2事業のうち、「水素CGS※1の地域モデル確立に向けた技術開発・研究 」では、兵庫県神戸市のポートアイランドの「水素CGS実証プラント」に設置済みのドライ方式※2水素専焼水素ガスタービンの改良、統合型EMS※3の再設計・改修および周辺公共施設に水素由来のクリーンな電気と熱を供給することで、より実用的で環境性が高い技術の確立と、地域に実装するためのモデル構築を行う。また、「水素CGSの事業モデル確立に関する調査 」では、関西電力と共に、比較的大規模な施設やビルが集まる市街地などへの水素CGSの導入による脱炭素化に向けた事業モデルの調査・検討を行うことで水素エネルギーの普及促進を目指す。
それぞれの事業の詳細は以下の通り。
【1】
事業名:水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/地域モデル構築技術開発/水素CGSの地域モデル確立に向けた技術開発・研究
実施期間:2年間(2021年度~2022年度)
実施内容:① ドライ方式水素ガスタービンの社会実装を早期に実現するため、天然ガスとの混焼に対応できるドライ方式燃焼器の改良開発を行い、水素CGS実証プラントで検証する。(川崎重工)
② 大気汚染防止法で定められたNOx(窒素酸化物)規制値(70ppm以下、残存O2濃度16%換算)は既に脱硝装置を用いることなく達成しているが、より厳しい環境規制条例の地域にも対応すべく、NOx低減性能のさらなる向上を図る燃焼技術を開発し、水素CGS実証プラントで検証する。(川崎重工)
③ ドライ方式燃焼器の改良に合わせて、統合型EMSの最適化パラメータをアップデートし、神戸CGS実証プラントでの運転試験を通して性能検証を行う。(大林組)
【2】
事業名:水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/水素製造・利活用ポテンシャル調査/水素CGSの事業モデル確立に関する調査
実施期間:2年間(2021年度~2022年度)
実施内容:① 神戸市ポートアイランドに設置した水素CGSの実証プラントを対象とした、周辺地域の電気・熱需要のポテンシャル調査を行うとともに、神戸空港島に建設された液化水素基地からの供給を想定した事業モデルの成立性について検討する。(川崎重工/大林組/関西電力)
② 本モデルを他の地域へ展開する場合の拡張性についても検討し、水素CGSの社会実装を進めるための雛形となる事業モデルをまとめる。(川崎重工/大林組/関西電力)
なお、川崎重工と大林組は、2019~2020年度にかけて、NEDOの助成事業として「ドライ低NOx水素専焼ガスタービン技術開発・実証事業」に取り組んだ。この実証事業では、川崎重工が新規開発したマイクロミックス燃焼技術を適用したドライ方式水素専焼ガスタービンの運転に世界で初めて成功※4している。ドライ方式水素専焼ガスタービンは、ウェット方式※5に比べて発電効率を約1ポイント向上させつつ、NOx性能に関してもウェット方式と同様に大気汚染防止法の規制値(70ppm:O2=16%換算値)をクリアすることを実証した。また、ドライ方式による約450時間の水素専焼運転を行い、耐久性に問題がないことを検証したほか、天然ガスを燃料にして運転したケースと比較して約150トンの二酸化炭素削減効果があることを確認した。
大林組は、水素CGSから供給される電気と熱の最適配分に向けた統合型EMSの改修・実証を実施し、地域における水素エネルギーの有効利用に向けた評価を行った。併せて、燃料の液化水素を気化する際の冷熱を有効活用するためのシステム検討を実施した。
※1 CGS(Co-generation System;コージェネレーションシステム)
電気と熱の両方を同時に供給することができるエネルギーシステム。
※2 ドライ方式
NOx低減用の水噴射を使わない燃焼方式。水噴射を使わない分、発電効率を向上させることができるが、燃焼安定性が課題。
※3 統合型EMS(Energy Management System;エネルギーマネジメントシステム)
ビルや工場などで省エネを図るために、ITを活用してエネルギーを最適に制御するシステム。
※4 世界で初めてドライ低NOx水素専焼ガスタービンの運転に成功。
2020年7月21日のプレスリリースを参照。
https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_200721-1.pdf
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20200721_1.html
※5 ウェット方式
NOx低減のために水噴射(あるいは蒸気噴射)を行う方法。燃焼安定性に優れ混焼への対応も容易であるが、水分が燃焼エネルギーの一部を吸収するため効率の向上が難しい。