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それまでになかった高級クロスオーバーSUVの誕生
SUVとは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の略だ。スポーツとは運動ではなく、アウトドアスポーツやレジャーで、それらを楽しむためのクルマという位置づけ。1980年代にアメリカで広まった。
アメリカではピックアップトラックの人気が極めて高い。現在でも販売台数のトップ3はピックアップトラックが独占している。ちなみに現在の販売台数1位はフォードのFシリーズ。1980年代に入って荷物が濡れないようにと、荷台部分に「シェル」と呼ばれるFRP製の屋根を装着したところ、これが意外な人気を呼んだ。だったら最初から屋根付きのトラックを製造しては……、ということで生まれたのがトラックベースのワゴンのようなクルマで、これがいつからかSUVと呼ばれるようになっていった。
そのため、初期のSUVはフレーム構造のピックアップトラックベースだった。1983年に登場した初代トヨタ・ハイラックスサーフ(北米での車名は4ランナー)も、ピックアップトラックのハイラックスをベースにしている。これがSUVの定石だった。
1990年にはフォード・エクスプローラーが登場し大ヒットするなど、アメリカでSUV人気は加熱していった。そのなか、SUVの転換点となるクルマが登場する。火元は我が日本。1997年に登場したトヨタ・ハリアーで、本場の北米ではレクサスRXとして販売された。
ハリアーがエポックメイキングだったのはトラックベースではないこと。FFセダンであるカムリをベースにしていた。トラックベースのSUVに比べるとタフさやヘビーデューティさは欠けるものの、乗用車に遜色ない運動性能を誇った。つまり、ハリアーはクロスオーバーSUVの先駆けと言えるのだ。
さらに北米でレクサスから登場させたことも先見の明があった。トヨタは1989年から北米でレクサスを展開、LS(当時の日本名はセルシオ)などが好調だった。レクサスはプレミアムブランドであり高級車を扱うチャンネル。ライバルはメルセデスやBMW、キャデラックなどの高級車ブランドだ。
当時のSUVはトラックベースの実用車と見なされていた。レクサスという高級車ブランドが扱うクルマなのか? という疑問もあっただろう。だが、レクサスRXは北米で大ヒットし、プレミアムSUVという新たなカテゴリー創出に成功する。
それまでプレミアムブランドではSUVを扱っていなかったが、レクサスRXの成功で、慌てたBMWは2000年に初のSUV、X5をリリース。メルセデスは1997年にMクラスを登場させていたが、クオリティが低くて高い評判は得られずに、のちに高級志向へと転換して出直した。さらに2002年には、それまでスポーツカー一辺倒のポルシェがSUVVのカイエンを登場させるなどした。
今では当たり前の高級プレミアムSUV。ハリアーはSUVの価値観を覆したのだ。
ピックアップ+シェル時代のSUV
発祥の地、アメリカのSUVとは?
SUVという言葉が広まったのは1980年代だが、SUV的なクルマはそれ以前からあった。大戦時に軍用車として開発されたウィリス・ジープは、戦後ジープCJとして親しまれていたし、ジープに対抗して1966年にはフォード・ブロンコも登場していた。1974年には初代ジープ・チェロキーも登場。だが、アメリカで圧倒的に人気があったのはピックアップトラック。1980年代になって、トラックにシェルと呼ばれるFRP製の屋根を装着したところ、ワゴン的に使えるということで人気が出て進化。そんなクルマがSUVと呼ばれるようになった。
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STYLEWAGON(スタイルワゴン)2023年6月号 より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]