乗り心地や静粛性もワンランク上に向上!
一昔前に比べて、クルマの値段も随分上がったなと実感する昨今。新型スイフトの172万7000円〜という価格帯も、先代モデル発売時のスタート価格が166万8600円だったことと比べれば、ちゃんと時間の経過に伴う価格上昇を実現している。
問題は物価の上昇に賃金の上昇が追い付いていないことだが、ここではそれはさておいて、新型スイフトが価格上昇に見合った進化を遂げているかどうかに注目しよう。
新型スイフトは先代からプラットフォームを継承しており、ボディ寸法やパッケージングもほとんど変化していない。その上でボディは新設計されており、高張力鋼を採用することで衝突安全性を向上させている。
そして、今回のフルモデルチェンジで重点が置かれたのがNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)性能だ。走っている時の音や振動を抑え、快適な乗り心地を実現していることが乗ると実感できる。
エンジンが直列4気筒から直列4気筒に変更されたため、始動時には3気筒特有のコトコト感は感じるものの、暖機が済んで全てがなじんでくると気にならなくなってくる。撮影中は後席にカメラマンを乗せて移動し、撮影してはまた移動というルーティンを繰り返したが、前後席を挟んでのカメラマンとの会話も実に明瞭だった。
それで資料を紐解いてみたところ、実際にダッシュパネルの板厚を上げてエンジンルームからの透過音を下げていたり、吸音材を適材適所で追加しているとのこと。新開発のボディの接合には接着剤も採用され、その接着剤が振動を減衰する効果を発揮することで静粛性と乗り心地の向上にも貢献しているそうだ。
そうした進化は、世の中すべてのクルマに歓迎されて然るべきだが、一方で「スイフトらしさ」とは何かを考えると、ハンドリングの軽やかさや、キビキビと走る俊敏さも捨て難い魅力である。
単に吸音材を追加すれば重量が増すので、スイフトならではの「軽さ」はスポイルされかねない。だが、新型スイフトはそこら辺の塩梅が絶妙にバランスされている印象だ。
ステアリングフィールはリニアで、いい意味で重厚感とは無縁。荷重変化を利用した車両コントロールを積極的に楽しみたくなる性格で、例えば信号の変わり目に少々オーバースピード気味に交差点に突っ込みながら曲がる、というようなシチュエーションでは、しっかりロールを抑えた安定性と路面追従性を実感できる。自信を持って運転したくなる「スイフトらしさ」は健在なのだ。
それでいてハードウェアが進化した運転支援機能も充実し、ある意味「クルマ任せ」に走らせられる領域が拡大。アダプティブクルーズコントロールと車線維持支援機能は、カーブ手前で適度に減速しながら操舵支援も行う制御に進化したが、その実用性は一般道でも体感することができた。
日本だけでなく、欧州やインドなど、グローバルに展開されていく新型スイフト。スズキのクルマづくりここにあり、を改めて世界に示すコンパクトカーの新機軸となりそうな予感だ。
ボディサイズは全長3860mm、全幅1695mm、全高はFF車が1500mm、4WD車が1525mmとなっている。上級グレードの「HYBRID MZ」はアダプティブハイビームやLEDフォグランプを標準装備。
「HYBRID MZ」はブラック塗装+切削の16インチアルミホイールを標準装備。そのほか、「HYBRID MX」はシルバー塗装の16インチアルミホイール、「XG」はフルホイールキャップ付きの15インチスチールホイールが備わる。
センタークラスターを運転席側に8度傾け、ドライバーとの一体感を演出するラウンド形状のインパネ。「HYBRID MZ」に9インチディスプレイオーディオが標準装備される一方、メーカーオプションとして全方位モニターやHDMI入力に対応したナビゲーションも設定されている。メーターにはカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイを装備。
アダプティブクルーズコントロールは全車に標準装備(MT車は全車速追従機能を非採用)。新システムはカメラでカーブの曲率を検知する機能を備え、カーブ手前で減速。車線維持支援機能との組み合わせで、高速走行時の運転負荷低減を実現する。
写真はメーカーオプションの全方位モニター付きメモリーナビゲーション。一方で、「HYBRID MZ」に標準装備されるディスプレイオーディオも同じ9インチモニターを採用しており、Apple CarPlayなどのスマホ連携機能が利用できる点も共通している。
「HYBRID MZ」と「HYBRID MX」は、オプションの全方位モニター付きメモリーナビゲーションを選択すると通信機能のスズキ コネクトもセットで装着される。事故や急病などの緊急時には運転席頭上のSOSボタンでオペレーターに繋がる。
「HYBRID MZ」にはオートブレーキホールド機能付きの電動パーキングブレーキを採用。運転席と助手席のシートヒーターは全車に標準装備される。
メモリーナビゲーションおよびディスプレイオーディオ装着車にはデータ通信用USBソケットを装備。「HYBRID MZ」にはType-AとType-CのUSB電源も備わる。
パワートレインは排気量1197ccの新開発Z12E型直列3気筒エンジンに、新開発CVTを組み合わせる。ハイブリッド車はISGのトルクが増大し、ベルトを介したアシスト量を高めている。ハイブリッド車に5速MT車が設定されたのもトピックのひとつで、2WD車比較でWLTCモード燃費はCVT車が24.5km/L、MT車が25.4km/Lの最良値を実現。ガソリン車の「XG」はCVT車のみの設定で、23.4km/Lが最良値となっている。
ハイブリッド車はメランジグレー&ブラックのファブリックシートが採用され、MT車を除いてシルバーステッチも施されている。後席空間は相変わらず広くはない。ただし、前席下に爪先を入れるスペースが広く、膝をゆったり伸ばせるので、そこまで窮屈には感じない。
ラゲッジルームの寸法は先代と変わっておらず、奥行き約675mm、最小幅が約1000
mm、高さが約875mmとなっている。6対4分割可倒式の後席を格納すると、前席背もたれまでの奥行きは約1440mmに拡大する。
C型1242cc直列4気筒から、1197cc直列3気筒に変更。排気量の低下に伴い、最高出力や最大トルクの値も下がっているが、ネガな要素を感じさせない活発な走りを見せてくれる。
STYLEWAGON(スタイルワゴン)2024年4月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]
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