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本製品を用いてスパッタリング法で成膜した黒化膜は、銅の導電膜の可視光平均反射率を従来材24.0%から9.6%まで低減させることができる。また、この黒化膜は車載向け電子部品環境試験(温度85℃、湿度85%、1000時間)で色が変化*4することがなく、厳しい環境での使用や適用製品の長寿命化が期待されている。
また、本黒化膜は銅のエッチング*5で一般的な塩化第二鉄を用いてエッチングを行うことが可能であるため、量産工程の早期立ち上げに貢献。高性能(低反射・高変色耐性)と使いやすさ(エッチング性)を両立させた「γ1(ガンマワン)」を「STARMESH」シリーズのラインナップに追加することで、大同特殊鋼が提供する黒化膜用ターゲット材「α1(アルファワン)」、「β1(ベータワン)」で実現したソリューション提案力をさらに強化させ、今後の需要拡大が見込まれる車載用タッチパネル(図1)や大型タッチパネル、曲面タッチパネルの分野において、メタルメッシュ用ターゲット材の拡大が目指されている。
背景
現在スマートフォンなどに使用されているタッチパネルには、透明導電膜である ITO*6が使用されている。ITOは酸化物であるため導電性は銅などの純金属に劣り、硬く曲げる動作に弱いため、大画面形状や曲面形状のタッチパネルには向かない。
そこでITOに代わり、導電性および柔軟性に優れるメタルメッシュの普及が進んでいる。メタルメッシュに主に用いられる銅の導電膜は金属光沢があり、外光を反射するためタッチパネルの視認性が悪化してしまう。そのため銅の上に黒化膜を重ねて反射を抑制する必要があり(図2)、従来は銅酸化物が黒化膜として用いられてきた。さらに電子黒板などの大型表示装置や、大画面化が進む車載用タッチパネルは、買い替え期間や耐用年数が長いため、より高い耐久性が要求される。しかしながら、従来の銅酸化物の黒化膜は長期間過酷な環境にさらされると変色し、タッチパネルの視認性が悪化する課題が残っていた(図3)。そのため、より変色耐性の高い黒化膜が求められている。
特長
①低反射率:銅(Cu)の導電膜の可視光平均反射率を 10%以下に抑制できる黒化膜を成膜可能(図4)
②高変色耐性:黒化膜は環境試験後(温度85℃、湿度85%、1000時間)も変色なし。
③エッチング性:銅エッチングに一般的な塩化第二鉄でエッチングが可能
④ITOと同じプロセス(スパッタリング法)で成膜可能
用途
■タッチパネル用途
車載用タッチパネル、大型タッチパネル、曲面タッチパネル、折り畳みタッチパネル
■その他の用途
5G用透明アンテナ、5G用透明ノイズシールド、光学センサー用透明ヒーター等
用語説明
*1 メタルメッシュ
タッチパネルの入力検出などに用いる透明導電薄膜を、従来のITOから数マイクロメートル幅の網目状の金属に置き換える技術
*2 黒化膜
導電膜の上に重ねることで可視光反射率を低下させる薄い膜
*3 ターゲット材
対象とする電子基板に原子レベルで金属や合金、金属酸化物等などの物質を付着させ、薄い膜を形成するスパッタリング法に用いられる電子部材
*4 色の変化
環境試験前後の L*a*b*色空間から算出した色差(ΔE*ab)を比較した。2.3 以上で人間が変色を認識できる。
*5 エッチング
基板上に堆積した膜の一部を薬液で溶かして、メタルメッシュ形状に加工する技術
*6 ITO
透明導電膜、酸化インジウムスズ(スズドープ酸化インジウム)(IndiumTin Oxide)の略称