東レ、ステンレス鋼に匹敵する高熱伝導性・耐寒性・耐薬品性を持つ高強度フィルムを創出

東レは、ステンレス鋼に匹敵する高強度を有するプラスチックフィルムを創出したことを発表した。本フィルムは、高分子材料の特長である軽量性・絶縁性・柔軟性を維持しながら、引張強度が最大1200 MPaと金属材料に匹敵する高強度を実現している。

エンジニアリングプラスチックの一種である超高分子量ポリエチレン(以下、UHMWPE)は汎用のポリエチレンと比較して分子量が10倍大きく、強度に優れることから高強度繊維の原料として使用されている。しかしながら、UHMWPEはその分子量の大きさから分子鎖の絡み合いが非常に大きく、成形加工性が低いことから、従来二軸延伸による高強度フィルム化は困難であった。

この課題に対し、東レは独自の押出・二軸延伸技術により、UHMWPEの分子鎖を二次元方向に高度に配向させたナノ構造を実現することに成功し、ステンレス鋼に匹敵する高強度フィルムを創出した。工業用プラスチックフィルムとして一般的に使用されるポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムと比較すると、本フィルムは引張強度が2倍以上であり、プラスチックフィルムとして最高の強度を有するアラミドフィルムと同等となる。UHMWPE原料の特性上、耐寒性にも優れていることから、超電導・宇宙環境等の極低温環境でも使用可能であり、高強度を活かして部材の軽量化・省スペース化に貢献する。

また、本フィルムは上記のナノ構造により面内方向の熱伝導特性に優れており、PETフィルムと比較して面内熱伝導率が10倍以上の最大18 W/m/Kと、高分子フィルムとして最高レベルの高面内熱伝導性を有している。フレキシブルデバイスなど、小型化・軽量性・絶縁性・柔軟性が求められる用途での放熱材料としても使用が可能。

さらに、近年UHMWPEは環境や人体への影響が懸念される有機フッ素化合物(PFAS)の一種であるフッ素樹脂の代替材料として注目を集めている。本フィルムもフッ素樹脂同等の耐薬品性・低吸湿性・低誘電性等の特性を有しており、薬品に晒される半導体製造工程での耐薬品保護用途に使用が可能である。

なお、本フィルムは1月31日~2月2日に東京ビッグサイトで開催される、ナノテクノロジーに関する世界最大級の国際総合展示会、nano tech 2024に出展される予定となっている。

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