自動運転やBEVに興味があるなら知っておきたい10のキーワード_前編

【これからどうなる自動運転】ADASやNACPって一体なに? いまさら聞けない、自動運転でよく聞くワード|

連載企画第6回/存在感を高めるBEVと自動運転の今【これからどうなる自動運転】
過去5回の講義で自動運転についての知識を深めてきた。そこで今回と次回は自動運転の総集編として、改めて気になる“キーワード”を解説。多くのクルマが獲得したレベル2から手の届くところまできたレベル3など、その全容を探る。

KEYWORD 01 ▶ 自動運転レベル

レベル1からレベル5まであります。自動運転レベルは2010年代半ば、米国運輸省道路交通安全局と米国自動車技術会、そしてドイツ連邦道路交通研究所による3者協議で決まり、日本も同方式を採用しています。自動運転レベルは、レベル1から段階的に技術が高度化するイメージですが、レベル1〜2は自動運転というよりも、運転支援するという考え方です。そのため、運転の責任があるという意味での「運転の主体」は、運転者にあります。それがレベル3以上になると、「運転の主体」はクルマのシステムに移ります。つまり、本格的な自動運転はレベル3以上を意味します。さらに、レベル4になると運転席に運転者がいない、または運転席そのものがない、という状態になります。ここまで来れば、まさに自動運転です。さらにその上、レベル5になると「いつでもどこでも自動運転」という、自動運転の理想像になります。現時点では、レベル5実現に向けた道筋は見えていません。

KEYWORD 02 ▶ ADAS

アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システムの頭文字をとってADAS(エイダス)と呼びます。日本語では先進運転支援システムと略します。自動運転レベル1〜2は、自動運転技術を活用したADASと言うことができます。具体的には、衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)、高速道路での前車に追従するアダプティブクルーズコントロール(ACC)、また車線逸脱防止装置やハンドル操作補助などがあります。これらは、すでに多くの乗用車が標準装備している、またはオプション設定している予防安全機能としてユーザーに知られています。そもそも、ADASは自動運転とは分離した存在でしたが、自動運転の技術的な進化、また法的な解釈を分かりやすくするため、ADASを自動運転レベル1〜2に振り分けたと言えるでしょう。直近では、レベル2の高度化が進んでいて、例えばスバルの新世代アイサイトのオプション設定であるアイサイトXはレベル3顔負けのレベル2といえるでしょう。

KEYWORD 03 ▶ NCAP

ニュー・カー・アセスメント・プログラムの頭文字で、NCAP(エヌキャップ)と呼ばれています。あまり聞いたことがない、と思う人が少なくないはずです。でも、新車カタログやメーカーのホームページを見ると、JNCAP(ジェイエヌキャップ)の★印の表記を見つけることができるかもしれません。この「J」とは、ジャパンのこと。「独立行政法人 自動車事故対策機構」が実施するJNCAPは、同機構が自ら新車を選んだり、またはメーカー側から同機構に実験車両を提供することで、さまざまな規定試験を行い、そのデータを一般に公開。さらに定められた評価点の総合点を★の数で示す仕組みです。評価試験は、ぶつかった後の「衝突安全」と、ぶつかる前の「予防安全」の2つに分類。この予防安全は2010年代から欧州を基点に日本を含めて世界各地で採用されました。その試験項目にマッチするよう、自動車メーカー各社はADAS(先進運転支援システム)の最新化を行ってきているのが、JNCAPの実状だと言えます。

KEYWORD 04 ▶ センサーフュージョン

音楽でもフュージョンという分野がありますが、これは融合するという意味です。ADASを含む自動運転では、センサーフュージョンという表現をよく使います。センサーとはクルマ側に装備されているさまざまな計測機器のことです。ユーザーがはっきり目にすることができるのは、ルームミラーの後部に配置されているカメラでしょう。一般的には単眼(ひとつ)で、スバル、スズキなどでは人間の眼の原理を用いたステレオカメラ(複眼)があります。これらは映像を映すための機能ではなく、周囲のクルマ、人、自転車などの物体等を認識するのが目的です。これらに、一定の周波数でレーダーを送り、その反射波から物体の位置を認識するミリ波レーダー、また複数のレーザーを照射して周囲の状況を把握するライダー、さらにクルマの周囲2m程度での物体認識をするソナーが、ADASや自動運転で使われるセンサーです。これらをどう組み合わせる(融合する)かは、メーカーの開発思想で違いがあります。

KEYWORD 05 ▶ ハンズフリー/ハンズオフ

ハンズフリーとか、ハンズオフという表現は、本来は手で支えることが義務付けられているハンドルに触らないことを意味します。もちろん、停車中ではなく、走行中にハンズオフをすることに抵抗感があり最初はなかなか慣れないと思います。日産のテレビCMでも、以前からハンズオフを強調する内容としていますが、実際にハンズオフを体験しているユーザーは、まだまだ少ないのが実状です。なぜならば、ハンズオフが法的に可能な自動運転は、レベル2でもさまざまな条件に適合した高度なシステムに限られているからです。具体的には、日産「プロパイロット2.0」、スバル「アイサイトX」、トヨタ「アドバンスド ドライブ」などのレベル2です。これらは通常のレベル2で走行を始めると、走行しているのが高速道路であること、GPSなどから十分な位置データをとれていること、また各メーカーが採用している高精度地図の機能の作動等の条件が整うと、“ハンズオフ可能”と表示されます。

PROFILE 桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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