「自動運転はアウディが世界をリードする」と発信!
自動車産業の“これまでの常識”では、メルセデス・ベンツが新規技術を世界に先駆けて導入する動きが長きに渡り続いてきたのですが、自動運転ではその役目を果たしたのは、フォルクスワーゲン(VW)グループのアウディでした。
アウディが連携したのは、先に紹介したイスラエルのモービルアイ(現在のインテル)です。
それも、水面下で開発を進めるのではなく、開発の経緯を報道陣向けに定期的に披露する方法をとってきました。
もっとも目立つ方法は、毎年1月にアメリカのネバダ州ラスベガスで開催されるITと家電の世界最大級見本市CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)を使った記者会見でした。
いまでは日本でもすっかりお馴染みなったCES。直近では、ソニーホンダモビリティによるBEVブランド「アフィーラ」が話題になっています。
そんなCESで、アウディは「未来の世界はこうなる」といった感じで、ドライバーが運転中に自動運転に転換できる自動運転レベル3、またドライバーレスでのレベル4でのロボットタクシーの実現をイメージした動画を披露してきました。
また報道陣に、自動運転実験車両で長距離運転する機会を与えたり、CES会場内で次世代の先進運転支援システムの体験コーナーを設置するなどして「自動運転は、我々アウディが世界をリードしていく」というイメージを発信し続けてきたのです。
さらには、自動運転実験車両をレースカーとして仕立て、これをサーキットで高速走行してみせました。実際、筆者はカリフォルニア州内の大規模サーキットでこの車両の助手席で試乗体験をしています。運転席にはアウディの開発ドライバーが座っていましたが、メインストレートでシステムをONにしてから、彼はハンドル/ブレーキ/アクセルに触ることは一度もありませんでした。その状態で、時速200㎞/hを越えて走行し、かなりの急ブレーキをかけたコーナーリングを実現してみせたことに、大いに驚きました。
ただし最近は、自動運転技術は一定以上まで発達し、自動車メーカー間での技術の差が少なくなってきた印象がある中、2010年代のような『アウディ先行』というイメージは多少薄れてきた印象があります。
そうとはいえ、ブランド戦略の観点から、アウディがこれまで進めてきた自動運転を活用したさまざまなマーケティング活動は、VWグループ全体として大きな収穫を得ていると感じます。
つまりアウディが開発したシステムが、フォルクスワーゲン、ポルシェ、ランボルギーニ、スペインのセアト、チェコのシュコダなどで、それぞれのブランドイメージや新車価格に対する技術的なコストを考慮した上で、横展開されていく仕組みです。
著者PROFILE 桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員
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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]