大ヒットした後継モデルは難しい!? 2代目アルファードの誕生には隠し球もあった【ミニバンの起源 アルファード&ヴェルファイアの歴史 後編】

崩せなかったエルグランドの牙城。アルファード登場前のトヨタ、その戦略

グランビア(後期型)&グランドハイエース [1999年]
ついにフルモデルチェンジ果たした、トヨタ・アルファード&ヴェルファイア。今でこそ国産ミニバンの王者として君臨しているが、その歴史を振り返ると、すべてが順風満帆だったわけではない。今に続く、アルファード&ヴェルファイアの起源をたどってみよう

高級ミニバンの雄、今に至る絶対王者への道

ワンボックスの基本グレードは商用バンであった。商用バンをベースにさまざまな装備を加え、乗用ワゴンとしても人気を集めてはいた。1990年代に短いボンネットを備えミニバン化していったが、多くの自動車メーカーは、ワンボックス時代の慣習がそのまま引き継がれる……と思っていたのだろう。

トヨタも同じだった。高級ワンボックス、ハイエースの後継乗用モデルも商用バンがベース、と考え、1995年にヨーロッパ向けに用意された主にビジネス向けのハイエースをベースに、国内向けにそれなりの装飾を加えたのがグランビア。基本は商用バンだった。  

一方、初代日産エルグランドは「最高級新世代1BOX」を謳い、商用バンを設定しなかった。グランビアとエルグランドは目指す頂が違ったのだ。

好調エルグランドにあわてたトヨタは、1997年グランビアに3.4L V6エンジンを追加搭載。1999年には押しの強いフロントに大幅変更し、兄弟車のグランドハイエースも設定したものの、エルグランドの牙城は強力で、崩すことはできなかった。

2代目アルファード登場の隠し球、それがヴェルファイア誕生

大ヒットした初代アルファード。大ヒット車の後継モデルはむずかしい、と言われる。攻めより、どうしても守りに入ってしまうからだ。だが、トヨタはそうはしなかった。2008年、2代目アルファードが登場するが、そこには大きな隠し球があった。

それはネッツ店扱いのアルファードVに代わって、よりアグレッシブな外観を与えられたヴェルファイアを登場させたのだ。内外装は初代と比べて飛躍的に洗練された新型。2010年にエルグランドはフルモデルチェンジを受けてFF化されたが、人気は回復せず、アルファード/ヴェルファイアの地位はますます盤石なものとなった。

大胆なモデルチェンジができたことには理由がある。トヨタは2005年に日本国内でもレクサス店を展開した。レクサスは当然、プレミアムカーを扱うブランド。トヨタ製セダンで一番の高級車は? と質問されれば、かつては「クラウン」だったが、レクサスのある現在は「レクサスLS」となる。

だがレクサスにはミニバンがない。そうなると、最高級ミニバンはトヨタが担当してアルファード/ヴェルファイアでOKということ。実際、レクサスレベルの高いクオリティを実現しているのはご存じだろう。

マイチェンでさらに進化

〜G’zも登場〜

モデリスタが手がけたクルマたち

トヨタ製の救急車は「ハイメディック」という。1992年に当時のハイエースをベースとするモデルが登場。1997年にはグランビアベースのハイメディックにフルモデルチェンジされた。現在はまたハイエースをベースにしている。手掛けたのはモータースポーツでお馴染み、2018年にモデリスタと合併したTRDだ。そのモデリスタは、歴代アルファード&ヴェルファイアをベースに、ゴージャスな2脚のリアシートを備える4人乗りの「ロイヤルラウンジ」を手掛けている。リアには大型のディスプレイや冷蔵庫などが備わる本物のVIPカーだ。

2019年、新たなる兄弟「グランエース」登場

新興国向けのハイエースをベースとする大型ミニバンで、グランビアの後継車とも言える。全長は5.3m、全幅2m弱とアルファードなどよりほるかに巨大なボディをもつ。商用車ベースだが装備は極めて豪華で、3列シート6人乗りと4列シート8人乗りを用意する。

気になる中古車市場動向

初代アルファードは安いが、年式的に古すぎる。一方、現行モデルは半導体不足が中古車市場にも飛び火し、販売価格は最低でも300万円以上と高めに設定されている。中古車市場全体は価格が落ち着いてきているが、アル&ヴェルは別格だし、新型が出てもあまり影響はないと言われるほど。となると狙い目は先代で、ハイブリッドが加わる2011年以降を狙いたい。相場はガソリンで80〜280万円、ハイブリッドで140〜300万円程度。最新の安全装備はないが、高品位な室内空間は今でも通用する。

新型40系アルファード&ヴェルファイア発表 まとめはこちら

STYLE WAGON(スタイルワゴン)2023年7月号より

[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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