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POWER TRAIN
SUSPENSION
佇まいや乗り味は別世界、スローなステア感も独特
誕生30周年を記念して日本で2014年に期間限定で販売されてから10年たらず、2023年8月に最新版が限定ではなく通年販売で日本に再導入されることが発表された。
ランドクルーザーの伝統を継承しながらデザインや走行性能、安全性能などをアップデートしながらも、従来とはできるだけ変えず、変えても最小限にとどめ、変えるなら従来の性能を上回ることを念頭に置いて開発されているという。
10年前の再販モデルはガソリン+MTだったが、今回の再再販モデルは22.8L 直4ディーゼルとなり、ヘビーデューティ系で初となる6速のATが組み合わされたのも新しい。
過酷な環境で使っても耐えられるよう、パートタイム4WDや前後リジッドアクスルやリーフスプリングを踏襲しており、「300」はもちろん、原点回帰をはたした「250」に対しても、その佇まいや乗り味は別世界となっている。
ただし、10年前の再販モデルでは劣悪だった乗り心地を改善すべく大幅に手が加えられており、「300」や「250」ほど快適ではないが、こうしたクルマとしてはずいぶん快適な乗り心地に仕上がっている。
いまどきではないほどスローなステアリングを搭載しており、曲がるときには切り遅れがちになるが、おかげでゆったり乗れて動きに神経質なところもない。「70」で走ると小さいことなんて気にならなくなる。
未開の地でも修理に困らないよう、「70」ではあえて排していた電子制御デバイスについて、最新版にはDAC(ダウンヒルアシストコントロール)やHAC(ヒルスタートアシストコントロール)といった、一定速で勾配を登降坂できる機能は採用されているが、「250」や「300」のようなMTS(マルチテレインセレクト)に相当する高度なものは搭載されていない。
スタビライザーの制御もなく、厳しい状況では厳しさがありのままに伝わってくるのだが、それを克服するのも「70」に乗る醍醐味のうちといえる。絶対的な走破性では、諸々を搭載した「300」や「250」のほうが上回っているのだが、過酷な環境で使用しても、壊れることなく帰って来られるところに「70」の価値がある。デバイスはなくてもデフロックを駆使すればたいがいのところは走破できる。
また、機能は限られるが予防安全パッケージToyota SafetySenseが「70」として初めて導入され、車両や歩行者を検知して、衝突回避・被害を軽減するプリクラッシュセーフティなどが装備されたのは特筆できる。
たしかにこれなら「どこへでも行き、生きて帰って来られる」に違いない。
懐かしい乗り味を思い出す、どこか野生的な運転感覚
それなりの覚悟を持った人でないと火傷する。「70」に関して、筆者はそう考えている。
……と言うと、かつての「70」を知る人からすれば「そんなことないだろう。最新の70は乗り味が優しくなったんだから“覚悟”なんて必要ない」と言われてしまうかもしれない。でも、それはあくまで“かつての「70」との比較”であって、一般的な今どきのSUVと比べたら最新の「70」をもってしてもかなり野性的だ。特に、舗装路においては。
高速道路を走っているときはステアリングの修正量が多く、峠道でのコーナリングは「よいしょ!」という感じで曲がっていく。乗り心地も、かつてのように路面の入力を大げさに伝えるわけではないとはいえ、ロールや車体の上下動は多く、昨今の普通のSUVの感覚とは安定感がずいぶん違う。かつてに比べれば大きく進化しているけど、やはり「70」なのだ。どこか懐かしい。
確かに、従来モデルに比べると動的性能は明らかに進化している。でも、オーナーになろうというのなら、オンロードにおける操縦安定性が普通のSUVのようにいかないことは覚えておいたほうがいいだろう。正直なところ、ロングドライブ時の疲労は「300」や「250」とは比べるまでもない。同乗者も同じだ。
音も、「車内での会話もままならない」ほどだったかつての「70」とは全然違うけれど、今どきのSUVに比べるとエンジンノイズは大きい。昔に比べれば快適だけど、今の基準では“静かじゃない”なのだ。
いっぽうで悪路に持ち込めば、その走破性はさすがだ。「こんなところをクルマが走れるのか?」と思うような悪路を、まるでロバのように淡々と前へ進んでいく。道具としての性能が高いのは断言できる。
ただ、同じランドクルーザーでも「300」や「250」との違いがポイントだ。それらが電子制御の助けを借りてドライバーの腕に頼らず極悪路を走り抜けるのに対し、ドライバーの腕が求められる。電子制御を最低限とした「70」はとにかくタイヤを接地させ、機械的なトラクションを頼りに前へ進むこと。最新型はデフロックに加えてトラクションコントロールが備わるとはいえ、ドライバーの経験とテクニックが走破性を決める。
違う言い方をすれば、最新の兄弟よりもドライバーが積極的に運転に介入し、クルマを乗りこなす必要がある。それに喜びを感じるドライバーにとって、「70」は最高の相棒となるだろう。
ディーゼルエンジンは音が大きめなことを抜きにすれば、動力性能と扱いやすさでは今どきのSUVと同じ水準。そこは安心できる。
▷TOYOTA・ランドクルーザー比較試乗 まとめはこちら
TOYOTA・ランドクルーザー購入ガイドより
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]