い訳)。Googleマップは即座にリルートしてくれたのだが、本来のルートに復帰すべく用意されたルートは、古くからの住宅が立ち並ぶ密集地を抜けるように設定されていた。「ん、この狭い隙間を抜ける?」と逡巡させるような箇所もあったが、そこで気づいた。

プレリュード、見切りがいい。「1880mmの全幅って、取り回しどうなの?」と、走り出す前は不安に感じていたのだが、感覚的にはまったく問題なかった(物理的にはしっかり1880mmあるので、狭い場所での取り回しには気をつけたい)。絶対的な視界がいいのと、インテリアのデザインを含め、車幅感覚をつかみやすい視界づくりになっているおかげだろう。数時間のドライブ中、バックで駐車枠に入れる際も含め、1880mmの幅をうらめしく感じるシーンはなかった。ただし、2ドア車の常でドアが長いので、狭い場所での乗り降りに苦労するかもしれない(とくに筆者のように体が硬い人)。

ドライブモードはデフォルトのGTに加え、SPORTとCOMFORTの設定がある。ステアリングホイールの裏にパドルがあり、これが減速セレクターとして機能する。左のパドルを引くと段階的に減速度が強くなっていく。アコードにも同じ機能が搭載されており、6段階に調整が可能。プレリュードの場合はほとんど減速しないコースティング段が追加され、全部で7段階になっている。

原理的には、ガソリンの燃焼によって発電して作った電気を使ってモーターを駆動し、加速したら、惰性で走り続けて停止寸前でブレーキを踏むのが最もエネルギー効率がいい。回生ブレーキを使って運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに蓄えておき、後の加速時に蓄えておいた電気エネルギーを使うのも効果的ではあるが、回生時と放アシスト時に損失が生まれる。エネルギー効率面で最も効率がいい(燃費が良くなる)のは惰性で走る、いわゆるグライダー走行を上手に使いこなすことだ。
これを確かめるのも今回のドライブの目的だったのだが、自動車専用道路を走る区間が短く、しかも前にゆっくり走る大型車両がいたため(致し方のないことである)、満足に試すことはできなかった。ただ、高速クルーズは快適そうとの印象は得られた。コースティング制御に関しては、またの機会にじっくり試すことにしたい。

GT、SPORT、COMFORTそれぞれ「S+」のスイッチを押すと、Honda S+ Shift(ホンダ・エス・プラス・シフト)モードに切り換わる。阿蘇の尾根に向かう急勾配の山坂道では、迷わずS+シフトのスイッチを押した。すると、パドルは減速セレクターではなく、疑似変速パドルになる。パドル操作せずともステップ変速のメリハリが利き、モーターの制振制御によって変速時にGの変動を出し(シフトダウン側はパドル操作時のみ)、生のエンジン音にスピーカーからの演出音を付加したアクティブサウンドコーントロールによって、エンジン回転とシンクロしたサウンドが車室内に響き渡る。これ、最高だ。
さっきまでグライダーだったプレリュードが、SPORTモード選択時かつS+シフトでは、レーシングカーになる。絶対的にも十分に速いが、シビック・タイプRのようなヒリヒリした緊張感を伴うようなものではなく、軽く汗を流すスポーツに似た感覚で走りを楽しむことができる。そこがプレリュードのいいところだ。ペースはちょっと上がるだけ(タイプR対比で)。でも、気分の上がりようはすこぶる大きい。
グライダーとスポーツカーの二面性を持ち合わせているのが、プレリュードの魅力だ。静かに走りたいときはとことん静かに走ることができるし、熱く走りたいときはその思いに応えてくれる。ツンと澄ましたような佇まいと上質なインテリアもいい。眺めても、乗り込んでも、走らせても、「いいクルマ」である。

| グレード | ホンダ・プレリュード | ||
| 全長 | 4520mm | ||
| 全幅 | 1880mm | ||
| 全高 | 1355mm | ||
| 室内長 | 1730mm | ||
| 室内幅 | 1475mm | ||
| 室内高 | 1105mm | ||
| 乗員人数(名) | 4 | ||
| ホイールベース | 2605mm | ||
| 最小回転半径 | 5.7m | ||
| 最低地上高 | 135mm | ||
| 車両重量 | 1460kg | ||
| パワーユニット | 2.0L直列4気筒DOHC+モーター | ||
| エンジン最高出力 | 104kW(141PS)/6000rpm | ||
| エンジン最大トルク | 182Nm(18.6kgm)/4500rpm | ||
| 燃料(タンク容量) | レギュラー(40L) | ||
| モーター型式・種類 | H4・交流同期電動機 | ||
| モーター最大出力 | 135kW(184PS)/5000-6000 | ||
| モーター最大トルク | 315Nm(32.1kgm)/0-2000 | ||
| バッテリー種類 | リチウムイオン電池 | ||
| 燃費(WLTCモード) | 23.6km/L | ||
| サスペンション | 前:マクファーソン式 後:マルチリンク式 | ||
| ブレーキ | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク | ||
| タイヤサイズ | 235/40R19 | ||
| 価格 | 617万9800円 ※ツートーンカラーは648万100円(Honda ON Limited Edition)。 申し込み受付は終了。 | ||




