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川島礼二郎の海外技術情報

 いよいよSVOLTによる新しいNMXバッテリーの量産が開始された。2021年1月には、同社Jintan工場で10tのコバルトフリーカソード材料のパイロット生産が完了していたが、4月から、これの大量生産が開始されたのだ。

 本題に入る前に今一度、SVOLTについて復習しておこう。同社は中国江蘇省に本社を置くグローバルハイテク企業だ。中国の完成車メーカー・長城汽車から電池開発部門が分離独立して2018年に設立された。EVとエネルギー貯蔵システム用リチウムイオンバッテリーとバッテリーシステムの開発・製造を行っている。ドイツに複数の生産拠点を置いており、彼の地におけるバッテリー需要に応えようとしている。

 そして昨年、SVOLTは2021年半ばにコバルトフリーバッテリーを市販車に搭載する予定であることを発表していた。当時のリリースによると、同社製NMXバッテリーはHとEという2種類のプラットフォームで開発されており、Hプラットフォームの226Ahバッテリーはハイエンドモデル用。同社第3世代高速ラミネーションプロセスを使用した226Ahバッテリーは235wh/kgの重量エネルギー密度を備え、その寿命は3,000サイクルを超える、とされていた。別の報道では、同社製NMXバッテリーはスピンアウト元となった長城汽車で繰り返しテストされており、航続距離は880kmに到達した、と言われていた。

長城グループのORA CherryCatにNMXバッテリーを搭載

 さて本題。SVOLTは当初、75%のニッケルと25%のマンガンの、2つのサイズのNMXバッテリー(115Ahと226Ah)を製造しているという。最も高価なカソード要素の1つである重金属コバルトを完全に排除し、ニッケル含有量を減らしたため、SVOLTのコバルトフリーNMXセルは持続可能であるだけでなく、従来品よりも約5%安価である。この価格特性により、幅広いミッドレンジ市場に特に適している。

 SVOLTは、新技術の助けを借りて、従来のNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)バッテリーセルと比較して、NMXセルのライフサイクルを大幅に改善することにも成功した。その結果、バッテリーは2,500回以上の充電サイクルを達成できる。

 長城汽車が有する次世代EVブランドであるORAのチェリーキャットは、SVOLTのNMXバッテリーを搭載した最初の電気自動車となる。2023年の終わりから、この新しいNMXバッテリーはヨーロッパ市場向けに、ドイツ・ザールラント州の工場でも生産できるようになるという。残念ながら、量産を開始されたNMXバッテリーの性能は公開されていない。続報が入ったら、お伝えして行こう。

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