三菱重工、5.75MW発電用ガスエンジンの単筒試験機で水素混焼率50%までの安定燃焼を実現

三菱重工グループの三菱重工エンジン&ターボチャージャ(MHIET)は、5.75MW発電用ガスエンジンの単筒試験機での水素混焼試験を実施し、定格相当出力において水素混焼率50%(体積比)までの安定燃焼を確認したことを発表した。今後、プラント補機や制御仕様なども含めた生産化に向けた仕様を決定し、2025年度中の商品化が目指される。

水素混焼時のCO2排出係数:0.27kg-CO2/kWhレベルの実現見通しを確立

MHIETは、三菱重工グループの2040年のCO2排出量ネットゼロ達成を掲げた「MISSION NET ZERO」を実現する製品開発の1つとして、カーボンニュートラル実現に向けたロードマップで掲げる、水素エンジンの開発と商用化に向けた取り組みを強化している。本実証試験は、幅広い産業界でコージェネレーションシステムとして使用されるKUガスエンジンの低炭素化を実現するために実施されたものである。

水素混焼により燃焼が早くなることで、ノッキングやプレイグニッションが発生する課題に対して、本実証試験では空気過剰率などの調整による安定燃焼の実現に取り組んでいる。その結果、コージェネレーションシステムとして発電と蒸気を合わせ効率を高めた総合効率仕様において、定格相当出力で水素混焼率50%までの安定した燃焼が実証された。

また本実証試験を通じて、KUガスエンジンにおける、発電および蒸気利用における水素混焼時のCO2排出係数:0.27kg-CO2/kWhレベルの実現見通しが確立された。同レベルは、持続可能な経済活動を分類する「EUタクソノミー」規則における天然ガスに係る技術的基準において、移行期の活動に分類されている基準である。なお、KUガスエンジンは、既に実用化している全蒸気仕様(ガスエンジンの排ガスから生成される蒸気だけでなく、エンジンの冷却水を熱源として発生させた蒸気も活用する仕様)においても、CO2排出係数:0.27kg-CO2/kWhレベルが達成されており、水素混焼を適用することでCO2排出係数のさらなる低減が見込まれるため、全蒸気仕様の水素混焼化についても取り組んでいく。

※プレイグニッション:
異常燃焼の種類であり、ノッキングは点火時期が早すぎる場合や圧縮比が高すぎる場合に、通常の燃焼開始後に未燃混合気が圧縮されることで自着火して燃焼室内の圧力が急激に上昇する現象。またプレイグニッションは、通常の点火の前に、混合気が自着火して燃焼室内の圧力が急激に上昇する現象である。いずれも頻発するとエンジン内部部品損傷の原因となることがある。

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