高齢化が進む日本では、 自動運転の役割は大きい
あなたは、自動運転がある世界をどんなふうに想像しているでしょうか?
「自宅からどこへでも、楽々移動できる理想的な世界」というイメージでしょうか?
それとも、「運転することが楽しいのに、運転できなくなるなんて、個人的な気持ちとしては、なんだか微妙…」という感じでしょうか?
この連載では、これまで自動運転の過去・現在・近未来について触れてきましたが、そうした中で、ユーザーの皆さんが自動運転に対する具体的なイメージを持てるようになっていれば、筆者としては幸いです。
改めてですが「自動運転は万能」ではありません。なぜならば、自動運転は「人が暮らす社会」の中で「人に寄り添うこと」が必要だからです。大事なことは「人中心」で自動運転を考えることだと思います。
技術が進んだから、それをどんどんクルマに盛り込んで、クルマを使う生活が段々充実してきた、というのがこれまでの世の中の流れでした。
「良いクルマ」、「便利なクルマ」、「凄いクルマ」になるほど、「人は幸せになる」という構図だったように思えます。
こうした流れの中に自動運転を組み込むと、「自動運転レベルが上がる」ほど、「人は幸せになる」という仮定になってしまいます。
確かに、自動運転レベルが上がれば、自動車に関わる交通事故のリスクが減ることは、技術的な観点で確実だと言えるでしょう。
また、日本では今後、免許取得者の高齢化が一層目立つようになることが統計上、確実です。そのため、運転者の身体の衰えを自動運転がカバーしたり、または免許返納後の日常の足として自動運転車に乗車する人が増えることで、より多くの人がこれまでどおりの生活を維持できることも考えられます。
そのほか、物流や公共交通の分野でも、免許取得者の高齢化が進むため、業務上での安心安全を担保するために自動運転が広がり、それが社会活動全体を維持できることにつながるだろうと思います。
一方で、自動運転レベル3以上の場合、運転の主体がクルマのシステムであるため、IT技術が今後さらに進み、クルマの知能化が高度になると「クルマに人が支配される?」といった、旧来のSF映画のような仮定もできると思います。
ちょうど、広島G7サミットに関連したデジタル関連大臣会議でも「ChatGPT」などAI(人工知能)について「人がしっかりと制御できるような、倫理的な方策をさらに充実させるべき」という考え方で参加各国が合意したところです。
自動運転はあくまでも、人中心の社会をより良くしていくための「ツールのひとつ」に過ぎません。社会全体に対して自動運転は万能ではありませんし、また自動運転は「打ち出の小槌(こづち)」でもありません。
その上で、人はこれから、自動運転に対して「ワクワクする毎日」を求めていくことになるでしょう。
自動運転はあなたにとって、これから長きに渡り付き合っていく「良き相棒」になります。
皆さん、今後とも、自動運転をよろしくお願いします。
PROFILE 桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員
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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]
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