【海外技術情報】ルノー:HYVIAが2022年中頃に市販予定の軽量商用水素自動車ルノー『マスターシャーシキャブH2-TECH』のプロタイプを展示

ルノーグループとプラグパワーのジョイントベンチャー企業であり、水素モビリティを専門とするHYVIAが、5月11日~12日にフランスで開催された水素専門家向けイベントであるハイボリューション・トレードショーに2年連続で出展した。そこで展示されたのが『マスターシャーシキャブH2-TECH』のプロトタイプ。軽量商用水素自動車である。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

ハイボリューションに展示された車両は、同社が開発中の水素技術を搭載したルノー『マスターシャーシキャブH2-TECH』のプロトタイプである。『マスターシャーシキャブH2-TECH』は、約250kmの範囲においける集中的な使用(近距離輸送)に最適である、とされる。最大積載量は1,000kgであり、商品輸送に適合した20m³の大容量バンバージョンなど、オーダーメイドで変換できるように設計されている。『マスターシャーシキャブH2-TECH』には30kWの燃料電池、33kWhのバッテリー、それに700バールで3kgの水素を含むタンク(1.5kgのタンク2つ)が装備されている。

 HYVIAのCEO、デイビッド・ホルダーバック氏は以下のように述べた。

「HYVIAは今年も、この重要なイベントであるハイボリューションに参加します。昨年3月にフランスのフリンズに当社工場が設立されたことからわかるように、2022年半ばからの水素自動車の商品化に向けて順調に進んでいます。すでに燃料電池の組み立てとテストを開始しています」

フランスのフリンズに設立されたHYVIA工場で生産された燃料電池

オープン燃料電池のユニークなプロトタイプも展示された。どのように機能するのか、そのコンポーネント、それに関連する流れ(水素、空気、水、電力)が示された。2022年3月15日に稼働を開始したフリンズのHYVIA工場では、この30kWの燃料電池の組み立てのテストを行っている。HYVIAが生産する燃料電池は、用途に応じて、ジョイントベンチャーのもう一社であるプラグパワーが有する高度な技術により、そのパワーの調整が可能である。2022年末までに同工場では、水素燃料補給ステーションの組み立てと、最初の1MW電解槽による水素の生産も開始する。

HYVIA:水素モビリティ社会に必要となる完全なるシステムを構築する

HYVIAの燃料電池を搭載した水素を動力源とする小型商用車は、CO2排出量はゼロであり、航続距離は最大500kmにまで拡大可能。給油時間は5分である。積載量12m³のバンバージョン(マスターバンH2-TECH)、大容量20m³のシャーシキャブバージョン(マスターシャーシキャブH2-TECH)、最大15人の乗客を乗せることができるミニバス(マスターシティバスH2-TECH)を基本として想定している。

HYVIAは2021年6月、ルノーグループとターンキー水素および燃料電池ソリューションの世界的リーダーであるプラグパワーとが共同で設立した合弁会社である。社名は水素の「HY」、道路の「VIA」を組み合わせである。水素モビリティソリューションにより、カーボンフリーモビリティの新たな道を切り開くことを目指している。フランスを拠点としており、ヨーロッパ市場向けに、燃料電池を備えた小型商用車、水素燃料補給ステーション、無炭素水素の供給、車両保守の関連サービスを含む完全なるシステム構築を行う。

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著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…