近年、各産業においてはカーボンニュートラルの実現に向けてCO2排出量削減のための技術開発が進んでいる。自動車分野でも、各国の自動車の燃費基準やCO2排出量規制が厳格化する中、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに代わり、電動駆動ユニットで車両を駆動するバッテリー式電動自動車の開発が急務となっている。
省エネルギー・省電費に向けて電動駆動ユニットは低フリクション化、小型・軽量化の要求が高まっており、モータをインバータおよび減速機と一体化したeアクスルなどの駆動ユニットの開発が活発化している。それに伴い、これらの小型・高速化するモータ用や減速機用に使用される軸受には、高速回転時の発熱や破損を抑える優れた高速回転性能が求められている。
NTNでは、こうした高速回転のニーズに早くから取り組んでおり、2015年に「グリース潤滑高速深溝玉軸受(※2)」が開発された。本商品は、保持器材料の配合を見直して高強度化を図るとともに、保持器と転動体が直接触れるポケット部の形状を工夫することで遠心力による変形を最小化し、高速回転を実現した。また、その優れた高速回転性能を活かし、オイル潤滑下でも適用可能とし、各社車両に量産納入を拡大している。(※3)(※4)
しかし、さらなるモータの高速化に向け、軸受を超高速で回転させるためには、遠心力による保持器の変形や強度不足などの解決に加え、転動体や各軌道輪の回転精度の確保、そして潤滑油の供給方法や油量の最適化が必要だ。
NTNは、軸受の発熱と潤滑条件による抜熱の熱収支バランスを最適化する供給油量の計算手法を確立した。さらに、遠心力による変形を抑制するため保持器の形状を見直すとともに、転動体および各軌道輪の回転精度の確保など内部諸元を最適化することで、深溝玉軸受でdmn値220万の高速回転を達成した。
これら発熱と抜熱を適切に管理する手法を確立したことで、EV・HEVの開発・普及が進む中、各社車両のニーズに対して最適な高速回転性能を有する軸受仕様の提案が可能となる。
特長
- 限界回転数:業界最高の高速回転dmn値220万を達成(※5)
- 標準軸受と同一の取り付け寸法(置き換え可能)
1.dmn値:軸受の回転性能を表す指標で、軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1)
参考:2015年3月4日プレスリリース:
EV・HEV用「グリース潤滑高速深溝玉軸受」を開発
2.参考:2020年9月1日プレスリリース:
EV・HEV用高速深溝玉軸受の量産納入を拡大
3.参考:2021年10月18日プレスリリース:
2021年“超”モノづくり部品大賞「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞
4.NTN試験条件による