本装置はアサヒグループ研究開発センター(茨城県守谷市)内に設置され、同センター内で回収されたCO₂を用いて、工場内のカーボンリサイクルに向けて、国内食品企業で初となるメタネーション実証試験に利用される。これは、IHIとして初のメタネーション装置の納入となる。
日本政府が2050年カーボンニュートラルの実現を宣言する中、その具体策の一つとしてCO₂から燃料を合成するメタネーション技術が期待されている。メタネーションは、CO₂と水素からメタンを合成する手法。メタンは都市ガスの主成分であるため、メタネーションが実現すれば、配管やガスコンロなど都市ガスの既存インフラを活用でき、都市ガスが普及している広い地域でCO₂を削減することが可能。また、工場で排出されるCO₂から合成したメタンを、天然ガスの代替燃料として工場内で利用することも可能なため、工場のカーボンニュートラル化にも寄与する。
IHIはこれまでに、高性能で長寿命な触媒を開発するとともに、石油化学用リアクターなどの反応器設計技術を生かし、メタネーション反応時の発熱を制御し、効率的に反応するメタネーション装置を開発した。2018年度には共同研究先のシンガポールの研究機関にデモンストレーション機を、2019年度には当社横浜事業所にてベンチスケール試験機を設置し、触媒性能を確認した。そして2020年度には、太陽光発電設備と水素製造設備を備えたそうまIHIグリーンエネルギーセンター(福島県相馬市)で、合成メタンを連続的に製造する実証試験を行い、システム性能と合成メタンの品質の高さを確認している。
アサヒクオリティーアンドイノベーションズ社は、ボイラ排ガスの中からCO₂を取り出すCO₂分離回収装置を保有しており、回収されたCO₂と水電解装置で製造された水素を用いたメタネーション実証試験を実施する。10,000時間にわたる実証試験により、本装置のシステム性能やメタンの品質などを確認し、また、工場での燃料利用など将来的なアサヒグループ内でのカーボンリサイクルへの展開の可能性についても評価される。