「そのRX-7は伝説と呼ばれた」RE雨宮GT300マシン完全解剖【Vol.01】ボディ編

色褪せることなき伝説のナンバー“7”

資金力に限りのある完全なプライベートチームながら、16年に渡って国内最高峰のJGTC〜スーパーGTでメーカーワークス勢と真っ向勝負を繰り広げ、見事シリーズチャンピオン(2006年)にまで登り詰めた“RE雨宮レーシング”。そんな偉業を達成したRE雨宮GT300マシン(2007スペック)のメカニズムを改めて振り返っていきたいと思う。(RE雨宮レーシングより抜粋)

分岐点は2004年のパイプフレーム化

2004年の第2戦で実戦投入されたパイプフレーム仕様のRX-7。従来の市販車ベースから一気に現代風の純血レーシングカーへと姿を変え、ファンを驚かせた。

2004年の第2戦で初めて姿を見せたパイプフレーム仕様のRX-7。キャビン部のみ純正モノコックを残し、前後を鋼管フレームで構成したマシンだ。製作を担当したのは、GTカーのメンテナンスをRE雨宮から一任されているレーシングガレージ、“RSファイン”。

この革新的変貌の目的は、低重心化と空力の追求だ。平たく言えば、現代のレーシングカーへと進化させるため。それ以前のボディは限りなく市販車に近いもので、現在のような戦闘力はなかった。

自動車メーカー直系のコンストラクターが製作するパイプフレーム車との違いは、何と言っても“長年使用する”というコンセプトで作られていることだろう。重量増を覚悟の上、理想よりもワンランク強度の高い素材を使用して組まれているのだ。

レースでは致命的とも思われる車重を犠牲にしてまで得た強靭さによって、これまでに2回リタイアを強いられるクラッシュを経験していながらも、3年間経過した今もなおトップランカーとして君臨していられるほどタフなポテンシャルを誇る。

また、フロントのサイドメンバーやリヤ周辺で、一部ノーマルパネルをそのまま使用するのもこのマシンならではの手法だ。これは、クラッシュテストが出来ないための苦肉の策で、クラッシュ時の緩衝材として確保されたストラクチャー。どちらもプライベーターチームらしい発想で、理に適ったレーシングカーメイクと言える。

パイプフレーム化により前後のサスペンションアームはボディに直接取り付けられ、これにより車高は市販ベース時よりも80mmもの驚異的なローダウン化に成功。一目で分かるその低重心化された様は、市販車とは全く次元の異なる、純然たるレーシングカーそのものだ。

Detail Check

インテリア(メーター/操作系)

レース中のロガーとしても機能するモーテックのダッシュロガーを装備。レース中はシーケンシャルミッションのシフトポジション、車速、回転数、ラップタイム、水温、油温、油圧、燃料計を表示。メーター下の3つのランプは、シフトタイミングを緑と赤いランプで示すインジケーター。また、ステアリングはより軽い操作感を求めてレーシングカーとしては大径の350φを採用する。左のスイッチでパッシング、右は無線、その上のスイッチはウインカーだ。

インテリア(センターコンソール)

カーボンのパネルには、走る上で必要最低限の装備のスイッチが収まる。パワーウインドウやヘッドライトの他、ピットロードで60km/hに合わせてくれるスピードリミッター、イグニッションを一発でカットオフするキルスイッチ等が整然と並ぶ。手前はシーケンシャルミッションのシフトレバーで、手前に引くとアップとなる。

インテリア(A/B/Cペダル)

レーシングカーのペダルは市販車とは異なり、床側に支点を持つ通称オルガンタイプだ。右からアクセル、ブレーキ、クラッチという並びで、ブレーキはマスターバックが無いため渾身の力で踏まなければ止まらない。クラッチはスタートとシフトダウンの時だけ踏む。ちなみに、シフトアップはエンジン回転を合わせてアクセルを一瞬抜くだけだ。

インテリア(ドライバーズシート)

シートはスポーツシートの名門ブリッドから競技用としてリリースされているマキシスIIを採用。カーボンアラミド製で、軽さと剛性を両立したハイエンドモデルだ。もちろん、レース用のため乗降性よりもホールド性が最優先されている。雨宮の歴代GTカーは、ブリッドのフルバケットシートが装備されてきた。

インテリア(フューエルタンク)

リヤハッチ内は燃料系のシステムで満載。赤い部分に給油ノズルを挿せば、レースガスはそのまま燃料タンクへ。フューエルポンプは3基装備。当然、燃料の偏りによるポンプの空打ちを防止するコレクタータンクも備える。この画像では確認できないが、燃料タンクの中央には穴が開いていて、プロペラシャフトがその中を通るという特殊な構造となっている。これもパイプフレーム化がもたらした構造だ。

サスペンションアーム

メンバーレスのパイプフレーム化により、サスペンションアームはボディ(フレーム)に直接取り付けられる。前後ともダブルウィッシュボーン構造はそのまま踏襲しながらも、アーム類は完全に新設されたものとなる。メカニカルグリップを最大限に稼げるよう、大幅にロングスパン化(とくにロアアーム=100mm以上)されているのが特徴だ。

アップライト

サスアームの先端に位置し、センターロックハブやブレーキキャリパーを支える足回りの主要パーツ。アルミ製で、もちろんRE雨宮RX-7専用設計。何気なく見えるが、じつはこのパーツの走りへの寄与度は高く、ジオメトリーに大きな影響を与えるため設計にはかなりのノウハウと技術力を要するという。

ダンパー&スプリング

クァンタムの別タンク式ショックに、スウィフトのスプリング(20kg/mm基準)を組み合わせる。ロールセンター等、ジオメトリーの設定である程度の挙動を抑え込むため、ショック減衰力、スプリングともイメージするほどハードではない。フォーミュラのように軽いボディではないため、セッティングもそこまで難しくないそうだ。

ブレーキキャリパー&パッド

キャリパーはフロントがapレーシングの異径6ポット、リヤはストップテックの異径4ポットを使用。パッドはカーボンメタル材を使ったプロジェクトミュー製で、パッド厚は15mmと市販品よりも厚い。全レース中、ツインリンクもてぎだけはブレーキの負担が大きいため2セット使い、それ以外のレースでは予選と決勝で1セットだ。

ブレーキローター

ディスク部とベルハット部が分離する2ピースのフローティングローター。フロント380mm、リヤ355mm。前後でスリットが異なるのはパッド摩材による相性の関係。ローターへの負担はツインリンクもてぎが一番で、逆に負担が少ないのはセパンや鈴鹿、オートポリス。交換サイクルは、フロントが1レースごと、リヤが2〜3レースごと。

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