次世代通信規格として普及が見込まれているミリ波帯5GやBeyond 5Gなどは、波長が短い高周波帯を利用する。高周波帯は送信過程で電波が減衰する誘電損失が大きいため、近年、通信機器に適用されている変性ポリイミド(MPI)や液晶ポリマー(LCP)などの素材では、電波を損失させ通信に支障をきたすおそれがあり、低誘電損失の新素材の開発が求められている。
こうしたニーズに対応するため、今般、三菱ケミカルが持つ材料設計技術や合成のノウハウを活かし、誘電正接*2を業界トップレベルである0.001以下まで抑え、高い誘電特性を持ったフィルムを新たに開発した。
本フィルムはミリ波帯5G(28GHz)における伝送ロス*3 を、従来品と比べ約 50%低減することが可能。透明性や耐熱性が高く、銅密着性にも優れていることから、電子回路基板やアンテナ基板・外装材などへの活用が期待される。
熱可塑性・低誘電フィルム | 熱硬化性・低誘電フィルム |
・高周波(10GHz、28GHz)でも低い誘電損失を達成 ・誘電特性、高い透明性、熱特性の両立 | ・誘電特性、耐熱性の優れたバランス ・銅密着性の担保 |
誘電正接:0.0007以下 | 誘電正接:0.0010以下 |
想定用途: 高周波通信向け回路基板、アンテナ基板など | 想定用途: ボンディングフィルム、ビルドアップフィルムなど |
*1 誘電損失:誘電体に交流電場をかけた際に、エネルギーが熱として失われること
*2 誘電正接:誘電体内での電気エネルギー損失(誘電損失)の度合いを表す数値
*3 伝送ロス:通信経路において電気や光、音などの信号が距離に応じて減衰する度合い