ジェイテクトが、「FRベース4WD車両向け電子制御カップリング(ITCC)」と「軽量・コンパクト 電動チルト・テレスコ付きステアリングコラム」を新開発、MAZDA CX-60に採用

左:FRベース4WD車両向け 電子制御カップリング(ITCC)、 右:富士機工(株) 軽量・コンパクト 電動チルト・テレスコ付きステアリングコラム
ジェイテクトは「FRベース4WD車両向け 電子制御カップリング(ITCC)」を、そして、同社グループである富士機工と共に「軽量・コンパクト 電動チルト・テレスコ付きステアリングコラム」を新たに開発したことを発表した。両製品はマツダの新型クロスオーバーSUV「MAZDA CX-60」に採用されている。更に、今回開発されたITCCはマツダより「開発技術優秀賞」を受賞し、電動チルト・テレスコ付きステアリングコラムは、運転手を認証し最適なドライビングポジションに調整をする「ドライバー・パーソナライゼーション・システム」に貢献している。

1.FRベース4WD車両向け 電子制御カップリング(ITCC) について

ITCCとは、電子制御によって前後輪の駆動力を路面状況や車速に応じて連続的に変化させ伝達することで、車両の優れた運動性能と高い燃費性能の両立に貢献する製品のこと。今回、マツダが提唱する「人馬一体」の走りに応えるべく、FRベース4WD車両向けのITCCが新たに開発された。

従来品と開発品のITCC搭載位置比較
従来品と開発品のITCC構造比較

新開発品の特長

① FRベース4WD車両レイアウトへのITCC構造最適化及び軽量・小型化
従来のFFベース車両への搭載を前提としたITCC構造から、トランスミッション・リアプロペラシャフト間を直結する貫通シャフト構造を採用したことでFRベース車両へのITCC搭載を可能にさせると同時に、トランスファー内レイアウトに合わせた小径化により、省スペース化と従来比約10%の軽量化を実現。これにより燃費効率向上にも貢献。

② 前後輪トルク配分の高精度化
温度センサーにより走行中のトランスファー内の温度変化に応じた電流制御を可能とし、トルク精度向上に貢献。また、燃費・耐久性に優れた摩擦材を有するクラッチをITCCユニット内に採用。これらの機能により、燃費効率向上と4WDとしての走りの両立を実現している。

2.軽量・コンパクト 電動チルト・テレスコ付きステアリングコラム について

ステアリングコラムは、ハンドルを回す力を前輪に伝える機能を持ち、ハンドルを支えている軸の部分を指す。その中で、電動チルト・テレスコ付きステアリングコラムとは、ドライバーが快適に運転できるよう、ハンドル位置を上下(チルト)・前後(テレスコ)にスイッチひとつで調整できるものである。今回、燃費向上や膝下スペース確保といった市場ニーズに応えるべく、「軽量・コンパクト」をコンセプトに開発された。

ステアリングコラム搭載位置

開発品の特長

① EA構造の簡素化による軽量化
ステアリングコラム(以下「コラム」)には、事故の際にドライバーへの衝撃を吸収し、傷害を軽減させるための衝撃エネルギー吸収構造(EA構造)をもたせている。従来、コラム全体を車両前方に移動させることと、コラムの収縮可能な2体チューブ部分を収縮させることで適応していたEA構造を、今回の開発品ではコラム収縮のみで完結することに成功。それにより、部品点数を削減でき、コラム全体の質量は従来品比30%低減を達成した。また、アルミ部品の肉厚を薄くすることと、シャフトの中空化による部品形状の最適化で、高剛性と軽量化が両立された。

EA:Energy Absorption。エネルギー吸収

従来品と開発品のEA構造の比較

② チルト構造のコンパクト化
ハンドルを上下方向に動かすためのチルト構造を、従来の、コラム下側にモータを配置した直動式から、リンク式に変更。従来品の直動式では、モータ回転させたスクリューでナットを上下に動かすことでハンドルを上下方向に動かす。ナットの上下にスクリューを配置し、スクリューの下にモータを配置するため、コラム下側スペースに部品が積み上がる構造となっていた。一方、今回、リンク式のチルト構造を採用したことでコラム直下にナットを配置する必要が無くなった。これにより、直動式と比較してコラム下方寸法(高さ)を30%低減でき、省スペース化が達成された。そして、コラム下側スペースを確保することで二次衝突時における膝の安全性向上に貢献している。

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