目次
共同実証の概要
本実証では、三菱自動車が販売するプラグインハイブリッドEV「アウトランダーPHEV」のリユースバッテリーをバッテリーキューブに搭載し、その実用性が検証される。具体的には、広域災害等による停電を想定し、日立ビルシステムのV2X※1システムとキューブをCHAdeMO V2H※2コネクタで接続し、日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」を、キューブからの給電で駆動する。これまで実績のあるV2H機能搭載の電動車からの給電に加え、給電を組み合わせることで企業における災害発生時の、継続的なバックアップ電源確保への貢献が目指される。再生可能エネルギーの有効活用に向けて、電動車やバッテリーキューブと太陽光パネルなどを連動させるエネルギーマネジメントの共同実証も行なう予定としている。さらに、電動車バッテリーを再利用するだけでなく、その後の再資源化に至るまでの構想を検討し、電動車バッテリにおけるサーキュラーエコノミーの実現をめざす。
これまで、三菱自動車では、電動車のパイオニアとして培ってきた知見を生かし、電動車バッテリーの寿命を延ばすことに加え、リユースバッテリの活用を進めている。2023年4月からは、岡崎製作所（愛知県岡崎市）の所内に、プラグインハイブリッドEV「アウトランダーPHEV」のリユースバッテリーを活用した自律型街路灯を設置し、実証実験を行っている。
日立は、日立ハイテクとともに、バッテリーキューブの事業化に向けた検討を進めている。2023年6月にはセブン‐イレブン・ジャパンと連携し、バッテリーキューブを「セブン‐イレブン三郷彦成2丁目店」に設置し、実証実験を開始している。
「バッテリーキューブ」の特長
右図:バッテリーキューブに搭載されているリユースバッテリ
日立が2021年から開発を進めるバッテリーキューブは、電動車のリユースバッテリーを活用した可動式蓄電池となっている。主な特長は以下の通り。
- CHAdeMO V2H規格を採用することにより、従来の定置型蓄電池と比較して、設置工事が簡易となり、安全かつ柔軟に店舗などの電気設備と脱着できるため、設置やメンテナンスの作業効率を大幅に向上することができる。
- クラウド上の遠隔監視システムによりキューブに搭載されたリユースバッテリーの稼働状態をリアルタイムに管理し、状態に応じた運用・メンテナンスが実現されている。
- 様々な車種（乗用車・トラック等）、電動車メーカーのリユースーバッテリ搭載を想定した設計が行われている。今後カーボンニュートラル実現に向けて電動車を導入する企業・自治体は、車の動力としてバッテリーを使用したのちに、バッテリーキューブに搭載し自社のエネルギー用途に使用することで、電動車バッテリの資源循環モデルを構築することができる。
【注釈】
※1 V2X(Vehicle to X)：自動車とさまざまなモノとの接続や相互連携を行う技術の総称。エネルギー分野においては、電気自動車と、住宅やビル、電力網(グリッド)などをつなぎ、電力の相互供給を行うことを可能にするV2Xシステムの実用化が進められている。
※2 CHAdeMO V2H：CHAdeMO協議会が標準規格として提案する急速充電方式「CHAdeMO(チャデモ)」のV2H(Vehicle to Home)用規格。