本試験では、液体水素昇圧ポンプの起動・停止運転が約300回にわたって実施され、燃料電池バス1,100台分※3に相当する約30トンの液体水素が昇圧された。分解点検の結果、消耗品を含む各種部品の健全性や耐久性が確認された。また、本試験で使用された水素は実際にFCVの燃料に利用され、CO2排出削減にも寄与している。
液体水素昇圧ポンプは、吐出圧力90MPaで1時間当たり160kgの大流量運転を継続的かつ安定的に達成している。また、ボイルオフガス※4による水素ロスが極めて少なく、水素ステーション運営の経済性を高めることができる。今後、同ポンプは米国をはじめとする世界各国の液体水素ステーション市場へ投入される予定となっている。
本格的な水素社会の実現には液体水素が不可欠であり、FCVへの水素燃料補給を担う液体水素昇圧ポンプの需要が今後拡大していくものと考えられている。
【注釈】
※1 水素ステーション向け90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプ:
液化水素昇圧ポンプは、水素を液体状態で昇圧することによって、気体の水素を昇圧する方式に比べて、エネルギー消費量を約4分の1に抑えることができ、水素社会における環境負荷低減に貢献する。三菱重工は、原子力発電所向けをはじめとする各種産業用ポンプ納入実績で培った技術と経験の下、90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプを開発した。
※2 FEF社の水素供給施設:
FEF社は液体水素を使った試験を実際の水素ステーション規模で実施することを重要視し、カリフォルニア州リバモアに実際の水素ステーションと同じ運転条件下で何時間も連続して実施可能な水素供給設備を整備している。
※3 FCバス1台当たりの液体水素充填量を28kgと想定した場合
※4 ボイルオフガス:
外部からの熱により液体水素が気化・蒸発して発生する水素ガス