目次
両社は、部分的および条件付き自動運転機能を量産レベルに引き上げ、広く一般の消費者に提供したいと考えている。今回の提携は、フォルクスワーゲングループブランドのもとで販売される車両を対象とし、ドライバーがステアリングから一時的に手を離すことのできる機能の実装を目指している。具体的には、都市部、郊外、高速道路を走行するためのハンズオフ機能(SAEレベル2)と、高速道路での運転操作を引き継ぐシステム(SAEレベル3)である。ハンズオフ機能は、2023年に装備される予定。
両社は部分的および条件付き自動運転機能の実装を目指し、最先端のソフトウェア プラットフォームの共同開発に取り組んでいく。このプラットフォームを、フォルクスワーゲングループのブランド傘下で個人所有車として販売されるあらゆる車両クラス、すなわち世界最大級の車両フリートにおいて使用することを目指している。また、今回の提携によって開発されたあらゆるコンポーネントを、他の自動車メーカーの車両やエコシステムに組み込むことも可能となる。
ソフトウェアと大量生産の専門知識
「個人所有車向けの自動運転機能は、徐々に進化しています。ボッシュでは、すでに何年も前から取り組み、成功を収めてきました。今後はCariadと協力して、あらゆる車両クラスに向けた部分的および条件付き自動運転機能の市場投入を加速し、誰もが利用できるようにしていきます。これにより、運転がより安全に、そしてよりリラックスしたものになるでしょう。また、開発したソリューションを他の自動車メーカーにも提供することで、新たな基準を打ち立てることが可能になります」と、ロバート・ボッシュGmbH取締役会メンバーであるマルクス・ハイン氏は述べている。両社は、数十年にわたる大量生産、スケーラビリティ、駆動システム開発の実績、さらには、ソフトウェアやデータドリブン型の開発、AIに関する専門知識など、自動運転のさらなる普及に必要となるノウハウを有している。
CariadのCEO、Dirk Hilgenberg氏は、次のように述べている。
「自動車産業の未来の鍵を握るのは、自動運転です。両社の提携により、ドイツの革新性に対する評価がさらに高まることでしょう。そしてボッシュとCariadは、先駆的な技術の開発における専門性を一層深めていきます。今回の提携は、できるだけ早く、可能な限り最高のソリューションをお客様に提供したいという両社の意欲を表しています」
実環境からの情報をインテリジェントに処理
ボッシュのクロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部とCariadの従業員は、部分的および条件付き自動運転技術の開発に向け、シュトゥットガルトとインゴルシュタットを軸に、両社の複数拠点にて混合のアジャイルチームとしてグローバルネットワークに参画し、共同作業を行う。このプロジェクトに必要な各種モジュール(ミドルウェアから個別のアプリケーションまで)のために、ピーク時には両社の1,000人以上のエキスパートが従事することが見込まれる。両社では、このプロジェクトに参画する新人エキスパートの採用もすでに開始している。
本プロジェクトは、360度サラウンドセンシングからの情報に基づくデータドリブン型のソフトウェア開発が軸となる。このために、データを記録、評価、処理するための非常に革新的な開発環境を構築し、AIも活用される。背景には、現実の道路交通からのデータが豊富であるほど、部分的および条件付き自動運転機能の設計がいっそうロバストで自然なものになるという考え方がある。例えば、車両の位置推定や前後左右への誘導のために、高精度マップに追加レイヤーを開発することも共同作業の対象となる。さらに、日常の運転状況や、「コーナーケース」と呼ばれる、めったに起こらないもののシステムが解決することが難しい道路交通事故も対象となる。
リアルタイムでの情報処理
「自動運転の開発における最良のテストコースは、道路交通です。世界最大級のコネクテッドカーのフリートの協力を得て、膨大なデータベースにアクセスできることになります。これにより、自動運転システムを新たなレベルに引き上げることが可能になります。当社のすべてのお客様が、この恩恵を受けることが出来ます」と、ボッシュのクロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部長、マティアス・ピリン氏は述べている。「両社の協力により、自動運転機能をより広範に実車でテストし、より迅速に市場投入することが出来るようになります。ボッシュとCariadがひとつのチームとして共同でエンジニアリング業務を実施するという提携は、自動車業界において初めての試みです」と、Cariadの提携プロジェクト統括責任者であるIngo Stürmer氏は述べている。
実際の交通状況で収集したデータを、継続的かつリアルタイムで開発プロセスに反映することも重要となる。現実の交通状況下で1 km走行するごとにデータが収集、評価、処理されることで、より多くのデータが蓄積され、より高度な自動運転を実現し、安全かつ確実に実装するための基盤となる。両社はまた、高度自動運転(SAEレベル4)の実現に向け、共同開発目標とタイムラインの可能性を検討することでも合意している。
この対等な提携の背後には、世界最大級の自動車グループと世界最大級の自動車サプライヤーとの提携が、自動運転の開発を大きく前進させることにつながるという理念がある。