「日本最速NSXの残像」C30A改ツインターボを縦置きした魔改造スペックの全て

戦闘力はもはやスーパーGTマシン級

鈴鹿1分59秒台、筑波53秒台は伊達じゃない!

時代や流行に左右されることなく、長年NSXでサーキットタイムアタックを続けてきた鈴鹿の“エスプリ”。言わずと知れた老舗チューナーだ。

マシン製作開始から15年目を迎えた2019年、ドライバーに谷口信輝選手を迎え、ついに鈴鹿サーキットで目標としてきた2分切りを達成。1分59秒691、この数字は2WDチューニングカーの最速記録(当時)であり、スリックタイヤを履くスーパーGTマシンにも劣らないタイム。続けて挑んだ筑波サーキットでも53秒台に突入し、まさにステージを選ばない圧巻の速さを見せつけたのだ。

チューニングは全方位に及んでいるが、ここで改めてマシンスペックを見ていこう。

まずエンジンは、スリーブ方式の前期型C30Aエンジンをベースに、戸田レーシングのロングストローククランクシャフトを使って排気量を3.2L化。これまでの経験から、高出力によって起こるシリンダーの歪みを防止するため、ボア径はあえて広げず90φを保っているのが特徴だ。

そこにHKSのGTII7460改タービンを2機セット。F-CON Vプロ4.0制御でブースト圧1.6キロ時に約850psを発揮し、NOS(アクセル開度95パーセント以上で噴射)でさらに120psを上乗せする。

そうして完成した至宝のハイパワーユニットであるが、このNSXは“そのまま”搭載せずにボディ側を大加工した上で縦置きレイアウトに変更している。このエンジンレイアウトこそ、このマシンのキャラクターを表すポイントだ。

このレイアウトへと変更した主な理由は、ミッションを耐久性の高いヒューランド製シーケンシャルドグに組み替えるための策なのだという。

「NSXのミッションはパワーへの耐性がなく、700psを超えるとすぐに壊れてしまう。何度か対策を講じるも横置き用のミッションでは限界。それなら耐久性のあるミッションを搭載できるよう、エンジンを縦置きにしようという結論に至ったってわけ」とは、エスプリ前川代表。

このエンジンレイアウトの変更は、大手術となるのは当然。まさにゼロから1台のクルマを造り上げていくと同様の作業となった。特にエンジン搭載位置の決定は、マシンのハンドリングに影響を与える最も重要な要素と言える。そのため、時間をかけて重量バランスが最適になる位置を見つけ出したそうだ。

足回りはHKSのハイパーマックスダンパーを軸に構築。空力性能の向上に合わせてスプリングレートはどんどん硬くなっていき、現在のレートはフロント50kg/mm、リヤ45kg/mmとなっている。速度域の限られる筑波であっても1トン以上のダウンフォースが掛かるため、強力な反力を持つスプリングでボディを支える必要があるのだ。

コクピットはレーシングカー的なメイキングだ。カーボンパネルでリヤの視界がなくなっているため、バックモニターをセット。モニターにはデフィのDSDFを採用する。ブースト計は、瞬間的にドライバーが数値を読み取れるようにアナログ指針式もセットしている。

そして空力。自社でもドライカーボンパーツを製作できるエスプリだが、「良いものは他社製品でも取り入れる」という方針で、アンダーボードやウイングは他メーカー製を選択している。

なお、エアロチューニングはこれで完成というわけではなく、超高速域でポーポイジング(空力の乱れによる大きな上下振動)の発生を確認している。今後、車高やサスペンションまで含めてセットアップを見直し、この問題を解決していくそうだ。

前川代表によると、今後も鈴鹿サーキットのタイム更新を狙いながら、これまでアタックの機会に恵まれなかった岡山国際サーキットなどにも積極的に挑んで記録を残してきたいとのこと。

製作開始から間もなく20年、長い道のりを歩んできたエスプリNSXの挑戦は、まだしばらく続いていきそうだ。

SPECIFICATIONS
■エンジン:C30A改3.2L(縦置き化) 戸田レーシング84mmクランク、鍛造ピストン、コンロッド/エスプリ オリジナルサージタンク、インマニ、エキマニ、フロントパイプ、マフラー、インタークーラー、パイピング、ラジエター/HKS F-CON Vプロ、GTIIタービン、EVC、ウエストゲート、スーパーパワーフロー/NOS ■ドライブトレイン:ヒューランド6速シーケンシャルMT/OS技研 クラッチ、フライホイール、LSD ■フットワーク:HKSハイパーマックスダンパー改(F50kg/mm R45kg/mm)/エンドレス キャリパー&ローター/ブレーキバランサー/トヨタMR-S用油圧パワステ流用 ■ホイール&タイヤ:プロドライブ(18×11.0J+20)&アドバンA050(295/30-18) ■エクステリア:ルートKS ゼロフォースボディキット/アンダー鈴木アンダーボード、3エレメントウイング/エスプリ ドライカーボンボンネット、ドライカーボンドア、ディフューザー

●取材協力:エスプリ 三重県鈴鹿市住吉3-19-1 TEL:0593-70-8080

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