新型が搭載するのはFA24型2.4ℓ水平対向4気筒ターボ。

FA24型は、北米専用車である大型SUV、アセントが搭載しているエンジンだ。2.4ℓ・水平対向4気筒・ショートストローク・DOHC・直噴・ツインスクロールターボという構成は、新型WRX S4も変わらない。アセント用とどこが違うのか?

「骨格とハードウェアは変わっていませんが、制御を変えています。北米用は燃料がAKI87(日本のRON91=レギュラーガソリン相当)なのに対して、WRX S4はプレミアム(RON100)に変更しています。当然、それに合わせて制御は最適化、WRX専用チューンを施しています」(開発者)

だという。また、トランスミッションに新開発の「スバル・パフォーマンス・トランスミッション」を組み合わせているので、トランスミッションとの協調制御もアセント用とは異なるところだ。

注目は、前型よりも排気量はアップしているにもかかわらず、最高出力/最大トルクは下がっているという点だ。

FA24型2.4ℓ水平対向4気筒ターボ 
エンジン形式:2.4ℓ水平対向4気筒DOHCターボ
エンジン型式:FA24
排気量:2387cc
ボア×ストローク:94.0mm×86.0mm
圧縮比:10.6
最高出力:275ps(202kW)/5600rpm
最大トルク:375Nm/2000-4800rpm
燃料供給:筒内直接燃料噴射
燃料タンク:63ℓ
燃料:プレミアム
前型WRX S4が搭載していたFA20DIT型2.0ℓ水平対向4気筒ターボ
エンジン形式:2.0ℓ水平対向4気筒DOHCターボ
エンジン型式:FA20
排気量:1998cc
ボア×ストローク:86.0mm×86.0mm
圧縮比:10.6
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:400Nm/2000-4800rpm
燃料供給:筒内直接燃料噴射
燃料タンク:60ℓ
燃料:プレミアム

新型FA24ターボ
最高出力:275ps(202kW)/5600rpm
最大トルク:375Nm/2000-4800rpm

前型FA20ターボ
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:400Nm/2000-4800rpm

である。エンジンの排気量によらずに、トルク特性を横並びに評価するために用いられる理論的な数値である。BMEPを比べると

新型FA24ターボ=19.742bar
前型FA20ターボ=25.158bar

で、この数値からも明らかに新型のスペックは控え目だ。

MF:前型よりパワー、出してないですよね? あえて、ですか?
「そうですね。今回は低回転からトルキーに、パワーよりもレスポンス側に振っています。新型はターボも現行の2.0ℓのターボと変えているところがあります」(開発者)

ターボチャージャーがツインスクロール式であるのは、前型と同じ。サプライヤーも同じハネウェルである。
「過給圧をコントロールするバルブを電制化しました。これで過給圧をより速く、リニアに上げられるようにしました。低速からのトルクをしっかり出すのと、レスポンスしっかり上げていく。そこを重要視しています」

タービンへ流れ込む排ガスの流量をコントロールするウェイストゲートバルブを電子制御式に。また吸気側の圧力をコントロールするエアバイパスバルブも電子制御式にして、より緻密に過給圧を制御する。低速レスポンスが大幅に向上している。

新型WRX S4がデビューしたということは、この先にさらにハイパワーの「WRX STI」あるいは、「WRX STI version」が出てくるのか? そうなると、WRX S4が275ps/375Nmより高スペックな仕様が存在するのか、気になるところだ。ちなみに、先代のWRX STI(EJ20ターボ)は、308ps/422Nmだった。

MF:きっとこの後、もっとすごいモデル(STI)があるかもしれない。それにはまた制御というか過給圧で対応できるのですか? それとももっとグッと手を入れなといけないんですか?

「将来的な商品企画については、お話できません(笑)。ただ新型のWRXS4のエンジンとしては最大限、出力もトルクも出していますし、クルマとしての動力性能の求めるところに対しては最適なパワーユニットだと思っています。出力上げようと思えばエンジンの骨格を見直せばどんどん上げられます。エンジンの重量を重くすれば出力上げられるんですが、そうするとクルマとしてのバランス、前後の重量配分が崩れてしまします。今回は、そういうトータルなバランスを重視して、最適なチューニングを行なっています。もうひとつポイントとしては、WRX S4はより日常とか低速とか低回転とかのレスポンスを重視しています。WRX S4としては自信を持って仕上げたエンジンです」

スバルの水平対向エンジンのストロークは、
FB型/CB型:90.0mm(FB16型は82.0mm)
FA型:86.0mm
だ。

λ=2でリーン燃焼するスバルの1.8ℓボクサーターボ「CB18型」とはどんなエンジンか? レヴォーグ搭載の新エンジン リーン燃焼のポイントは?(後編)

熱効率40%超を実現した新開発1.8ℓ水平対向4気筒ターボエンジンは技術的見所が多い。画像ギャラリー(画像をクリックすると画像ギャリーに飛べます)に、写真もできる限り多く掲載した。 TEXT◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi〕PHOTO◎山上博也(YAMAGAMI Hiroya)

https://motor-fan.jp/tech/article/1051/

ボンネットフード開けてエンジンを眺めてみる。ボンネットには、エアインテークがあけられている。エンジン上部には空冷式インタークーラーが配置されている。「衝突案件、レイアウトの要件もあって、ここがスペース的には一番いい」のだという。実際に覗き込んで見ると、エンジンはサイドフレームもあったギリギリのスペースに収められている。

インタークーラーの搭載位置は、例によってここ。

「工場でエンジンを搭載する時も通常のラインが流れているなかでエンジンを上げなきゃ(搭載する)いけないので、そこのクリアランスのせめぎ合いはかなり厳しいです」という。

燃費は、排気量が2.0ℓから2.4ℓに上がったが、約8%改善しているという。また、WRXとして初めてアイドルストップが採用されたのも進化ポイントだ。

スポーツモデルで、エンジン出力が前型より下がるフルモデルチェンジは、異例だ。ここを訊くと

「わかっていただける方にはわかっていただけるんじゃないか考えています。そういう時代でもあるし、我々が狙ったパフォーマンスは、乗っていただければおわかりいただけるんじゃないかと思っています。嘘偽りなく真面目に、燃費も向上させて時代に合わせたエミッション適合をしていて、排気量は上がっていますが時代に求められるベストバランスを実現したと思っています。先入観持たれると違和感かもしれませんけど、まずは乗ってみていただきたいですね」とのことだった。

2021年に登場するスポーツセダンとして、新型WRX S4が搭載する純粋なターボエンジン、FA24ターボ。スバル開発陣が込めた想いは、いつも通り熱かった。

新旧比較 新型スバルWRX S4と現行WRX S4、ボディサイズ、デザイン、 パワートレーン、はどう進化したか?

ついに日本でも新型スバルWRXがデビューした。まずは現行モデルと比較してみよう。また新型の全ボディカラーも見てみよう。

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新型トヨタGR86/スバルBRZのエンジンは、「究極の自然吸気水平対向エンジン」を目指したスバル技術陣渾身の作だ

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