「ZR-V」はホンダのラインアップに加わった新しいSUV。ルーフが低くてパッとみたところ“ヴェゼルのお兄さん”的な雰囲気だ。そんなZR-Vの走りは? 使い勝手は? 注目のポイントを、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもあるモータージャーナリストの工藤貴宏が試乗チェック!
見た目以上に実用的で気持ち良い走りが美点
ZR-Vはホンダの新しいSUVだ。その立ち位置を一言でいうならば「ヴェゼル以上、CR-V未満」。全長4570㎜×全幅1840㎜の車体サイズは両車の中間となる。
車体構造に関しては、プラットフォームも含めてフィット系のメカニズムをベースとするヴェゼルとは異なり、ZR-Vはシビック系のメカニズムやプラットフォームを活用。CR-Vよりも少しだけコンパクトで「CR-Vでは大きすぎるなあ……」という人が多かった日本のマーケットでは、ちょうどいいサイズと言えそうだ。
ライバルはトヨタ「カローラクロス」やマツダ「CX-30」そしてスバル「クロストレック」などから、マツダ「CX-5」やスバル「フォレスター」程度までフォロー。ミドルサイズのSUVは今を時めく激戦区だけに、競合車種は多いのだ。
さて、そんなZR-Vの注目ポイントはふたつ。ひとつは実用性。もうひとつは運動性能である。まずは、多くの人の期待を超えるレベルに達している実用性から見ていこう。
SUVにしてはルーフが低いプロポーションだから実用性があまり高そうには見えない。……そう思うかもしれないが、大きな誤解。たとえば後席の膝まわりスペースの広さは定評のあるヴェゼルを上回っていて、さらにいえば冒頭で挙げたすべてのライバルを上回るもの。ファミリーユーザーにも自信をもっておススメできる。
荷室も後席使用時の床の前後長が890㎜、容量は床下も含めて408ℓ(ガソリン車)とかなりの広さ。幅も一般的なCセグメントSUVより広く、ヴェゼルでは不可能なゴルフバッグ横積みをできる余裕がある。
さらに後席可倒はこのクラスのライバルたちにはない、背もたれの前倒しに連動して座面が沈み込むタイプ。だからフラットで低い床となり、車中泊から自転車積載(サドルと前輪を外して2台積める)まで対応する。ZR-Vは見た目とは裏腹の使い勝手の良さなのだ。
そして何より強調したいのは、走りのレベルの高さ。「お前はスポーツカーなのか?」って言いたくなるくらい、気持ちがいいのだ。