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マテリアルが持つ質感とカラートーンへの飽くなき追求
日本ではいまいちマイナーな存在のCV35型スカイラインクーペだが、北米市場ではヒットした車種であり、多くのファンが存在する。今回紹介するG35クーペは、そんな北米テイストが凝縮した拘りのカスタムカーだ。
「足し算」ではなく「引き算」で表現するインパクト
LA界隈のJDMオーナー達で結成されたカークラブ「R-RYDES」は、メンバーが所有するクルマのレベルの高さでその名が知られている集団だ。このG35のオーナーであるジョンは、そんな「R-RYDES」の創設メンバーの一人で、彼のG35はカーショーでトロフィーをいくつも獲得している有名車だ。
ジョンは2003年に北米で発売されたG35に一目惚れし、2005年に購入。しばらくはノーマルで乗っていたそうだが、耐えられなくなり2010年にカスタムを決意。しかしここで彼が選択した「カスタム」とは、見た目を派手にすることではなく、スカイラインクーペ本来のスタイルを生かしつつ、各部の質感を高めて車格を底上げするという手法だった。
このG35をカスタムする上で重視されているのは、マテリアルチョイスとカラーのセンスだ。車体内外に使用される色味は意図的に3〜4色程度に絞られ、ブルー&グレーを基本色にカラートーンを統一。
エクステリアにはトップシークレットやジアラなど様々なメーカーのエアロパーツが装着されているが、ボディフォルムを大きく崩す物は使用せず、カーボンパーツもこれ見よがしに存在感を主張していない。
ちなみに、リヤバンパーはチャージスピード製をベースに、ジョン自らが3DCGでモデリングして、ワンオフしたスペシャルだ。
色味の統一は足元にも及んでおり、ストップテックのブレーキキャリパーはボディ同色にペイント。ホイールナットもブルー系をチョイスした他、HRE540R(F:20×9.5J R:20×10.5J)のロゴ色までもが(結果的に)同系色になっている。
そうした色味の統一はインテリアでさらに徹底されており、内装パネルはグレーとブラックのスウェード&レザーで総張り替え。ステアリングは純正をベースにカーボン加工。ホーン部分にもスウェードを張って質感をとことん追求している。カーペットとフロアマットはポルシェと同等の物を使用する。
トランクにはウーファーを2発入れてオーディオカスタムにも抜かりない。ちなみにジョンはダンスミュージック好きで、シートには「SPEED RAVER」の刺繍を入れている。樹脂パネル部分にはボディと同色のペイントを入れるという凝り様で、このインテリアこそがカーショーで評価されたポイントでもある。
エンジンルームでの拘りは、そのポリッシュ具合を見れば一目瞭然だ。とにかくメタルパーツの全てがポリッシュされ美しく輝いている上に、さらに150本以上のボルトをポリッシュしたステンボルトに交換しているという。
もちろん、この輝きを維持するのはかなりの手間だが、「R-RYDES」のクルマはこのコンディションを維持するのが当たり前。それはコアサポート部に貼られた「ENGINE BAY BY R-RYDE」のステッカーにプライドとして現れている。
そうしたメタル系の美しさに加え、ゴムや樹脂類が「ちゃんと黒い」のもポイントだ。メタルを磨くこととゴムや樹脂類がマテリアル本来の黒さを保っていることを同様に重視しているからこそ、この美しいエンジンルームが実現するのだ。勿論今やJDMカスタムの定番、エンジンルームの余計な配線を隠す「ワイヤータック」も施している。
このG35がここまで色味と質感に拘っているのは、ジョンの職業も影響している。実のところ、彼は数々のハリウッド映画を手掛けたCGアニメーターで、カスタムに際しては自ら3DCGモデルを起こすこともあるという。そうしたデザインセンスの裏付けが、カッコ良さの秘訣でもあるのだ。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Takayoshi SUZUKI