トヨタ「MIRAI」の技術を活かした水電解装置の稼働をデンソー福島工場にて開始。「水素地産地消」モデル構築を目指す

トヨタ自動車が、2021年6月以降、福島県と共同で「福島発」の水素・技術を活用した新たな未来のまちづくりに向けた活動を進めていることを発表した。この一環としてトヨタは、デンソーグループと連携して、工場におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーとあわせて水素の利活用に取り組んでいる。

水電解装置の開発背景

今回、トヨタは「MIRAI」のFCスタックなどを流用して、水を電気分解して水素を製造する水電解装置を新たに開発し、今後の普及促進に向けた技術実装の場として、本年3月にデンソー福島の工場(以下、デンソー福島工場)において稼働を開始することを発表した。今後、この水電解装置で製造したクリーンな水素を工場ガス炉で自家消費する「水素地産地消」モデルの構築を目指して取り組みを加速させていく。

トヨタはカーボンニュートラルの実現に貢献するために、CO₂排出量の削減を目指した取り組みを進める中で、水素を重要な燃料と位置づけている。こうして、乗用・商用のトラックやバスを含めた燃料電池自動車(FCEV)だけではなく、FC定置式発電機の開発・実証運転などFC製品の普及による水素利活用の促進を目指し、水素を「つくる/はこぶ/ためる/つかう」の各領域において、様々な業界のパートナーの方々との取り組みを進めている。

これまでトヨタは、FCEVやFC定置式発電機、工場での製造時などで水素を「つかう」とともに、水素運搬のためのFCトラックの開発・製造など「はこぶ」活動を進めてきた。今回の水電解装置の開発による水素製造に加え、今後トヨタは、タイでの家畜の糞尿から発生するバイオガスを活用した水素の製造に取り組むことにより、「つくる」領域での選択肢の拡大への貢献を図っている。

水電解装置の特徴

「MIRAI」やFCバス「SORA」に搭載しているFCスタックを流用した水電解装置は、トヨタが長年にわたるFCEV開発で培ってきた技術、世界の様々な使用環境の中で蓄積してきた知見・ノウハウを活かして新開発されたものである。

  1. 水を電気分解するスタック(水電解スタック)に使用しているセルは、2014年12月の初代「MIRAI」発売以降、700万枚以上(FCEV約2万台分)の量産・使用実績に裏付けられた高い信頼性を確保。
  2. トヨタは、FCEV用に開発し初代MIRAI以降搭載しているスタックのセパレーターにチタンを採用し、耐食性の高いチタンの特性を活かして水電解装置に求められる耐久性の向上を追求。長期にわたり安心してお使いいただけるよう、約8万時間の稼働を経ても初期とほぼ変わらない性能維持を目指して開発。
  3. 水電解スタックの生産過程において、FCEV用FCスタックの部品及びFCスタック生産設備の90%以上の流用/共用が可能であり、これによる量産効果により、今後、普及可能なコストレベルを追求。
    さらに、長年にわたるFCEV開発で培ってきた技術・知見・経験を活かすことにより開発期間の大幅な短縮が可能。

水電解装置の概要

外観(デンソー福島工場での設置状況)
水電解装置の内部構造
サイズ(縦×横×高さ)約2.3m×約5.8m×約2.8m
水素製造能力約8kg/時間
水素製造エネルギー53kWh/水素製造1kg
スタック種類固体高分子形
水電解装置の構成
スタックの使い方 : 燃料電池(FC)と水電解

トヨタは、この水電解装置に搭載しているスタックなどを、3月15日(水)~17日(金)に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「FC EXPO(水素・燃料電池展)」に出展する。

キーワードで検索する

著者プロフィール

Motor Fan illustrated編集部 近影

Motor Fan illustrated編集部