「純正が保安基準値オーバーだった!?」知られざるGRスープラ用アフターマフラー開発秘話

パーツメーカーの威信に賭けてとしてHKSが新加速騒音試験を初攻略

保安基準適合のGRスープラ用マフラーが発売!

アフターマーケットにおけるGRスープラ用の車検対応マフラーの初登場は、モデルデビューから約半年が過ぎた2020年3月のこと。“HKS”のスーパーターボマフラーである。今回は、その知られざる“半年間”の中身に触れつつ、難易度が増し続けるアフターマフラー開発の今に迫っていこうと思う。

HKSでは2019年、GRスープラのデビューと同時に海外向けのマフラーから開発を開始。国内用は夏頃からとなったが、試作品を装着してテストしてみると、JQRが行う従来の加速騒音試験では、どうやっても数値が保安基準内に収まらない…という事態に直面した。試しにノーマルで同様のテストをしても、試験結果的には保安基準の規制値以上となってしまうのである。

そう聞くと、“純正も車検不適合なのか?”と思うが、この現象のカラクリが新車(市街地加速騒音試験)とアフターパーツ(全開加速騒音試験)での加速騒音測定方法の違いなのだという。その対応としての選択肢は3つ。

1つ目は、従来のアフターマフラー基準に合わせノーマルよりも静かな(容量が小さくパワーを引き出せない)マフラーの開発を行うこと。言うまでもなく、それでは製品化する意味がないため却下。

2つ目は、欧州連合指令適合表示のeマーク取得。この方法ならスポーツマフラーらしいサウンドが可能となるし、日本でも保安基準適合扱いとなる。しかし、ドイツでテストを受けなくてはならないため現実的ではない。

そこでHKSが挑んだのが、3つ目の選択肢だった。JARI(日本自動車研究所)のテスト設備を用いて、新車と同様のテストを受けるという方法。

2019年5月の法改正で、アフターパーツメーカーにも門戸が開かれたとはいえ、様々なパターンでの加速走行や定常走行など複雑な試験内容の把握と、それに対応させたマフラー開発は決して簡単なものではなかったという。

このプレートが新たな試験に通過した証だ。

そうして遂に完成したのが、GRスープラRZ用のスーパーターボマフラー。国内のアフターパーツメーカーとしては初となる市街地加速走行騒音試験に合格したもので、テールサイレンサーに添付された“JARI”刻印入りのプレートがその証だ。“JARI10200001P”は2020年の第1号合格品ということを示している。

アフターマーケットで初となる保安基準適合のGRスープラ用マフラーだ。

マフラーレイアウトは触媒以降のフルエキゾーストタイプで、パイプ径は85φ→75φ×2(純正80φ→70φ×2)となっている。近接音量は純正の85dBに対し、スーパーターボマフラーは87dBの設定だ。

フクロウの羽根からヒントを得たスリット入りテール。

スーパーターボマフラー専用のスリット入りテールはフクロウの羽根からヒントを得たもので、約2dBの消音効果や整音効果を発揮する。GRスープラのために新たに製作した110φの左右出しだ。

完全ストレート構造を採用。

パイプの絞りなどのない完全ストレート構造のサイレンサーは、シリーズ最大容量となるGRスープラ専用品。サイレンサーに接続される曲げパイプも、従来品にはない曲げ角度のものが採用されている。

ジョイントは差し込み式だ。

サスペンション変更によるローダウン時も最低地上高を確保できるよう、パイプの接続部分はフランジ式ではなく差し込み式を採用しているのも拘りだ。

純正の排気バルブが移設可能。

GRスープラ用のスーパーターボマフラーは、純正に装備されている排気バルブ(駆動用モーターのみ)のボルトオン移設が可能。排気バルブによるノーマル/スポーツの音量切り替機能も、そのまま使えるのもうれしい。

マフラー開発を担当するHKS赤塚さん。

開発に携わったHKSの赤塚さんは「難易度は非常に高かったです。新たな試験を受けるにあたって、その内容の把握などにとにかく時間を要しましたからね。でも、その時の経験が今に活きていることは言うまでもありません。ちなみに、GRスープラのスーパーターボマフラーはパワーチューニングにも対応できる抜けの良さと、音量を抑えながらもスポーツマフラーらしいサウンドを奏でることを追求しています。自信作なので、ぜひお試しください」と話す。

スーパーターボマフラーの価格は35万8000円。対応モデルは、DB22、DB42、DB02、DB06となっている。

●問い合わせ:エッチ・ケー・エス 静岡県富士宮市北山7181 TEL:0544-29-1235

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【関連リンク】
エッチ・ケー・エス
https://www.hks-power.co.jp/

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